Web音遊人(みゅーじん)

Char

ロック界のレジェンドCharがアコースティック・ギターで圧倒/Char Acoustic Live

スタイリッシュさとパワフルさを兼ね備えたギタープレイで日本の音楽シーンを牽引してきたCharが、キャリア初のアコースティック・ツアー“Char Acoustic TOUR 2017”を敢行。2017年11月30日の銀座のヤマハホール公演では、洗練された響きで肉体的躍動も感じさせるアコースティックならではのプレイで、ファンを熱狂させた。

ライヴは1曲目の「Zig Zag Zone」から全力疾走。愛用のアコースティック・ギター“ヤマハL51”をパーカッシヴに鳴らすCharに、ベースの澤田浩史とパーカッションの古田たかしも食らいつくように追従。アコースティック・ライヴというと、バラード曲中心のゆったりとした雰囲気というイメージがあるが、それを否定するようなスリリングな響きで、のっけから観客を圧倒した。

Char

曲目はオリジナル曲と洋邦カバー曲を織り交ぜたスタイルで進行。「ふるえて眠れ」や「気絶するほど悩ましい」などの自身のヒット曲は、発表当時も大人向けな雰囲気を放っていたが、今回のようなアコースティックでの演奏ではコードのアダルト感が強調され、キャリアを重ねた今のCharにますますふさわしくなっているように感じられる。その一方で、スリッパが立派だということをアグレッシヴな演奏で歌う「Rippa na Slippa」のようなナンバーも披露し、ルールに縛られず楽しく音楽を生み続けていることを示した。

カバー曲では、クリームの「White Room」をアコースティックが似合うフォルクローレ風に奏でたり、ブラインド・フェイスの「Presence Of The Lord」に坂本九の「上を向いて歩こう」を合体させたりと、独自のセンスで名曲に新たな息吹を与えていた。なかでもクレイジーキャッツの「スーダラ節」は、歌詞は原曲そのままにコードをマイナーに改変し、奏法もアグレッシヴにして熱唱。オリジナルのあっけらかんとした雰囲気とは真逆のシリアスな感覚で、<わかっちゃいるけどやめられねぇ>という歌詞を悲哀タップリに聴かせた。

Char

そんな圧倒的なパフォーマンスと同じくらい会場を沸かせたのが、演奏の合間に繰り広げられるトーク。出身地である「戸越銀座」と「銀座」のゆかりや、高校時代によくヤマハホールに出演し、当時同じステージに出ていた「つのだひろとスペース・バンド」と冗談を言い合っていたこと、今弾いているギターは1975年にヤマハで作ってもらったという懐かしいエピソードを話す一方で、“「White Room」はおれが中学の時に作ったんだけどクリームにパクられた”なんてホラ話まで飛び出した。

刺激的なパフォーマンスと軽快な笑いで、演者も観客も常にテンション高めだったライヴの最後は、自身の代表曲「Smoky」をサンバ風にプレイ。ギターキッズをシビれさせたオリジナルのエレクトリックな演奏もカッコいいが、アコースティック・ギターの素直な響きが洗練されたメロディを引き立たせ、この曲の、そしてCharというアーティストの魅力を再確認させてくれたのだった。

Char

飯島健一〔いいじま・けんいち〕
音楽ライター、編集者。1970年埼玉県生まれ。書店勤務、レコード会社のアルバイトを経て、音楽雑誌『音楽と人』の編集に従事。フリーに転向してからは、Jポップを中心にジャズやクラシック、アニメ音楽のアーティストのインタビューやライヴレポートを執筆。映画や舞台、アートなどの分野の記事執筆も手掛けている。

 

特集

ジェイク・シマブクロ

今月の音遊人

今月の音遊人:ジェイク・シマブクロさん「音のかけらを組み合わせてどんな音楽を生み出せるのか、冒険して探っていくのは楽しい」

9535views

音楽ライターの眼

戦争の苦境、郷愁誘う希望の光/小菅優&佐藤俊介デュオ・リサイタル「第一次世界大戦とクラシック音楽~作曲家に想いを馳せて~」

1914views

CLP-600シリーズ

楽器探訪 Anothertake

強弱も連打も思いのままに、グランドピアノに迫る弾き心地の電子ピアノ クラビノーバ「CLP-600シリーズ」

45034views

これからアコースティックギターを始める際のギターの選び方や準備について

楽器のあれこれQ&A

これからアコースティックギターを始める際のギターの選び方や準備について

17302views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:和洋折衷のユニット竜馬四重奏がアルトヴェノーヴァのレッスンを初体験!

5414views

ホールのクラシック公演を企画して地域の文化に貢献する/音楽学芸員の仕事

オトノ仕事人

アーティストとお客様とをマッチングさせ、コンサートという形で幸福な時間を演出する/音楽学芸員の仕事

12223views

紀尾井ホール

ホール自慢を聞きましょう

専属の室内オーケストラをもつ日本屈指の音楽ホール/紀尾井ホール

14739views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

6261views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

15184views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

5955views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

8532views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26120views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

11657views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

13188views

ジャズとロックの関係性

音楽ライターの眼

ジャズにビートルズを引き寄せた名プロデューサーと名ギタリストの出逢い

3631views

アカネキカク akaneさん

オトノ仕事人

楽曲のイメージをもとに、ダンスの振りを考え、演出をする/振付師の仕事

2584views

われら音遊人 リコーダー・アンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:お茶を楽しむ主婦仲間が 音楽を愛するリコーダー仲間に

8153views

【楽器探訪 Another Take】ベルの彫刻デザインとマウスピースも一新

楽器探訪 Anothertake

ベルの彫刻デザインとマウスピースも一新

10509views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

12043views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

8074views

EZ-310

楽器のあれこれQ&A

初めての鍵盤楽器を楽しく演奏して上達する方法

809views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

6261views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26120views