今月の音遊人
今月の音遊人:藤田真央さん「底辺にある和音の上に内声が乗り、そこにポーンとひとつの音を出す。その響きの融合が理想の音です」
15433views
本気で音と遊ぶサクソフォン四重奏の、創造性豊かなニューアルバム『Fun!』/ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット インタビュー
6601views
2018.11.29
tagged: 上野耕平, ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット インタビュー, Fun!, 四重奏, The Rev Saxophone Quartet, 宮越悠貴, 田中奏一朗, インタビュー, 都築惇, サクソフォン, アルバム
クラシカル・サクソフォン、そしてサクソフォン四重奏団の層がどんどん厚くなってきている。そうした中、2017年にサクソフォン四重奏のスタンダード作品を集めて正式なデビューを飾った「ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット」(以下「レヴ」)の存在は、ひときわ光っているといえるだろう。
東京藝術大学(以下「藝大」)で出会った4人によるこのアンサンブルだが「正統派の音楽であっても固定概念にとらわれず革新的に演奏するというのが、レヴの基本的な姿勢。その上でどれくらい大胆に遊べるか、新しいものを生み出せるのかを目指しています」という上野耕平の言葉からも、グループとしての強い意志が感じられる。
そのレヴが2枚目のアルバム『Fun!』で披露するのは、実験的かつ高度な遊びのスピリットも盛り込まれた新曲・新アレンジを含む、実に個性あふれる作品ばかりだ。
「若い世代で革新的な音楽を書いている坂東祐大さんや稲森安太己(やすたき)(やすたき)さんに新曲を書いていただき、サクソフォン4本でどこまでやれるのか、実験をしています。特殊な奏法も使いながら新しい響きを創造し、なおかつ大胆に遊んでいるという感じですね」(上野耕平/ソプラノ)
刺激的な音が交錯する坂東作品、メンバーそれぞれの出身地に伝わる民謡などを構成した稲森作品は、今後のレヴにとっても重要なレパートリーになるはず。その一方で、サクソフォン四重奏の定番になりつつあるバッハの「G線上のアリア」(伊藤康英編曲)や、ビゼーのオペラをモティーフにした「カルメン幻想曲」(萩森英明編曲)などは、クラシカル・サクソフォンのアンサンブルというスタンスや演奏技術などを活かした作品だ。特に「G線上のアリア」は何度も演奏を重ねてきた作品だという。
「サクソフォン四重奏の強みである豊かな音色とハーモニーがよくわかるアレンジですし、手の内に入っているので互いの音を聴きながら、毎回自由に演奏できる曲でもあります」(宮越悠貴/アルト)
もう1曲、その宮越がアレンジしたハービー・ハンコックの名曲「Watermelon Man」は、強烈なグルーヴが聴き手の身体と心を揺らすトラック。ジャズが好きな方も、クラシカル・サクソフォン四重奏の印象が大きく変わるのではないだろうか。
「フラジオやスラップ・タンギング、ソプラノのハイノート、バリトンがドラムスやベース役をやるなど、4人それぞれの演奏スタイルや得意な奏法をよく知る自分だからこそできたアレンジ。曲の中には即興的な部分もあり、サクソフォン四重奏でもジャズやファンクのかっこいいビートやグルーヴができることを証明したかったというのが本音です」(宮越)
こういった曲を集めたアルバム『Fun!』だが、テーマにしていることのひとつが「本気で音で遊ぶ」ということだ。これは今回のアルバムに限らず、レヴのアイデンティティだといっていい。
「定番の作品を演奏するときでも音で遊ぶことは忘れていませんが、ある程度練習をしてプレイスタイルを決めてから『あとは本番で』という余白を残しておき、そこで何を仕掛けるのか、仕掛けられるのかを楽しんでいます。互いの呼吸や演奏のくせ、タイミングなどを知っておくと、かなり即興性のある演奏ができますので。今回の新曲は特にそういった性質が強いですね」(田中奏一朗/バリトン)
「今回のアルバムは『楽しむ、遊ぶ』がテーマですから、同じ曲を演奏するときでも変化をつけたり、新しいことを探したりしながら吹きました。定番の曲ですとテナーは内声が多く、先陣を切ってアンサンブル全体のギアチェンジを任されることはないのですが、誰よりも先に音を出せることが楽しかった。アルバムを聴いてライブを体験していただければ、同じ曲なのにこんなに違うのかと驚いていただけるでしょう」(都築惇/テナー)
藝大在学中の学年や年齢は異なるものの「楽器を持ったら先輩も後輩もありません。そのあたりはみんな容赦ないです」(宮越)という関係性が、常に新鮮で刺激的なアンサンブルの証でもある。サクソフォン四重奏を楽しむ人たちへのアドバイスを求めると「合わせることを主目的にせず、個々が小さくまとまらないこと」「楽譜上で音を合わせるのではなく演奏中の呼吸を聴き合うこと」「合わせばかりでなく個人練習も大切」「自分のパートをしっかり吹き込んだ上で、アンサンブルでは開放的に」といったことを挙げてくれた。おそらくそれは、レヴの演奏におけるコンセプトそのものなのだろう。サクソフォン四重奏に興味のある方、未体験の方、ここに刺激的なグループがいますよ!
『Fun!』
発売元:日本コロムビア
発売日:2018年11月28日(水)
価格:2,500円(税抜)
日時:2018年12月2日(日)18:00開演(17:00開場)
会場:eplus LIVING ROOM CAFÉ&DINING(東京)
料金:2,800円(税込/飲食代1フード、1ドリンク別途)
お問い合わせ:03-6425-5424(eplus LIVING ROOM CAFÉ&DINING)
日時:2018年12月6日(木)19:30開演(18:45開場)
会場:文京シビックホール 大ホール(東京)
料金:S席3,000円、A席2,000円(全席指定)
お問い合わせ:03-5803-1111(シビックチケット)
文/ オヤマダアツシ
photo/ 後藤泰宏
tagged: 上野耕平, ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット インタビュー, Fun!, 四重奏, The Rev Saxophone Quartet, 宮越悠貴, 田中奏一朗, インタビュー, 都築惇, サクソフォン, アルバム
ヤマハ音遊人(みゅーじん)Facebook
Web音遊人の更新情報などをお知らせします。ぜひ「いいね!」をお願いします!