Web音遊人(みゅーじん)

過激でオシャレ!デスコアのすべてがわかる『デスコアガイドブック』刊行

過激でオシャレ!デスコアのすべてがわかる『デスコアガイドブック』刊行

2017年9月、パブリブから脇田涼平・著『デスコアガイドブック』が刊行された。

「世界過激音楽」シリーズの第5弾となる本書。これまで『デスメタルアフリカ』『デスメタルインドネシア』『ブルータルデスメタルガイドブック』『ウォー・ベスチャルブラックメタルガイドブック』が刊行されてきたが、今回もどこまでもヘヴィに、ディープに、マニアックに掘り下げている。570バンドを紹介、803枚のディスクレビューという、まさに圧巻の1冊だ。

脇田氏はデスコアという音楽スタイルについて「『デスメタルとメタルコアがクロスオーバーする中で誕生し定着したエクストリーム・メタルのサブジャンルのひとつ』というのが一般的な認識」と解説している。本書はそんな“一般的な認識”を踏まえながら、幅広くデスコアをひもといていく。

なお脇田氏がこのシリーズで書くのは『ブルータルデスメタルガイドブック』に続いてこれが2冊目となる。内容の深さ・濃さに加えて、氏の書くスピードもまた特筆すべきものがある。

本書がシリーズ中で異色なのは、登場するアーティストやアルバムの人気の高さだ。たとえば『デスメタルアフリカ』は筆者(山崎)が知っていたのが2バンド、日本盤CDが出ているアルバムがゼロという状態だったが、今回は違う。スイサイド・サイレンス、ホワイトチャペル、ブリング・ミー・ザ・ホライズン、オール・シャル・ペリッシュ、ザイ・アート・イズ・マーダー、ジョブ・フォー・ア・カウボーイなど、日本盤CDがリリースされていて容易に入手できたり、来日経験があったりするアーティストがいくつも掲載されているのだ。

アーティストのヴィジュアルも多くは黒Tシャツ姿ながら、時にエモいアシメ前髪だったり、ファッション性が高かったりするものも掲載されている。本書のオビには「オシャレで近未来感溢れる世界最先端の超激重過激音楽!!」とあるが、あながち“オシャレ”というのも嘘ではないラインアップなのである。

表紙も『ウォッチメン』のDr.マンハッタンを思わせる青肌ハゲ全裸男で、シリーズ中おそらく最も垢抜けている。

デスコアはメタル界においても“進んだ”トレンドであり、本書は単なるアンダーグラウンド紹介本ではなく、リアルなメタル・カルチャーの未来を占うガイドブックなのだ。

とはいっても、そんな大物たちはあくまで一部であり、まったく名前すら聞いたことのないバンドが次々と登場する。香港のマサカー・オブ・モスマン、インドのBhayanak Maut(読み方不明)など、世界にデスコアが広がっていることがわかるし、日本のアンダーグラウンド・シーンで活動するデスコア・バンドも多く紹介されている。

本書のひとつの読み方としては、まず名前を知っているバンドを聴いてみて、そのバンドが引き合いに出されていたり人脈・シーンが共通したりする他バンドもチェックして、デスコアの豊潤な世界へと足を進めていくのが良いだろう。

それは“世界過激音楽”シリーズ全体についていえることでもあり、まず『デスコアガイドブック』でエクストリーム・メタルの奥の細道に入門して、徐々にブルデスやアフリカンメタルの深淵にズブズブはまっていくことで、素晴らしき音楽生活が開けていくに違いない。

デスコアに興味はあるものの、本書を読んでもあまりにたくさんのバンドが紹介されていて、どれから聴けばいいのかわからない……という初心者リスナーのために、2017年10月5日(水)には東京・dues新宿で『デスコアガイドブック』出版記念トークイベントも行われる。本書著者の脇田氏、ザイ・アート・イズ・マーダーやホワイトチャペルへのインタビューを担当した摩利那/Marina Isami氏(ISAMIMHZ WORKS/Vorpal Music)、ジャパニーズ・メタルコアの重要バンドSailing Before The WindのBitoku氏をゲストに、『世界過激音楽シリーズ』パブリブ編集のハマザキカク氏が司会進行。デスコアの魅力や歴史、知られざるエピソードなど、すべてが明かされるイベントは、本書を知るために重要な“デス”と“コア”が邂逅するひとときだ。

■作品紹介

『デスコアガイドブック』
著者:脇田涼平
発売元:パブリブ
発売日:2017年9月4日
価格:2,300円(税抜)
詳細はこちら

■出版記念イベント

『デスコアガイドブック』出版記念トークイベント
日時:2017年10月5(木)
場所:dues新宿
詳細はこちら

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に850以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
ブログインタビューリスト

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:村治佳織さん「自分が出した音によって聴き手の表情が変わったとき、音楽の不思議な力を感じます」

8993views

音楽ライターの眼

連載16[ジャズ事始め]“上海リヴァイヴァル”を象徴する「上海バンスキング」とアジア・ジャズの序章

5048views

Pacifica

楽器探訪 Anothertake

「自分の音」に向かって没入できる演奏性と表現力/エレキギター「Pacifica」

1569views

エレキギター

楽器のあれこれQ&A

エレキギターのサウンドメイクについて教えて!

1401views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

8715views

小林洋平

オトノ仕事人

感情や事象を音楽で描写し、映画の世界へと観る人を引き込む/フィルムコンポーザーの仕事

2719views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

9078views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5741views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8752views

Red Pumps BIGBAND

われら音遊人

われら音遊人:出自がさまざまなメンバーと、誰もが楽しめる音楽をビッグバンドで

1124views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

8206views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26348views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

10125views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

20399views

音楽ライターの眼

セミヨン・ビシュコフがチェコ・フィルの新たな時代を拓く

5492views

ステージマネージャーの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

ステージマネージャーひと筋に、楽員とともにハーモニーを奏で続ける/オーケストラのステージマネージャーの仕事(後編)

17981views

ONLYesterday

われら音遊人

われら音遊人:愛するカーペンターズをプレイヤーとして再現

1184views

赤ラベルが再現!ヤマハギター50周年記念モデル

楽器探訪 Anothertake

赤ラベルが再現!ヤマハギター50周年記念モデル

11886views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

9078views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

6188views

楽器上達の心強い味方「サイレント™シリーズ」&「サイレントブラス™」

楽器のあれこれQ&A

楽器上達の心強い味方「サイレント™シリーズ」&「サイレントブラス™」

39583views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

9227views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10553views