今月の音遊人
今月の音遊人:中川晃教さん「『音遊人』のイメージは、雲を突き抜けて、限りなくキレイな空の中、音で遊んでいる人」
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ジェフ・リンズELOがライヴ映像作品/CD『ウェンブリー・オア・バスト〜ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』を発表
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2017.11.22
tagged: 音楽ライターの眼, ジェフ・リンズELO
“ジェフ・リンズELO”が2017年6月24日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行ったライヴの全貌を収録した映像作品/CD『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』が発売される。
名義こそ”ジェフ・リンズELO”だが、6万人を集めたこの公演で演奏されたのはエレクトリック・ライト・オーケストラ=ELOの名曲の数々だ。1971年のデビュー作『エレクトリック・ライト・オーケストラ』の「10538序曲」から2016年に”ジェフ・リンズELO”として発表した『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』からの「ホェン・アイ・ウォズ・ア・ボーイ」まで、彼らの軌跡を網羅したライヴとなっている。
正直驚かされるのが、本国イギリスにおけるその絶大な人気だ。ロックとストリングスを融合させたポップ・サウンドでデビュー、ディスコやシンセなどを取り入れながら1970年代と1980年代の音楽シーンを席巻したELO。いくつものヒット曲を世界のチャートに送り込み、根強い支持を得てきたことは認識していたものの、何とスタジアム公演とは!
日本でも人気を誇ってきた彼らだが、1983年に大阪で開催された日本SF大会『DAICON IV』オープニング・アニメーションで「トワイライト」が使われたり、TVドラマ『電車男』のオープニング曲でも同じ「トワイライト」が使用されるなど、オタク・カルチャーのシンボルのような受け入れられ方をしてきた。
「見果てぬ想い」(1974年)や「テレフォン・ライン」(1977年)のようなバラードがヒットしたせいで、海外でも”軟弱なバンド”という誹り(そしり)を受けることもあるELOだが、ウェンブリー・スタジアムを訪れた観衆は、大半が”普通の”音楽ファンだ。彼らは満面の笑みを浮かべながら身体を揺らし、音楽に身を委ねている。
自らのヒット曲に加えて、ジェフはポール・マッカートニー、ブライアン・アダムス、ジョー・ウォルシュなどをプロデュース。さらにボブ・ディラン/ジョージ・ハリソン/トム・ペティ/ロイ・オービソンとの覆面バンド、トラヴェリング・ウィルベリーズへの参加など、超一流アーティストとの共演も果たしてきた。そんな交流を経て、ELOは国民的バンドへと昇華されたのである。
日の長いイギリスの夏、まだ明るい中、ショーは「雨に打たれて」から始まる。『アウト・オブ・ザ・ブルー』(1977年)からの、シングル化されていない曲からのスタートだが、それからは大半が英米チャート上位にランクインしたヒット曲のオンパレードだ。
「イーヴィル・ウーマン」「オール・オーヴァー・ザ・ワールド」「ショウダウン」「オーロラの救世主(リヴィン・シング)」……次から次へとグレイテスト・ヒッツが披露される。
それに加えてサプライズとして、トラヴェリング・ウィルベリーズの「ハンドル・ミー・ウィズ・ケア」が飛び出す。ロイ・オービソンのパートにバック・コーラスのイアン・ホーナルを加えるなどしながら、バンドはスタジアムを盛り上げていた。
さらにオリヴィア・ニュートン=ジョンとの共演で1980年にヒットした「ザナドゥ」をジェフ自らが歌う男声ヴァージョンもプレイされた。彼が歌うスタジオ・デモは既に編集盤などで公式リリースされているものの、ライヴで演奏されるのは貴重だ。
日本のファンも感涙必至の「トワイライト」も含め全23曲、約2時間。ブルーレイ/DVDには何箇所か曲間にジェフへのインタビューも挿入されており、ウェンブリー公演の裏話なども聞くことができる。
ライヴ後半、日が暮れてからは壮大なステージ・セットやライティング、レーザー光線、バンドのトレードマークであるUFOを再現したオブジェなど、ヴィジュアル・スペクタクルが全開。ウェンブリー・スタジアム独特のアーチもセットの一部となり、全編たっぷり楽しませてくれる映像作品だ。
2018年8月には35年ぶりとなるアメリカ・ツアーも敢行。ぜひ日本でも生「トワイライト」を聴かせてもらいたいところである。
ELOのライヴは、誰にでも必ず涙が出る瞬間がある。それは往年のヒットをしのぶ懐かしさの涙だったり、メロディの切なさ、そして美しさによる涙だったりする。ウェンブリーにポップ・ミュージックの涙雨が降った夜が、『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』にはあますところなく収められている。
『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』
発売元:ソニーミュージック・ジャパン
発売日:2017年11月29日
料金:2CD+BD(限定盤)6,480円/2CD+DVD(限定盤)5,400円/2CD 3,888円
※すべて税込