Web音遊人(みゅーじん)

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

笹本さんは中学生のときにドラムに触れ、高校の音楽部でジャズに興味を持った。やがてプレイヤーを志すようになり、祖母の暮らすアメリカ・テキサス州の北テキサス大学に進学。ミュージシャンを目指してドラムを学んでいたが、やがてプロの演奏家を取り巻く状況に危機感を覚え始めた。
「学校ではビッグバンドが主体だったのですが、その中でドラムは特にポジション争いが激しい。ところが、それだけ厳しい競争を勝ち抜いても、その先には音楽だけでは食べていけないという現実が待っている。それなら、パイを奪い合うより、パイを大きくする仕事をしたいと思うようになったんです」

音楽の仕事自体が増えれば、多くの有望なアーティストが活躍の場を増やせるのでは。そう考えた笹本さんは、専攻をマーケティングに変えてビジネスを学び、帰国後、ブルーノート・ジャパンに入社した。先述のバンド、スナーキー・パピーは大学の先輩にあたり、彼らの公演を行えたことは大きな喜びだった。
「音楽マーケットを大きくするという個人的な目標まではまだ遠く、今は目の前の仕事をしっかり遂行することを第一に考えています。お客様にとってのいい空間を創ること。そのためにいい音楽を提供するのが私たちの使命。そこから、先につなげていきたいですね」
世界中の音楽にアンテナを張り、これはと思うアーティストをキャッチし、公演を行う。演奏を聴いて喜んでくれるお客さんのために、そして、より多くのミュージシャンが魅力ある音楽を作り続けられるように。

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

毎週、各部門の担当者が集まってミーティングを行うミーティングルームには、音源資料のCDがずらり。壁にはブルーノート東京が開業したとき(1988年11月)の最初の公演ポスターも。

Q.子どもの頃、なりたかった職業は?
A.医者です。子どもの頃は体が弱くて、ずっと医者にかかっていたので。中学生になると獣医になりたいと思ったこともありました。今の仕事に就いていなかったら、アメリカでタクシーの運転手やカフェの店長など、好きな音楽を聴きながらできる仕事を考えたと思います。

Q.音楽に目覚めたきっかけは?
A.父がジャズやビートルズが好きで、よく聴いていたのを覚えています。思春期は日本のポップスを聴いていて、初めて買ったCDはglobeのアルバム。そこからマーク・パンサーさんのラップがかっこいいなとヒップホップを聴くようになりました。中学生のときにドラムを始めて、高校の音楽部でジャズに興味を持ったんです。

Q.人生のターニングポイントになった曲は?
A.RIZEの『Dream Catcher』です。この曲が出た頃、中学でいじめにあって不登校となり、父のすすめもあって父の友人の陶芸家のところに一人でお世話になっていたんです。この曲のサビの「自分を信じて人生をつかめ」という意味の歌詞を聴いたときに、自分の置かれていた状況を「あぁ、気にしないで自分らしくいていいんだな」と思え、深く心を打たれました。一つの曲が勇気づけてくれる、音楽の力をとても強く感じるきっかけとなった曲です。高校で音楽を始めたら、いじめのリーダー格だったやつとも仲良くなれました。人と人をつなぐ力も音楽にはあると思います。

Q.プライベートでよく聴く音楽は?
A.最近はエレクトロ(音楽ジャンルのひとつ)をよく聴いています。ジャズを主軸に考えると、世界のトレンドとして少し前にヒップホップと融合したグルーヴィーなものが主流になりました。それが今はエレクトロと融合したものが主流になってきているので、そういう曲を聴いて、企画などのアイデアを練ろうと。プライベートで聴いていても、やはり仕事につなげてしまいますね。

Q.仕事のために日頃から心がけていることは?
A.出演交渉をする相手はアメリカにいる人が中心となるため、英語力は必須。アメリカ的な最近の言い回しやジョークなどを、テレビドラマを見て勉強しています。信用して話せる相手だと思ってもらえないと、その先に話を進めることができない世界ですから。

Q.休日の過ごし方は?
A.基本的には土日が休みなので、妻とデートです。一緒に愛犬と遊んだりショッピングにでかけたり。仕事は切り離していますが、音楽は常にどこかでかかっていますね。

Q.普段、音楽を聴くツールは?
A.仕事ではYouTubeを見ることが多いですね。再生しながら作業をすることもよくあります。家では大音量で聴くことがむずかしいので、車で聴いていることが多いです。ドライブしながら頭を空っぽにして音楽を聴いていると、ふっと、「あのライブはこの人と一緒にやってもらおう」などとアイデアが湧いてくる瞬間があるんです。

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