今月の音遊人
今月の音遊人:城田優さん「音や音楽は生活の一部。悲しいときにはマイナーコードの音楽が、楽しいときにはハッピーなビートが頭のなかに流れる」
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音楽の作り手と音の職人が追い求める、それぞれの“True Sound”/WONK×ヤマハインタビュー《前編》
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2020.9.30
2019年11月、ヤマハとのコラボプロジェクト「Yamaha Earphones × WONK」として、『Signal』を発表したWONK。井上幹(Bs)、江﨑文武(key)による最新イヤホンEP-E70A&TW-E7Aレビュー(作り手が意図した本当の音が伝わる。最新ワイヤレスイヤホンEP-E70A・TW-E7A/WONKレビュー)に続き、ここからは長塚健斗(Vo)と荒田洸(Dr)もトークに参加。ヤマハ株式会社ホームオーディオ事業部商品戦略グループの湯山雄太・熊澤進と共に、ヤマハとの出会いや今回のコラボレーション、そして『Signal』に込めた想いを大いに語り合ってもらった。
──まず、皆さんがヤマハと出会ったきっかけを教えてください。
長塚:僕、実は幼少期にヤマハ音楽教室でバイオリンを習っていた時期があって。
井上:意外!メンバーの中で一番ヤマハさんと接点がないと思ってた(笑)。
荒田:僕も小学5年生の時かな。ヤマハのエレクトーン教室に通っていました。
江﨑:自分は生粋のヤマハっ子で、4歳からヤマハ音楽教室の幼児科に通い始めました。そこからジュニア専門コースにいって、高校3年までピアノを習ってたんです。
井上:母親がピアノの先生で、ヤマハのグランドピアノでレッスンをしていました。ただヤマハさんのことをしっかりと認識したのは、スタジオのNS-10M(モニタースピーカー)が最初かな。
──そのヤマハからコラボレーションの話が来たときは、どのように感じましたか?
荒田:これはWONK感がある話だな、と。
江﨑:それはつまり……WONKって、音楽を深く掘り下げて楽しむタイプのファンの方が多くて。マスに向けてドンと発信することより、玄人受けするバンドだと思うんです。ヤマハさんも、まずプロフェッショナルに刺さる物を作って、そこからマスに広げていくというイメージを持っていたので、まさに僕らの立ち位置と同期する点が多いなと感じていたんです。
荒田:まさにそういうことです。すべて翻訳してくれました(笑)。
井上:僕は自分がエンジニアの仕事をしている手前、オーディオ関連のタイアップはちょっと悩むんですよ。その製品が本当にいい物なのかどうか、実際に試さないと分からないし。ただヤマハさんのプロオーディオには絶対的な信頼があって、今回は新製品を手に取らずとも、即OKとお返事できました。
長塚:僕はもっと単純に、幼い頃からお世話になってきたヤマハさんという老舗ブランドからお誘いいただけたことが何よりも嬉しかったです。
湯山(ヤマハ):新製品のイヤホンを若い世代へアプローチし、どう届けていくかを考えた時に、生み出す音楽も見せ方も、常に新しいことにチャレンジされているWONKさんとぜひコラボレーションさせていただきたいと思ったんです。さらに、WONKさんの先進性とイヤホン市場に新規参入する我々とで、いい相乗効果が生み出せるのではないかと考えて、お声をかけさせていただきました。
熊澤(ヤマハ):ここで、ヤマハ イヤホンの源流となるヤマハオーディオの歴史と、コンセプトの変遷を紹介させてください。
ヤマハ自体はオルガン製作からスタートしましたが、オーディオの歴史は1967年、オルガンに内蔵されていたスピーカーユニットを使ったNS-20、NS-30というスピーカーから始まりました。その時に、楽器の自然な音を表現しようと“Natural Sound”というコンセプトを掲げます。
近年のヤマハHiFiオーディオでは、音楽総合メーカーだからこそ表現できる、“Musicality(音楽性)”を目指し、これを製品で実現するための3つのサウンドコンセプトが、“OPENNESS(埋もれない抜けのよい音の表現)”、“EMOTION(楽器のボディが発する響きの表現)”、“GROOVE(演奏者が持つタイム感の表現)”です。
現在は、イヤホンやホームシアターなども含めたヤマハ オーディオ全体で、アーティストが表現しようとする音をその通りにお客様に届ける音楽体験を表す“True Sound”をかかげ、物作りに取り組んでいます。
荒田:アーティストが表現しようとした音を、どうやって表現しているんですか?
