Web音遊人(みゅーじん)

武田真治インタビュー

刺激的なサクソフォンで、高揚感と疾走感に満ちたサウンドを聴かせる4年ぶりのアルバム『SHU-HA-RI』/武田真治インタビュー

10代から人気俳優として注目を集め、テレビドラマ、バラエティー、映画、舞台ほか幅広い活動でキャリアを積み上げてきた武田真治。その一方、アグレッシブなサウンドとパフォーマンスが心に刺さるサクソフォンプレイヤーとしても活躍しており、テレビの音楽番組でその姿に魅了された方も多いだろう。放送200回を超える人気ラジオ番組『楽器楽園〜ガキパラ〜』(文化放送)でも、多彩なゲストと共に演奏を聴かせている。

「サックスとの出会いは小学生のとき、テレビでチェッカーズを観たこと。藤井尚之さんが吹くサックスに憧れて、将来は絶対にサックス奏者になると心に決めました。中学生のときにアルトサックスを買ってもらって夢中になり、高校に進学すると文化祭でバンド・デビューをしたのですが、そのときはZIGGYという人気ロックバンドの曲を演奏しました。もともとはサックスのない曲でしたけれど、チェッカーズを聴いて育ちましたからサックスでカウンター・メロディーを自分なりにフレーズを作って入れました。音楽でお客さんに喜んでいただく楽しさも、その文化祭のステージで初めて味わったかもしれません」

その後、『シャイニン・オン 君が哀しい』などのヒット曲で知られるLOOKというバンドを知り、そこからさらにブルース・スプリングスティーンやレディー・ガガなどとの共演で知られるクラレンス・クレモンズ、デイヴィッド・サンボーン、ケニー・Gといったサクソフォンプレイヤーたちの演奏に感銘を受けながら、音楽センスを磨き上げていく。
「昔のケニー・Gなんて、CDのジャケットを見るとサングラスに革ジャンを着て写っていて、ヘヴィメタのミュージシャンなの!?って(笑)。でも曲を聴くとバラードが多めなのでギャップが意外でしたね。サックスを通じていろいろなジャンルの音楽があることを知り、演奏者によっていろいろなプレイスタイルがあることにも好奇心が刺激され、さらにサックスへの興味が深まっていきました。T-SQUAREの『TRUTH』というアルバムを聴いたのもその頃で、サウンドもリズムもかっこいいしメロディーも印象的で、自分も自分なりのインスト・ミュージックを追求していきたいなと思ったのです」

武田真治インタビュー

一方、芸能界デビューを果たしたのもちょうどその頃で1990年代になると人気は沸騰。そして仕事以外でもさまざまな音楽やファッションなどが武田の感性を刺激していく。BLACKJAXX(ブラックジャックス)という名義で2018年10月10日にリリースされた最新アルバム『SHU-HA-RI』は、その90年代に体験したトレンドや時代の勢いを、現代に蘇らせたようなサウンドだ。BLACKJAXXは同じ時代を知り、長く武田と活動を共にしているDJ DRAGONとのサウンド・プロデューサー・チーム。打ち込みのリズムから生まれる高揚感と疾走感、その音世界の中で存在感を示すサクソフォンが心地よいこのアルバムは、21世紀を生きる斬新なクラブ・サウンドだ。ちなみにタイトルは「守・破・離」という修行のプロセスを表した言葉だという。
「アシッド・ジャズやハウスなど、90年代に出会った音楽を取り入れながら、ファンキーな部分も活かしたかった。その頃はまだ音楽ライセンス(著作権)についても曖昧でしたから、ジェームズ・ブラウンの曲などを自由にサンプリングしながら新しい音楽を作れたという、混沌とした時代でした。その精神やエネルギーが忘れられなくて、現代にも活かせるだろうと思ったのです」

自らのプレイスタイルについては「ずいぶんうるさいサックスだなと思われているんだろうなあ」と笑いながらも、オリジナリティーは大切にしている。
「音が裏返ってもそれをフレーズとして落とし込めたり、ハイノートヒッターとしてフラジオでも前のめりのタイミングで吹けたりすることなど、すべてが自分の音だと思っています。ライブの1曲目から情熱を放出させて吹き、2曲目で早くも舌がおかしくなり、MCがカミカミになるときもありますけれど、それも含めて楽しんでほしい(笑)。決して着地点を考えずに一曲一曲めいっぱい振り切るような演奏をするって、かっこいいじゃないですか」
司会を務める『楽器楽園〜ガキパラ』に出演する多彩なゲストからも、吸収することが多いという。
「サックス奏者のMALTAさんに出演いただいたとき、番組内で一緒に演奏したのですが、ベテランのMALTAさんでさえ熱いセッションの後は軽い酸欠になったのか息も絶え絶えで、その後の大切な告知もままならないほどだったんです。その情熱を目の当たりにしたとき、やっぱりこうでなきゃな!と思いましたね」

40代を迎えて俳優としても深みを増し、2019年1月にはトルストイの名作『戦争と平和』を原作としたミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』にも出演する。「お芝居は演出家の要望や共演者とのやり取りを楽しむという、まるでオーケストラの一員になるようなイメージ」という武田の存在は、ますます輝きや味わい深さを増していくはずだ。

■アルバムインフォメーション

BLACKJAXX『SHU-HA-RI』
SHU-HA-RI
発売元:神南レコード
発売日:2018年10月10日
価格:2,000円(税込)

■舞台

『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
2017年トニー賞最多12部門ノミネート。ブロードウェイを席捲(せっけん)した革新的ミュージカル日本初演!
公演期間:2019年1月5日(土)〜27日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス(東京都豊島区西池袋1-8-1)
料金:S席13,000円、A席8,000円
チケット発売中
詳細はこちら

■ラジオ番組

『楽器学園〜ガキパラ〜for all music lovers』
放送日時:毎週金曜22:00〜24:00
放送局:文化放送AM1134/FM91.6
出演:武田真治、岡部磨知(バイオリニスト)、砂山圭大郎(文化放送アナウンサー)
詳細はこちら

 

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