今月の音遊人
今月の音遊人:渡辺真知子さん「幼稚園のころ、歌詞の意味もわからず涙を流しながら歌っていたのを覚えています」
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世界的トロンボーン奏者として活躍する中川英二郎。音楽シーンの最前線を走り、現在、日本の映画やTV、CMなどで聴こえるトロンボーンの音の7割以上は、彼のものであるともいわれている。
そんな圧倒的な存在感を放つ中川が、前代未聞のトロンボーンカルテット「SLIDE MONSTERS(スライド・モンスターズ)」を結成し、2018年5月に日本ツアーを行う。
メンバーは中川、そしてニューヨーク・フィルハーモニックの首席でトロンボーン界の神と讃えられるジョセフ・アレッシ。さらにニューヨークのジャズシーンで活躍するマーシャル・ギルクス、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団のバストロンボーン奏者ブランド・アテマを加えた4人。現代の各ジャンルを代表するトロンボーン界の“モンスターたち”が結集する、奇跡とでも呼ぶべきユニットだ。しかも、そのツアーが日本で実現する。
トロンボーンを愛する人はもちろん、それ以外の人々もツアーに足を運んでくれれば「きっとこの楽器のファンになってくれるはず!」と中川は自信をのぞかせる。
トロンボーン四重奏をやりたい──。それは長年、中川が温めてきた思いだった。トロンボーン4本だけというシンプルかつ究極のアンサンブルの形だ。
「オーケストラなどで耳にしているにもかかわらず、トロンボーンの音をちゃんと聴いたことがないという方がほとんどなんですよね。オーケストラでもビッグバンドでもトロンボーンはサポート役。日の当たらないパートですから(笑)。ふだんサポート役である楽器をそこまでクローズアップするには、パートナーが必要です。そのオファーを僕のアイドルであるジョー(アレッシ)が快諾してくれた。トロンボーンを吹く人ならもちろん知っていると思いますが、ジョーはおそらく地球上で一番有名なトロンボーン奏者です」
そして、そのアレッシが「今、もっとも一緒に演奏したいトロンボーン奏者」として強力に推したのがマーシャル・ギルクスとブランド・アテマだった。
「テナートロンボーンは、男性の声域(テナー)とほぼ同じ音域で演奏します。トロンボーン四重奏は歌詞のないアカペラだと思っていただけるといいかもしれませんね。4人いると相当複雑なハーモニーもできるし、非常に自由な演奏ができる。ツアーではフルパワー、フルサウンドでダイナミックなものから繊細な音色までお聴かせできると思います」
ツアーのテーマは「BEYOND INSPIRED BY NEW YORK」。これまでも多彩なスタイルで自身の音楽を表現し、常に「BEYOND(その先)」を拓いてきた中川だが、今回はジャンルも国籍も違うこのメンバー4人にしかできないアンサンブルで、聴く者を「その先」の世界へと誘う。
「コンサートで一番大切に考えているのはジャズとクラシックを自由に行き来する音楽で、半分以上はオリジナル曲を演奏します。クラシックの場合、作曲家兼プレーヤーというケースは非常に稀ですが、今回は僕とマーシャルが作曲もするので、これまでのトロンボーンアンサンブルやブラスアンサンブルではできなかったことを表現できると思います」
また、メンバーを引き合わせた、ニューヨークからインスピレーションを得た曲も用意されている。
5月のツアーに先立ち、4月20日にアルバム『SLIDE MONSTERS』がリリースされた(2018年1月ニューヨークで初レコーディング)。
「純粋に4人だけの演奏にしたかったので、リズム隊は入れたくなかったんです。だから、曲を聴いたときに頭のなかでリズムが鳴るような音楽を目指しました。仕上がりは相当いいと思いますよ。自分でもとても満足しています」
オリジナルとカバーの全9曲で、中川のセルフカバー『Trisense』ほかオリジナル曲、マーシャル・ギルクス書き下ろしの『Coalescence』など中川の言葉通り「ジャズとクラシックを行き来する」曲が満載だ。
「ぜひCDを聴いていただきたいです。そして、それ以上にツアーで生の音に触れてもらいたいですね。そうしなければ、CDのなかの演奏の本質が伝わりにくいと思うんです。ツアーでは、このアルバムの曲をメインに、プラスαを考えています。だまされたと思って会場に来てください。必ず満足してもらえると僕は信じています」
人が喜んでくれる、何かを感じてくれることが活動の原動力だという中川は、そう力を込めた。トロンボーンの概念を覆す演奏を、みなさんも味わってみてはいかがだろう。
日程:2018年5月4日(金)~13日(日)
東京、神奈川、福岡、大阪、群馬、静岡、福井で開催予定。
『SLIDE MONSTERS』
発売元:EN RECORD
発売日:2018年4月20日
料金:3,240円(税込)