Web音遊人(みゅーじん)

音楽の作り手と音の職人が追い求める、それぞれの“True Sound”/WONK×ヤマハインタビュー《後編》

音楽の作り手と音の職人が追い求める、それぞれの“True Sound”/WONK×ヤマハ対談《前編》に続く、WONKとヤマハとのトーク。《後編》の話題は、ヤマハ イヤホンの感想から音の哲学、ヤマハ オーディオが提供する音楽体験“True Sound”へ。音楽を生み出すアーティストと、オーディオ職人によるサウンド談義が展開された。

ハイエンドオーディオ哲学とホームシアター技術を注入~ヤマハ イヤホン誕生の裏側

──長塚さんと荒田さんは、ヤマハ イヤホンの新製品、TW-E7AとEP-E70Aを試聴してどのような印象を持ちましたか?

長塚:自分の声のニュアンスや、歌った時に理想とした響きが耳の中でしっかりと美しく聴こえました。あとWONKの音楽って、ボーカルが前にドンといて、後ろにドラムが引っ込んでるような感じではないので、そうしたバンド全体のバランスが、僕らが表現したいと考えている形でしっかりと再生されていて、これも音楽の作り手として嬉しく思いました。

荒田:リバーブが耳の中ですごくきれいに響きますね。物によっては、まったく響きが感じられないイヤホンも多いので、すごくいいなと感じました。

湯山(ヤマハ):まさにそうした音を実現するために、TW-E7AとEP-E70Aには、ハイエンドオーディオ製品で培ってきた技術とノウハウを投入したんです。

熊澤(ヤマハ):今回せっかくの機会ですので、我々が目指すサウンドを突き詰めたヤマハオーディオの最高峰モデル「5000シリーズ」を紹介させてください。

インタビュー現場にセッティングされた、ヤマハ オーディオの最高峰モデル「5000シリーズ」

熊澤(ヤマハ):システム全体の一番の特長は、ターンテーブルGT-5000から、プリアンプC-5000、パワーアンプM-5000、そしてスピーカーNS-5000まで、すべてをノイズに強いバランス伝送という方式で接続できることです。これも、音楽の大切な要素のひとつであるグルーヴをきちんと表現するため、休符、つまり無音状態の正確な再現性を突き詰め、徹底的にノイズ対策を行った結果です。このようにして、究極のハイエンドシステムを完成させ、音の入口であるレコードのカートリッジから、音の出口となるスピーカーまで、トータルにヤマハ オーディオのテーマである“True Sound”を実現しました。

湯山(ヤマハ):こうした音の哲学を、サイズなどいろんな制約がある中で、小さなイヤホンに注入して、新製品のTW-E7AとEP-E70Aを開発しました。それともう一つ、我々はAVレシーバーをはじめとするホームシアター製品も手掛けていまして、そこで独自開発したデジタル信号処理技術を「リスニングオプティマイザー」としてEP-E70Aに転用しています。このように、ハイエンドオーディオの哲学とホームシアターの技術力、これらを新しく発売したイヤホン2モデルに上手く活かすことができました。

新製品のTW-E7A(左手前)とEP-E70A(左後)、「リスニングオプティマイザー」のもととなる技術が使われているAVレシーバーのRX-V6A(右)

音の職人としての姿勢~プロフェッショナルな土壌を押さえたヤマハの物作り

荒田:お話を聞いて改めて、音の職人って本当にカッコいいって思いました。

江﨑:だからこそヤマハさんには、プロフェッショナルユースの物作りを続けて欲しいなと思います。やっぱり、プロフェッショナルな土壌を押さえたうえでのコンシューマ製品というのが、一番カッコいいですから。

長塚:そういった物作りに対する姿勢を感じるからこそ、ヤマハさんなら大丈夫って僕らは安心できますし、同時にミュージシャンとして、たくさんの刺激を受けます。

井上:今って、作り手があえてデフォルメする必要がなくなってきていると考えていて。そういう時代になったのは、プロフェッショナルオーディオの技術とノウハウがあったからこそなので、そこを押さえたヤマハさんの物作りって、やっぱりカッコいいですね。

熊澤(ヤマハ):今の言葉はすごく響きました。我々もサウンドをデフォルメしてきませんでしたし、だからこそお客様は、最終的に音楽のワンフレーズや、ある一音、この歌といったところに感動するんだと思います。アーティストの想いを感じられる“True Sound”をとおして、改めて音楽は、「メロディ」「ハーモニー」「リズム」による表現で成り立っているんだという感覚を、これからも大事にしていきたいなと、今回の対談で強く感じました。

大事なのは真摯に音を作り込んでいくこと~WONKにとっての“True Sound”

