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本邦初公開の自筆譜やさまざまな時代の肖像画など新たなショパン像に思いを馳せる展覧会/ショパン―200年の肖像
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2020.5.29
tagged: ショパン, ショパン-200年の肖像, 展示会
世界中の人々から愛され続けるショパン(1810~1849年)。ピアノ音楽の可能性を切り拓き、「ピアノの詩人」と呼ばれたショパンは、日本でもっとも有名な、そしてもっともファンの多い作曲家のひとりと言えるだろう。そのショパンが活躍した時代から約200年となるいま、これまで描いていたショパン像を広げてくれそうな展覧会、「ショパン-200年の肖像」が、兵庫会場(会期終了)、福岡会場(会期終了)、東京会場、静岡会場の4会場を巡回中だ。
本展は、日本とポーランドの国交樹立100周年を記念し、ワルシャワに拠点を置く世界最大のショパン・センター、国立フレデリク・ショパン研究所の全面協力によって実現したもの。自筆の楽譜や手紙、遺品といったショパンにまつわる品々をはじめ、ショパンの曲やショパン自身をモチーフにした多彩な芸術作品も展示される。
東京会場を担当する練馬区立美術館主任学芸員の小野寛子氏は語る。
「ショパンというと、『病弱で繊細な早逝の天才』といったステレオタイプなイメージを抱かれることが多いのではないでしょうか。しかしそれは、ジョルジュ・サンドとの別れや病で亡くなったことなど、彼の生涯から生まれた『物語』にすぎないのかもしれません。というのも、今回集められた多くの美術作品や資料から、実はとても力強い一面をもっていたのではないかと感じ取ることができるからです。その視点から改めてショパン作品を聴くと、繊細さだけではなく、ポーランドの魂を代弁する強さが感じ取れるように思います」
こうした、ショパンの多様な人間像を浮き彫りにする展示の一部をご紹介しよう。まず、音楽ファンにとって最大の注目は自筆譜。本邦初公開の《エチュード》ヘ長調 作品10-8 は、この作品の現存する唯一の自筆譜。出版社のための製版用自筆譜だという。当初は番号が「第7番」と書かれ、後から「第8番」に修正されているのも興味深い。
また、贈呈用として美しい浮き出し模様のついた紙に書かれた《ポロネーズ》作品71-1には、「悪筆をひらにご容赦ください。F.F.ショパン」といった書き込みも。《ロンド》ハ短調 作品1は、石版印刷によって1825年にワルシャワの出版社から出版されたワルシャワ初版本。どれも貴重なもので、なかにはポーランドを出ること自体が何十年ぶりとなるものもあるそうだ。目の前の楽譜をショパン自身が書き込んでいたと想像すると、息遣いまでもが感じられる。
もうひとつの本展の大きな特徴が、さまざまな時代に描かれた多彩な肖像画、聴き手に囲まれてサロンでピアノを弾くショパン、彼が活躍した時代の風景画など、数々の美術作品に接することができること。肖像画では、アリ・シェフェールの《フレデリク・ショパンの肖像》(1847年、ドルトレヒト美術館蔵)はぜひ観ておきたい作品のひとつ。
「友人関係にあったシェフェールが、直接本人と会って描いた肖像画で、ショパンが亡くなる2年前の作品です。ショパンが笑みを浮かべているようにも見え、親しい人の前で心を許している雰囲気がうかがえます。写真を元に描かれたシリアスな肖像画とは、だいぶ趣が異なります」と小野氏は話す。
さらに、ショパン作品やショパン自身にインスピレーションを受けて創作されたポーランドの作家たちによる近現代の造形作品(約60点)も、ここでしか観られないラインアップ。ポーランドの人たちにとって、ショパンという作曲家の存在がいかに大きなものかを知ることができる。小野氏は「芸術のジャンルの垣根を超えて、これほど多くのアーティストたちにインスピレーションを与え続けている音楽家は、世界中を見渡してもショパンだけではないのでしょうか」と指摘する。
ポーランドにとって特別な存在であり、さらには国民的英雄であるショパン。私たちは、この展覧会からショパン像を豊かに広げることによって、ポーランドの歴史や友好関係に思いを馳せることができるのではないだろうか。
展覧会「ショパン-200年の肖像」は4都市の巡回展だが、会期の終了した地域や、遠隔地域のファンにお勧めなのが、本展の図録。求龍堂の公式オンラインストアから入手できる。資料としても大変貴重な図録だ。
『ショパン-200年の肖像』
東京会場:練馬区立美術館
2020年6月2日(火)~6月28日(日)
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静岡会場:静岡市美術館
2020年8月1日(土)~9月22日(火・祝)
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文/ 芹澤一美
tagged: ショパン, ショパン-200年の肖像, 展示会
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