Web音遊人(みゅーじん)

谷村新司さん

「アリス」として「ソロ」として、再び始まった限りなき挑戦/谷村新司インタビュー

1972年、谷村新司、堀内孝雄、矢沢透の3人で結成され、昭和という時代を熱狂させた「アリス」。活動停止後も「アリスは母艦である」という思いのもと再始動を繰り返し、平成の世に鮮やかな足跡を残してきた。
そして、メンバー全員が70歳となる2019年、新たな元号の幕開けとともに「ALICE AGAIN 2019-2020限りなき挑戦-OPEN GATE-」というテーマタイトルを掲げた全国ツアーが始まる。2020年まで続くツアーへの意気込みや自身の挑戦について、谷村が語ってくれた。

実は「限りなき挑戦」は、1979年の武道館7公演、横浜スタジアム公演の際に掲げたタイトルでもある。
「あのころは怒涛のように時間が過ぎていましたね。40年の歳月が流れた今、もう一度このタイトルを自分たちに問いかけたとき、70歳だからできる挑戦があるのではないかと思いました」
同じ曲を歌っても、かつてとは響きが違ってくる。今の音を伝えることがひとつの挑戦だという。
ツアーのためにつくられた新曲『限りなき挑戦-OPEN GATE-』にも、多くの経験を重ねてきたからこその思いが込められている。
「自分の限界を決めるのは自分自身の心。それを取り払ったら、どこまでも行ける可能性があるという今の思いをOPEN GATEというタイトルに込めました。いろんな事を乗り越えて笑顔で生きてゆく人の背中を押せるといいですね」

全国ツアー「ALICE AGAIN 2019-2020 限りなき挑戦 −OPEN GATE−」は、3人での「アリス」結成日である5月5日、神戸での開催を皮切りに始まる。演奏曲は「アリス」の歴史を感じさせるものから、今もっともリアルな姿を映し出す新曲まで。
「2018年から自分たちが出したアルバムを聴き直したり、資料を読んだりして準備してきました。絶対に外せない曲だけで4時間ぐらいのステージになってしまい、それでは体力的に無理(笑)。こんなに悩んだことは、近年なかったぐらいです」
そのパフォーマンスは、「アリス」とともに青春を過ごした世代はもちろん、彼らの子や孫にわたる3世代の心を動かすものになりそうだ。
強いストロークで刻まれる谷村、堀内のツインアコースティックギターに骨太のツインボーカル、そして矢沢のスネアドラム。大人のロックサウンドを新たに創出しつつも、「アリス」を「アリス」たらしめるサウンドは不動であり、今も昔も唯一無二だ。
「どのアーティストの音楽にも似ていないんですよね。当時、アコースティックギターを弾いてフォークソングを歌うというのが主流だった中で、パーカッションが入りリズムを打ち出す編成のサウンドは、その頃も今も他には無い形なので、若い世代の人達にとっても新鮮だと思います」

ツアーに先立ち、2019年5月1日には、新曲『限りなき挑戦-OPEN GATE-』含めツアーにおける演奏曲目のオリジナル音源を“ほぼ”収録したアルバム『ALICE AGAIN限りなき挑戦-OPEN GATE-THE SET LIST』もリリースされる。最新リマスタリングによるベスト盤で、ライブの予習や終演後の余韻を楽しむためのスペシャルな1枚になるだろう。

谷村新司さん

一方、谷村新司としての“挑戦”も続く。
谷村は1986年から18年間にわたり青山劇場でソロリサイタルを開催してきた。青山劇場が閉館した後、「あの空気感をもったステージをやってほしい」という多くの声に応え、013年には国立劇場で『THE SINGER』と題したリサイタルを再開した。
国立劇場といえば、歌舞伎や日本舞踊をはじめとする伝統芸能の殿堂。その格式ある劇場で、ポップスでは唯一、定期上演が実施されているのが谷村だ。リサイタルは毎年4月の桜の時期に開催され、2019年で7年目を迎える。
「シンガーじゃなくて、ザ・シンガー。自分なりの思いがそこにあります。邪念をすべて捨てて、歌うことだけに心を込めるという思いです」
ほとんどの歌は自身が作詞したものだが、20代のころから伝えたいことはほとんど変わっていないともいう。それは、「あなたにとって大切なものは何ですか?」という問いかけ。同時にそれは、自らへの問いでもある。
「でも、20代に書いた詩に対して、ひょっとしてこんな意味もあったんじゃないかと気付くこともあるんです。それは聴き手も同じ。そういう意味で、歌は一緒に年齢を重ねていくことで届き方が変化していくと実感します」
平成最後となる今回のリサイタルは、さらにスペシャル。青山劇場公演のためだけに創作した15分におよぶ大作『CORAZON』が国立劇場で初上演される。CORAZONとは、ラテン語で「心」を意味する。
「この曲は、ひとりの女性の、心が一番揺れる10年間の物語で、言葉や歌が持っている心を届けたいという思いでつくりました。平成が終わる節目のタイミングで、もう一度この歌を見つめ直してみようと思い今回「THE SINGER」の舞台では初挑戦します」
加えて、2019年は谷村の出身地でもある大阪・フェスティバルホールでの公演も開催される。「国立劇場は2階席が近かったり、花道を使ったり。大阪・フェスティバルホールはまた違った独特の空間であり、大阪の方ならではの熱さがあるので楽しみです」

谷村にとって、ライブは音楽の原点。同じ空気と時間を共有する人とともに熱くなったり、涙を流したり。その交流こそが、音楽そのものだと話す。「リハーサルをしているときは平面。ところが、ライブになった瞬間、立体になるんです。それが音楽の一番の醍醐味だといつも思っています」
平成の終わりから新しい時代へと続くアリス、そして谷村の“挑戦”。それはきっと、理屈を超えた感動を与えてくれるに違いない。

■公演インフォメーション

谷村新司リサイタル2019『THE SINGER』

【東京公演】
日時:2019年4月5日(金)、6日(土)、7日(日)15:00開演(14:30開場)
会場:国立劇場 大劇場(東京都千代田区隼町4-1)
料金:10,800円(税込)
問い合わせ:キョードー東京(TEL:0570-550-799)
【大阪公演】
日時:2019年4月15日(月)18:30開演(17:30開場)
会場:フェスティバルホール(大阪市北区中之島2-3-18)
料金:10,800円(税込)
問い合わせ:キョードー大阪(TEL:0570-200-888)
公演の詳細はこちら

ALICE AGAIN 2019-2020 限りなき挑戦 −OPEN GATE

2019年5月5日(日・祝)神戸国際会館を皮切りに、全国コンサートツアーを開催。
料金:9,720円(税込・全席指定)
公演の詳細はこちら

■アルバムインフォメーション

『ALICE AGAIN限りなき挑戦-OPEN GATE-THE SET LIST』(2枚組)
※新曲「限りなき挑戦-OPEN GATE-」を含む
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
発売日:2019年5月1日
価格:3,500円(税込)
詳細はこちら

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