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ピンク・フロイド関連映像作品3タイトルがリリース。ステイ・ホームなんて怖くない
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2020.12.16
2020年、新型コロナウィルスの脅威により、世界のコンサート・ビジネスは大打撃を受けた。国内アーティストに関しては配信や少人数ライヴなど、手探りで可能性が模索されているが、海外アーティストの大会場でのライヴ・スペクタクルを再び体験出来るようになるには、まだ時間がかかりそうだ。
そんな音楽ファンの溜飲を下げるべく、ピンク・フロイド関係の映像作品3タイトルが前後してリリースされた。
ピンク・フロイドはロック・コンサートの可能性を広げたバンドだ。1967年にデビューした彼らはオイル・プロジェクションなどのサイケデリックなステージ・ヴィジュアルで“スウィンギング・ロンドン”を騒がせた。1970年代、ロック産業の巨大化に伴い、彼らのライヴも大規模なものになっていき、ステージ上の円形スクリーンや空を飛ぶ豚やベッド、1979年から1980年の『ザ・ウォール』ツアーでは実際にステージ上に壁を築いてしまうなど、音楽と視覚効果で絶大な支持を得てきた。1973年のアルバム『Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)』は世界で5千万枚という空前のヒットを記録しており、2020年にも全英ロック・チャートの上位にランクインしている。
今回リリースされるのは、まず『Delicate Sound Of Thunder(邦題:光〜PERFECT LIVE!)』。1988年のライヴを収録、同年リリースされた映像作品だ。オリジナル35mmフィルムを修復、再編集、リミックス、曲を追加した新ヴァージョンは2019年、ボックス・セット『The Later Years 1987 – 2019』の一部として世に出たが、単独作品として新装盤が出ることになった。ロジャー・ウォーターズがバンドのリーダーシップを取っていた頃は、その時点での最新アルバムのトータル性を重視したライヴを行っていた彼らだが、このライヴでは『A Momentary Lapse Of Reason(邦題:鬱)』を軸としながらも、各アルバムからのクラシックスの数々を交えたベスト選曲のステージを披露。サポート・メンバーを加えたビッグなライヴ・パフォーマンスは、誇張でなく息を呑むものだ。1988年3月には16年ぶりの来日公演も実現。ショーアップされたステージを見せてくれた。
そしてロジャー・ウォーターズが2017年から2018年に行った“アス・アンド・ゼム”ツアーから2018年6月18〜23日、アムステルダム公演を収めたライヴ映像作品が『アス・アンド・ゼム』だ。近年のロジャーはピンク・フロイド時代のナンバーも積極的に演奏しており、『Dark Side Of The Moon』『Wish You Were Here(邦題:炎〜あなたがここにいてほしい)』『アニマルズ』『ザ・ウォール』からの楽曲もプレイされている。壮大なイルミネーション、『アニマルズ』でおなじみバターシー発電所、“トランプ豚”などが登場、最新ソロ・アルバム『イズ・ディス・ザ・ライフ・ウィ・リアリー・ウォント?』(2017)からの『デジャ・ヴ』『ザ・ラスト・レフュジー』も大きな声援で迎えられる。ロジャーのソロ来日公演は2002年のたった1回しか行われていないため、家にいながらにしてこのライヴを体験出来るのが嬉しい。
ピンク・フロイドのドラマーだったニック・メイスンが自らのバンド、ソーサーフル・オブ・シークレッツを率いて行ったライヴを収めた『ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス』は、より熱心なファンを対象にした作品だ。バンド初期のリーダーだったシド・バレット時代を中心に、1967年から1972年のナンバーをプレイ。『Intersteller Overdrive(邦題:星空のドライブ)』『ルシファー・サム』『ナイルの歌』『Atom Heart Mother(邦題:原子心母)』など、ピンク・フロイドが長年ライヴ演奏してこなかった名曲が次々と演奏される。ちなみに再結成以降のピンク・フロイドと重複するのは『One Of These Days(邦題:吹けよ風、呼べよ嵐)』と『Astronomy Domine(邦題:天の支配)』のみ。あとはロジャーが『Set The Controls For The Heart Of The Sun(邦題:太陽讃歌)』、デヴィッドが『アーノルド・レーン』を演奏したことがあるぐらいで、かなりレアな選曲といえる。
ニックはバンドのドラマーとしてプレイしており、ヴォーカルを取るのは再結成ピンク・フロイドやカヴァーデイル・ペイジ、ザ・パワー・ステーションなどで活動してきたガイ・プラット(ベース)とスパンダー・バレエのゲイリー・ケンプ(ギター)の2人。歴戦の強者たちを得て、ロンドンのライヴ会場“ラウンドハウス”の屋根が吹き飛びそうな迫力のステージを繰り広げる。
3作いずれもボーナス特典映像を収録。不要不急の外出を差し控えながら、たっぷりピンク・フロイドの音楽に浸ることが出来る。さらに彼らの一連のオフィシャル・アルバム、そして最近再発されたメンバー達のソロ・ワークスがあれば、ステイ・ホームなんて怖くない!
ピンク・フロイド ソニーミュージックオフィシャルサイトはこちら
山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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