Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:MORISAKI WINさん「音は感情を表すもの。もっと音楽を通じたコミュニケーションをして、世界を見る目を広げたい」

俳優として多忙な日々を送る中、2020年にメジャーデビューし、歌手としても本格的に活動しているMORISAKI WIN(森崎ウィン)さん。グローバルに活躍している彼だけあって、音楽の捉え方にも広い視野が反映されています。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

撮影などの現場帰りに運転しながら聴くと、めちゃめちゃ癒される曲があるんです。『不得不愛(ブ・デ・ブ・アイ)』っていう曲で、元は韓国のFreeStyleというラッパー2人と、女性のシンガーで歌っている曲なんですけど、それを中国語でカバーしているんです。
原曲を知ったのは21、2歳ぐらいの時で、仲の良かったクラブのDJさんがお開きの時にかけていた曲でした。R&Bとかで盛り上がった最後に、その曲がスッと体に染み入ってくる感じで。だから、1日の終わりといったら、これに戻るっていう自分がいたんですよね。後に中国語バージョンがあることを知り、それがこの『不得不愛』でした。歌っている弦子(Xian Zi)というシンガーは、「アイ・ラブ・ユー」というところを、「アイ・ラブ・“フュー”」って歌うんです。「F」が入るんですよね。これがかわいくて!サウンドの響きもなじみのある感じです。ミャンマーは中国のドラマとか時代劇とかが昔から入ってきていたので、そのBGMの雰囲気を感じるんですよね。

Q2.MORISAKI WINさんにとって「音」や「音楽」とは?

音は、感情を表すものという気がしています。例えば「いや、全然怒ってないから……バンッ!(とテーブルをたたく)」。こういうのに、僕すごく敏感なんです。ドアの閉め方などもそうですね。人間の行動によって生まれるものだから、音って感情だなあって思います。コロナ禍の今は、マスクをしていて表情がわかりづらいから、なおさら音には敏感になりますよね。音楽も同じで「きっとこいつ、このパートをイライラしながらレコーディングしてるな」って、すぐわかります。あ、自分のことですよ(笑)。うまく歌えなくて、イライラしながら録っているなあって。いくらエフェクトをかけようが、そこに人間味が出てしまう。いいことでもあると思うんですけどね。
好きな音?僕、寝るときに窓を開けていることが多いんです。車の走る音とか嫌いじゃないし、ちょっと風が吹いていたりするのもすごく好きなんです。安心感が生まれるというか。むしろ無音だと色々なことを考えちゃって眠れない。窓が開けられないホテルだと、ユーチューブなどで何か音を流しながら寝ることもあります。きっと、音自体が好きなんですね。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

「音遊人(みゅーじん)」って、いいネーミングですよね。すてきだなあ。考えた人、誰ですか?(笑)。この言葉で連想したのが、動物です。生物って言った方がいいかな。僕ら人間は言葉というものがあって、それで意思を伝えたりするけど、動物は言葉がなくても木をたたいたりして何かを知らせますよね。鳥も木をつついたりして、ね。彼らにとって音は、コミュニケーションツール。だから、音で遊んでいるのは生物全般だと思うんですよ。それが発展して、音楽、ミュージックになっていく。人類も最初は太鼓をたたいているイメージですよね。僕も暇になると、こうやって遊んでますよ(と言って、テーブルをリズミカルにたたく)。そうそう、今、ドラムをやりたくて、電子ドラムを買おうか迷ってるんですよ。(「いいものを取り揃えてますよ」と、ヤマハスタッフの声)。そっか!それ、MIDI入力もできるんですか?いくらですか?(……と、しばし脱線)

僕にとっても、音楽活動はコミュニケーションの一つになっていると思います。ゆくゆくは、ギター1本持ってアジアを回ったりしたいな。弾き語りツアーみたいなのをしたいです。武者修業ですね。この間、ナオト・インティライミさんが話してくれたんですけど、知らない土地に行っても、サッカーと音楽ができれば大丈夫だよって。いきなり乗り込んでも、すぐライブできるからって。だから、もっと音楽を通じたコミュニケーションをして、世界を見る目を広げていきたいなと思っています。

MORISAKI WIN〔もりさき・うぃん〕
1990年8月20日生まれ。ミャンマーで生まれ育ち、小学校4年生の時に来日。中学2年生の時にスカウトされ、芸能活動を開始。2008年にダンスボーカルユニットに加入し、メインボーカルを担当する。俳優としては、2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」で主要キャストに抜擢され、ハリウッドデビュー。2020年、映画「蜜蜂と遠雷」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。同年7月、『パレード – PARADE』でメジャーデビュー。全世界に向けた配信ライブなど海外を視野にした音楽活動を積極的に実施する。2021年5月、ファーストアルバム『Flight』を発売し、同年10月には新曲『Me,Myself and I』を配信リリース。
オフィシャルサイト

photo/ 阿部雄介

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人:清塚信也さん

今月の音遊人

今月の音遊人:清塚信也さん「音楽はあやふやで不安定な世界。だからこそ、インテリジェンスを感じることもあります」

12480views

映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』

音楽ライターの眼

映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』/自分の中に宿る巨匠の魂を呼び起こす

2442views

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

24189views

トロンボーン

楽器のあれこれQ&A

初心者なら知っておきたい、トロンボーンの種類や選び方のポイント

13968views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

10124views

トーマス・ルービッツ

オトノ仕事人

アーティストに寄り添い、ともに楽器の開発やカスタマイズを行うスペシャリスト/金管楽器マイスターの仕事

2255views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

5769views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11173views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

13382views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

7458views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

すべては、あの日の「無料体験レッスン」から始まった

5549views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

31383views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

11256views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

32182views

音楽ライターの眼

キャリアの最終章に入ったドミンゴが「音楽の力」で聴き手の心を魅了する

3573views

コレペティトゥーアのお仕事

オトノ仕事人

高い演奏技術と幅広い知識で歌手の表現力を引き出す/コレペティトゥーアの仕事(前編)

20820views

われら音遊人:Kakky(カッキー)

われら音遊人

われら音遊人:オカリナの豊かな表現力で聴いている人たちを笑顔に!

8540views

練習用のバイオリンとして進化する機能と、守り続けるデザイン

楽器探訪 Anothertake

進化する機能と、守り続けるデザイン

5403views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

7250views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5674views

大人のピアニカ

楽器のあれこれQ&A

「大人のピアニカ」の“大人”な特徴を教えて!

3904views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

3338views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10553views