今月の音遊人
今月の音遊人:ROLLYさん「曲の素晴らしさや洋楽との出会いなど、大切なことはすべてフィンガー5から学びました」
12705views
2019年6月、テリー・リードが来日公演を行う。
“レッド・ツェッペリン加入を断った男”としてロック史に永遠にその名を刻み込まれるテリー。ヤードバーズのギタリストだったジミー・ペイジが新バンド結成にあたって第1候補にしていたのが彼だったが、既にローリング・ストーンズやクリームとのツアーが決まっていたため辞退。代わりに紹介した新人シンガーがロバート・プラントで、そのバンドがレッド・ツェッペリンとなった……というのは有名すぎるエピソードだ。
だが、そんな話題を抜きにしても、テリーは1人のシンガー・ソングライターとして支持されてきた。イギリス人でありながらアメリカ南部の濃厚な味わいを感じさせるソウルフルなヴォーカルはロッド・スチュワートやスティーヴ・マリオットと並んで評価されてきたし、ギタリストとしても単なるリズム・プレイヤーに留まることのない独自のスタイルとテイストを持っていた。
“スーパーラングズ”の異名を取ったハリのあるヴォーカルと骨太なサウンドで魅せる『テリー・リード』(1969)、トム・ダウドをプロデューサーに迎えてスワンプ・フィーリングを込めた『リヴァー』(1973)、抑えの効いた歌声をじっくり聴かせる『シード・オブ・メモリー』(1976)などの名盤を生み出しながら、そのキャリアを通じてヒット・チャートを騒がすことのなかったテリーだが、その実力は多くのトップ・アーティストから認められてきた。アレサ・フランクリンは「イギリスの音楽で良いのは3つだけ。ローリング・ストーンズ、ビートルズ、それからテリー・リード」と1960年代に発言しているし、『テリー・リード』収録の「リッチ・キッド・ブルース」はマリアンヌ・フェイスフルの『リッチ・キッド・ブルース』(1985/録音は1971年)、ザ・ラカンターズの『スピーク・ナウ・オア・フォーエヴァー・ホールド・ユア・ピース』(2008)でカヴァーされている。
チープ・トリックはファースト・アルバム『チープ・トリック』(1977)で「スピーク・ナウ・オア・フォーエヴァー・ホールド・ユア・ピース」をカヴァーしているし、ロブ・ゾンビは自ら監督した映画作品『デビルズ・リジェクト』(2005)で『シーズ・オブ・メモリー』から3曲を効果的に使用している。比較的最近ではジェイク・バグがテリーへのリスペクトをインタビューなどで語っている。
1977年4月8~10日、東京・晴海国際貿易センターで開催されたベネフィット・ライヴ・イベント”ローリング・ココナツ・レビュー・ジャパン・コンサート1977″の模様を収めた14枚組CDボックス・セットが2018年に発売、同イベントに出演したテリーの2曲「オール・アイ・ハヴ・トゥ・ドゥ・イズ・ドリーム」「フォギー・デュー」が収録されたことで再注目されるテリーの久々の来日は、まさにタイムリーだといえるだろう。
(このイベントにはジャクソン・ブラウン、J.D.サウザー、カントリー・ジョー・マクドナルドらが出演したが、CDボックスには未収録)
とはいっても、”ローリング・ココナツ・レビュー”は42年前のこと。その歌声は衰えているのでは……?と二の足を踏むファンもいるかもしれないが、心配は無用だ。彼はエアロスミスのジョー・ペリーのソロ・アルバム『スウィーツァランド・マニフェスト』(2018)にゲスト参加、3曲で”スーパーラングズ”の健在ぶりを聴かせている。なおテリーはスタジオ(ロサンゼルスの”スタジオ1480″)の近所に住んでおり、ジョーとプロデューサーのジャック・ダグラスが声をかけたところ、すぐに歌いにきてくれたという。
また、テリーが2018年、イギリスのTV番組『Later… With Jools Holland』に出演、「トゥ・ビー・トリーテッド・ライト」を歌う映像も見ることができるが、年齢を重ねてさらに味わいを増したヴォーカルには聴き惚れてしまう。
なお、テリーの軌跡を辿るドキュメンタリー映画『Superlungs』も制作中のはずだが、ウェブサイトの更新が2015年に止まっているため、現状は不明だ。
ただ、ウェブで見ることができる5分半の予告編/トレーラーからは、テリーの魅力が十分以上に伝わってくる。
近頃は軽々しく使われることの多い”レジェンド”という表現だが、半世紀以上のあいだ音楽愛好者のハートを揺さぶってきたテリーは、まさにブリティッシュ・ロック&ソウルの”リヴィング・レジェンド=生きる伝説”である。69歳となる彼の日本降臨は、まさに奇跡だ。
公演日:2019年6月27日(木)
1st:8:30開演(17:30開場)/2st:21:30開演(20:30開場)
場所:ビルボードライブ大阪
公演日:2019年6月29日(土)/30日(日)
1st:16:30開演(15:30開場)/2st:19:30開演(18:30開場)
場所:ビルボードライブ東京