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今月の音遊人:挾間美帆さん「私は音で遊ぶ人のために作品を作っているのかもしれません」
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“ひとりオーケストラ”がやりたくて、パイプオルガンに巡り合う/石丸由佳インタビュー
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2019.11.21
オーケストラにも負けないほどの迫力ある響き、建造物と一体となった巨大な構造……パイプオルガンという楽器は、まるで宇宙のように壮大なスケールを感じさせる。そんなイメージを形にした石丸由佳のアルバム『オルガン・オデッセイ』がリリースされた。
「コンサートの後に、お客さまから“宇宙を感じました”というご感想をいただくことが多く、それなら“オルガンは宇宙だ!”というコンセプトでアルバムを作ろうということに。たしかに、銀色のパイプが何千本も並んだ姿は宇宙船のように見えますし、オルガニストが座る演奏台はたくさんのレバーやボタンに囲まれていてコックピットみたいですよね」
映画『スター・ウォーズ』のメインタイトルをはじめ、映画『惑星ソラリス』で使われたバッハの『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』、ホルストの『惑星』、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』の曲など、バラエティ豊かなアルバムとなっている。なかでも、『スター・ウォーズ』は圧巻だ。
「『スター・ウォーズ』は、このアルバムのために山口綾規さんに編曲していただきました。何十人ものオーケストラで演奏する曲を、オルガン奏者ひとりの2本(手)と2本(足)で演奏するというチャレンジですね。まさに“ひとりオーケストラ”です」
そう語る石丸は、もともと“ひとりオーケストラ”をやりたいという思いからパイプオルガンに巡り会ったのだという。
「小さい頃はピアノを習っていましたが、中学に入ってからは吹奏楽部に青春を捧げていました(笑)。はじめはフルート、次にサックス、トロンボーンも始めましたが、どの楽器でもひとつの旋律しか吹けないのがもどかしくて……打楽器もやってみたかった。吹奏楽のすべてのパートを自分でやりたかったのです。パイプオルガンとの出会いは、音楽の授業でした。バッハを演奏している映像を見て、“ひとりで弾いているのに旋律がいっぱい聞こえる!”と感動し、“一生に一度でいいからあの楽器に触ってみたい”と思いました。そんな折、タイミングよく地元の新潟にりゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)という新しいコンサートホールができて、そこにパイプオルガンが設置されたのです。そのオルガンを学生に弾かせてくれるイベントがあり、はじめてパイプオルガンに触ることができました。それが中学3年生のときです」
そうしてオルガン奏者への道を歩みはじめた石丸は、大学院在学中にデンマークとドイツに留学。権威のあるフランスのシャルトル国際オルガンコンクールで、みごと優勝を飾る。
「ファイナルに進んだコンテスタントだけがシャルトル大聖堂のパイプオルガンを弾くことができるのですが、それまで大学の小さな練習室で弾いていた私からしたら、まったくの別世界でした。大聖堂の壁の上の方に設置されたオルガンまで登って行く階段も朽ちてしまいそうなほど古くて、待機する部屋には石像の首とかが転がっていて……ヨーロッパの歴史と文化の中心部分に、いきなり来てしまった、という感じでした」
優勝後はヨーロッパ各地の教会から招待されてコンサートを行うようになった石丸。しかしそれは“武者修行”とも呼ぶべきハードな日々だったと振り返る。
「招待といっても、そこに行くまでの交通手段や宿はすべて自分で手配するので、演奏家というよりツアー・コンダクターのような気分でした。“〇月〇日にコンサートをやってください”と依頼され、いざ教会に行ってみると、見たことのない形の、聴いたことのない音色のオルガンがあって、それでも明日の本番で弾かきゃいけない。コンサートホールではないので、当然コンディションが良いとも限らず、“今日はこの音が鳴りません”とか“今日はこの音が止まりません”とか(笑)。臨機応変に対応する力はつきましたね。そんな日々が4年間ぐらい、100か所以上の教会で弾かせていただきました」
帰国した現在の夢は、日本独自のオルガン文化を発信することだという。
「ヨーロッパでは当然のようにオルガンは教会の楽器ですし、教会においては静かな心で祈るために音楽が演奏されます。けれど私は自分の原点が吹奏楽にありますし、日本ではコンサートホールのオルガンを弾いてきました。大きなコンサートホールに必ずと言っていいほどパイプオルガンが設置されているのは日本だけらしく、ヨーロッパのオルガン奏者からすると羨ましいのだそうです。ならばそれを活かして、日本ならではのオルガン文化があってもいいのではないか。そんなことを考えて、今回のアルバムはコンサートホール(福井県立音楽堂)のパイプオルガンで録音し、芥川也寸志など日本人作曲家の作品も入れたプログラムにしました」
さらに近年は、オルガンを聴くだけでなく、自分で演奏したいというアマチュア奏者も増えているという。
日本発信のオルガン文化に世界が注目する日も近いかもしれない。
取材協力:オルガンショールーム
『オルガン・オデッセイ』
発売元:KING RECORDS
発売日:2019年9月11日
価格:3,000円(税抜)
詳細はこちら
今回の取材場所は、バイカウント社のクラシックオルガンを展示するオルガンショールームです。
クラシックオルガンは、パイプオルガンの音色を電子で再現する楽器です。バイカウント社(イタリア)は、50年以上の実績があるクラシックオルガンの代表的なメーカーで、欧米、アジア、アフリカなど世界各国で高い評価を得ています。
<石丸由佳さんコメント>
気軽にオルガン音楽を楽しめる楽器としてバイカウント社のクラシックオルガンは、愛好家の方々に重宝されているようですね。プロのオルガニストも、自宅での譜読みに利用している方が多くいらっしゃいます。
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バイカウント社のオルガンを展示、試奏も可能(要予約)
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パイプオルガンのしくみや弾き方、マメ知識を紹介
詳細はこちら
文/ 原典子
photo/ 宮地たか子
tagged: パイプオルガン, バイカウント, オルガン, 石丸由佳
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