熊澤(ヤマハ):例えば、グルーヴをきちんと表現するには音が出るところだけでなく、消えるところ、つまり休符が大切です。そこで、休符の状態をいかに無音にするかを大事に考えて設計することで、アーティストが意図したグルーヴを表現できると考えています。
荒田:なるほど。僕はドラマーなので、キックの音がスピーカーによってまったく変わったり、グルーヴがどう再生されるのかとても気になっていて。だから、ヤマハさんの考え方はとても勉強になります。
熊澤(ヤマハ):今の話は楽器も手掛けるヤマハだからこそ生まれたものなんです。グランドピアノCFXの開発リーダーとの会話で、「優れた楽器にはどんな小さな音で弾いても大ホールの最後部座席まで届く音がある、つまりピアニッシモでも音が抜ける」、「ヨーロッパでは“ピアノが歌うかどうか”で評価が決まる」という話を聞きまして。そこからヒントを得てピアニッシモでも抜ける音=“OPENNESS”の発想が生まれ、ピアノが歌っているかのように感じさせる“GROOVE”“EMOTION”が導き出されたんです。
江﨑:すごく面白い話ですね。楽器を作ってきたヤマハさんだからこそ、オーディオに関しても、プレイヤー的な視点を持っているんだなと感じました。
──ヤマハの新製品コンセプトに対して、WONKのみなさんはどのようなコンセプトで『Signal』を作ったのですか?
江﨑:僕らにとって2つの新しい挑戦がありました。まずひとつは、『Signal』を作った2019年11月の段階で、WONKがやってこなかった新しいテイストのサウンド感を目指したこと。イヤホン市場に新規参入するヤマハさんと同じように、新しい風が吹くような心持ちの曲にしようと考えたんです。
ふたつ目に、僕の中でヤマハさんと言えば、やっぱり小さい頃から弾いてきたグランドピアノ。その想いが強くて、ピアノを曲の軸にしたいと考えました。それから、ヤマハさんが作るイヤホンはストリングスがすごくきれいに響くのだろうと勝手に想像して、クラシカルな要素も意識して曲を作りました。
湯山(ヤマハ):完成した『Signal』を最初に聴かせていただいた時、これまで聴いたことがない新鮮さを感じました。しかもミックスを担当された井上さんから、曲を立体的に聴かせるためにリバーブを効果的に使ったと伺って。イヤホンでリバーブの響きをきれいに再現するためには、技術的にも左右のイヤホンで発音タイミングや周波数特性が揃っている必要があって、ヤマハのイヤホンでそこがきれいに聴こえたとおっしゃっていただけた時は、とても嬉しかったです。素晴らしい曲を作っていただいて、本当にありがとうございました。
盛り上がりをみせてきたWONK×ヤマハ対談。トークはさらにサウンドの奥深くへ。WONKが目指すサウンドと、ヤマハ オーディオが追求するサウンド、それは一体どのようなものなのか。それは、ぜひ《後編》で確かめて欲しい。
▶音楽の作り手と音の職人が追い求める、それぞれの“True Sound”/WONK×ヤマハインタビュー《後編》
▶作り手が意図した本当の音が伝わる。最新ワイヤレスイヤホンTW-E7A・EP-E70A/WONKレビュー
日本の音楽を再定義するエクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」。メンバーそれぞれがソウル、ジャズ、ヒップホップ、ロックのフィールドで活動するプレイヤー/プロデューサー/エンジニアという異色なバンド。
2016 年に1st アルバムを発売して以来、国内有数の音楽フェス出演や海外公演、成功を果たす。ジャンルや世代を超えた国内外のビッグアーティストへ楽曲提供・リミックス・演奏参加するなど、音楽性の高さは多方面から支持されている。2019年7月にEP『Moon Dance』をリリース、11月にシングル「Signal」を配信。2020年1月リリースの香取慎吾ソロアルバム『20200101』にて「Metropolis(feat.WONK)」を楽曲提供・共演を果たし話題となる。2020年4月にシングル「HEROISM」、6月3日には「Rollin’」を配信、6月22日に4枚目のフルアルバム『EYES』をリリース。
オフィシャルサイトはこちら
文/ 布施雄一郎
編集/ 篠原繭
photo/ 山中慎太郎(Qsyum!)
tagged: イヤホン, WONK, TW-E7A, EP-E70A
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