今月の音遊人
今月の音遊人:ジェイク・シマブクロさん「音のかけらを組み合わせてどんな音楽を生み出せるのか、冒険して探っていくのは楽しい」
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奈良に都が移されたおよそ1300年前、平城京と日本の国、国民を守る社として生まれた春日大社。御蓋山(みかさやま)に神様が降りてきたのが始まりとされ、奈良時代後半には社殿が造営された。
1年に2,200回以上のお祭りが奉仕される春日大社で至高の祭典が、ほぼ20年に一度ごとに執り行われる社殿の修築大事業「式年造替(ぞうたい)」だ。「遷宮(せんぐう)」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思うが、春日大社では本殿の位置を変えずに神様のお住まいの建て替えや修復を行うため「造替」という。
2015年から2016年にかけては、1200年以上にわたって連綿と続けられてきた式年造替が60回目を迎える。大きな節目となるこの度の式年造替を祝し、2016年9月18日(日)と19日(月・祝)の2日間、「第1回春日野音楽祭」が開催される。
そもそも春日大社は芸能の発祥の地ともいわれ、音楽との関係も深い。巫女が舞う神楽や神楽殿は春日大社が最古。能舞台の背景に描かれる老松は、春日大社の参道にあった松に由来する。平安時代から880年以上、一度として途切れることなく行われている「春日若宮おん祭」も神様に芸能を奉納する日本最古の芸術祭だ。ご存知のように、多くの日本の芸能の始まりは神事にあり、神様は大変に芸能をお好みなのである。
春日野音楽祭の参加者たちも春日大社の奥に控える神体山、御蓋山に向かって奉納演奏を行う。目に見えないものを敬い、音楽という形がないものを奉納するこの行いは、奈良らしさの極みだろう。
会場は、春日大社を起点とした奈良市内の各ステージ。9月18日11時からはオープニング企画として、小学生を中心とした子どもたちによる「奉納鍵盤ハーモニカ大合奏」を開催。また、13カ所に設けられた「まちなかステージ」では、公募によるさまざまなジャンルの奉納ステージが繰り広げられる。
18日は、緑あふれる広大な「飛火野(とびひの)ステージ」で、さだまさし氏によるライブも行われる。式年造替を祝うスペシャルステージとして、すでに過去5年にわたり奈良で勧進コンサートを実施し、奈良は魂のふるさとだというさだまさし氏は、「洋の東西を問わず、古くから音楽は神の言語であるという考え方があります。とくに1万年前からの春日山原生林を控えた春日大社では、「山木枯槁(さんぼくここう)」といって、神様が人間に嫌気がさして帰る準備を始めると、春日山の樹木が突然大量に枯れ始める現象がありました。これまで12回起こり、そのたびに宮中の御神楽によって緑が戻ったといいますから、音楽の力はすごいですね。春日大社と音楽が非常に深いつながりがあることも承知していますし、いいコンサートができたらと思っています」と意気込みを語る。
※チケットは完売。
また、9月19日には春日大社のなかでもとくに神聖な場所のひとつである本殿前の「林檎の庭」において特別奉納演奏が行われる。グラミー賞受賞アーティストのウィリアム・アッカーマン氏およびトッド・ボストン氏を招き、スペシャルゲストとしてギタリストの押尾コータロー氏と尺八奏者の三橋貴風氏が登場。一度限りのこのスペシャルな公演は一般チケット販売はなく、クラウドファンディング(2016年8月31日まで受け付け)または後援メディアによる一般招待に応募するかのいずれかで参加が可能だ。
フィナーレを飾る「奉納大合奏・大合唱」は、サクソフォン奏者、雲井雅人氏や関西ではおなじみの作曲家、キダ・タロー氏らを迎えた参加型イベント。楽器を持って集まった参加者全員で合奏し、奉納する。また、会場には家族連れや観光客も気軽に楽しめるよう、ワークショップやマルシェも設置される。
歴史や文化、自然と音楽が一体となった最高の環境は、春日野音楽祭の最大の特徴。演奏者も聴く人も体験する人も、その魅力を肌で感じられるに違いない。
文化・芸能ともに縁のある春日大社の「第六十次式年造替」を祝うために、奈良駅前から春日大社本殿まで地域一体となり市民が主体的に参加し「演奏を奉納する」市民参加型音楽祭。