──最後に、WONKのみなさんがそれぞれに目指す“True Sound”を教えてください。

江﨑:僕個人としては、自分の中のノスタルジーが引き出される音を発信していきたいと思っています。例えば、僕らがメジャーキーの曲を聴いて明るく感じたり、マイナーキーは暗く感じるというのも、広く捉えると人類史の中で養われた感覚で、それって民族によっても違ってくるんです。それはつまり、音楽を聴くことは、積み重ねてきた自分の歴史と対峙することだと僕は考えているので、自分の音楽表現としては、自分の中に残っている記憶や想い出が、もう一度フワッと薫るような、そういう音を発信していきたいと思っています。

荒田:僕は場所を感じられる音作りを目指しています。音を単体で聴いた時に、リスナーをどこかに連れていける音というか。ただ単にスタジオで録りましたとか、音圧で攻めてますっていう音が嫌いで。もっと自然に、広がる音に包まれながら、どこかの場所を感じてもらえる音を鳴らしたいなと思っています。

長塚:僕はバンドの中で歌詞を書く立場なのですが、歌詞の中には自分のバックグラウンドが必ずどこかに入ってくると思っています。歌詞はもちろん、声の響きやそのほかのいろんな要素で、リスナーに景色をしっかりと感じとってもらえるような歌を、これからも歌いたいと思います。

井上:先ほど言った「作り手がデフォルメする必要がなくなった」という話につながりますが、音楽をもっと細かく聴く、細かく作っていくことを忘れないことが、僕は“True Sound”だと思っています。今はデジタルオーディオの発展で、誰もがきちんと音に向き合える時代。だからこそ、作り手は、あえてインパクトを狙ったりするのではなく、自分が表現したい細かなところまでをしっかりと作ることが重要だし、聴く人も、そこを感じとることが、より人生を豊かにできる音楽の聴き方だと思うんです。ですから自分自身も、今まで以上に、真摯に音を細部まで作り込んでいくことを、このデジタル時代の目標にしたいと思っています。

音楽の作り手と音の職人が追い求める、それぞれの“True Sound”/WONK×ヤマハインタビュー《前編》
作り手が意図した本当の音が伝わる。最新ワイヤレスイヤホンTW-E7A・EP-E70A/WONKレビュー

■WONK

日本の音楽を再定義するエクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」。メンバーそれぞれがソウル、ジャズ、ヒップホップ、ロックのフィールドで活動するプレイヤー/プロデューサー/エンジニアという異色なバンド。
2016 年に1st アルバムを発売して以来、国内有数の音楽フェス出演や海外公演、成功を果たす。ジャンルや世代を超えた国内外のビッグアーティストへ楽曲提供・リミックス・演奏参加するなど、音楽性の高さは多方面から支持されている。2019年7月にEP『Moon Dance』をリリース、11月にシングル「Signal」を配信。2020年1月リリースの香取慎吾ソロアルバム『20200101』にて「Metropolis(feat.WONK)」を楽曲提供・共演を果たし話題となる。2020年4月にシングル「HEROISM」、6月3日には「Rollin’」を配信、6月22日に4枚目のフルアルバム『EYES』をリリース。
オフィシャルサイトはこちら

YouTube公式チャンネル オフィシャルTwitter オフィシャルInstagram

特集

Chageさん「心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」 Web音遊人

今月の音遊人

今月の音遊人:Chageさん「頭ではなく、心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」

11126views

音楽ライターの眼

なぜカプースチンは、東西冷戦のソ連でジャズよりもジャズらしい曲を作れたのか?

10204views

トランスアコースティックピアノ™

楽器探訪 Anothertake

音量の問題を解決し、ピアノの楽しみを広げる「トランスアコースティックピアノ」

6010views

ピアノやエレクトーンを本番で演奏する時の靴選び

楽器のあれこれQ&A

ピアノやエレクトーンを本番で演奏する時の靴選び

50076views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

9504views

オトノ仕事人

プラスマイナス0.05ヘルツまで調整する熟練の技/音叉を作る仕事

39561views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

10839views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7891views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

14596views

われら音遊人:「非日常」の充実感が 活動の原動力!

われら音遊人

われら音遊人:「非日常」の充実感が活動の原動力!

8996views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

5290views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11820views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

9504views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

15561views

ブラック・サバス

音楽ライターの眼

2025年7月、ブラック・サバス最後のライヴが実現。“出演しない”アーティストを検証する

8912views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

8328views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

6930views

ギター文化館

楽器探訪 Anothertake

歴史的ギターの音を生で聴けるコンサートも開催!

8474views

札幌コンサートホールKitara - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

あたたかみのあるデザインと音響を両立した、北海道を代表する音楽の殿堂/札幌コンサートホールKitara 大ホール

20372views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

6441views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

32154views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

4473views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28228views