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津軽三味線とピアノによる唯一無二の“フロム・ジャパン”/吉田兄弟×Les Frèresインタビュー
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2021.10.25
tagged: ピアノ, インタビュー, 津軽三味線, 吉田兄弟×Les Frères
津軽三味線で伝統芸能の世界に新風を吹き込み続ける「吉田兄弟」。1台4手連弾という独創的なプレイスタイルを確立し、“ピアノ革命”と称された「レ・フレール」。世界を魅了するこの2組の兄弟ユニットのコラボレーションアルバム『吉田兄弟×Les Frères』が2021年9月29日にリリースされた。“弦の匠たち”によって生み出されたこのアルバムは、あたかも古にさかのぼり、未来へと続いていく壮大な絵巻のよう。ここにしかない音の物語に心が震える。
吉田良一郎(兄)と健一(弟)の津軽三味線アーティスト「吉田兄弟」。斎藤守也(兄)と圭土(弟)のピアノ連弾デュオ「レ・フレール」(フランス語で兄弟の意)。両者が出会ったのは2017年のことだ。当初は対バン形式の共演からのスタートだったが、その後それぞれのオリジナル曲をアレンジし、4人でステージへ。競演を重ね、聴き手を熱狂の渦に巻き込んできた。
打弦楽器であるピアノと撥弦の三味線は、相性がいいという。しかし、至極のコラボ誕生の背景には楽器同士の相性にとどまらない、響き合うものがあったようだ。
「ピアノも三味線も、空気の振動で生の音を感じることができる楽器なんですよね。聴覚だけではなく、体感するといったイメージでしょうか。なかでもおふたりのピアノはそれが強いと感じていました。そして、曲のパッションというか、内面的なエネルギーのようなものが似ていると思いました。そこは音を出す以前の問題だから、一番大事な部分ですよね」(健一)
「合わせることは、実は簡単ではないんです。でも僕たちは常に兄弟でやってきたので、合わせることが得意な者同士なんじゃないかなという気がします」(良一郎)
ライブでは兄を入れ替えたり、兄・弟チームに分かれたりとW兄弟ならではの演奏も。
「どちらとやってもまったく違うものができるので、ワクワク感があります。でも、個が立っていないとそれは難しい感じがしますね」(圭土)
個があるからこそのデュオ。デュオあってのコラボ。そして、それぞれの個を持ち寄り、満を持して4人でつくり上げたのが今回のアルバムだ。
収録されているのは、ライブでの人気楽曲に本作のために書き下ろされた新曲3曲を加えた計9曲。4人全員がコンポーザーという強みがいかんなく発揮された、多彩な楽曲がそろった。
「今回、曲でそれぞれの個性を出すということはもちろんなのですが、フレーズでも個性がわかるようにすることを心がけました。それぞれに得意なフレーズを活かして4人で弾く部分を減らし、引き算からストーリーをつくっていきました」(健一)
それをもっとも象徴するのが、新曲の『BUSHIDO』。圭土が母体をつくり、健一が壮大に仕上げた弟ふたりの合作だ。ピアノと津軽三味線の魅力を最大限に引き出したこの曲は、聴き手を壮麗な絵巻を見ているような感覚に誘う。約6分半という昨今では異例の長さながら、ドラマチックな物語に惹きつけられ6分半はあっという間だ。
同じく新曲の『Stand Up』は健一が作曲を担当した。
「お客さんと盛り上がりたいと思ってつくりました。同時に、コロナ禍にあって自分を鼓舞する意味もありましたね。マイナーコードとメジャーコードを混ぜながら、楽しさとかっこよさを追求し、クセのある感じに仕上げました」
守也による新曲『転々』は、レ・フレールお得意の弦を押さえるミュート奏法が印象的だ。
「ミュート奏法の音色と三味線の音色は相性がいいと思っていたので、そういう楽曲をつくりたかったんです。レ・フレールと吉田兄弟でしか出せない音が出せていると思います」(守也)
良一郎は自身が作曲し、コンサートではいつも1曲目に演奏される『冬の桜』を推す。
「アルバムに収録されたのは、流行りのファーストテイク(笑)いわゆる一発録りでした。津軽三味線は激しく細かいフレーズが得意で荒波とか吹雪というイメージがあると思いますが、それだけではないことを表現したくてあえてシンプルにつくった楽曲です。三味線とピアノだけで、世界観がちゃんと表現できていると思います」(良一郎)
さらに、良一郎作の『しぐれ』に守也の『夢』をサンドした兄ふたりの競演『しぐれ~夢』や、この楽曲を収録したいという想いが今回アルバム誕生のきっかけとなったという『シャクナンガンピ』。『Parallel world』、『RISING』、『Joker』とファンの魂を揺さぶってきた人気楽曲が、それぞれに違った魅力を放つ。
制作は2021年6月からスタートし、兄弟同士ならではの「夏に親戚の家に集まるような雰囲気」で楽しい時間だったと4人は笑う。それぞれの個性と想いが詰まったアルバムは、ジャケットも斬新だ。吉田家の「五三の桐」と斎藤家の「木瓜」という家紋があしらわれ、出会うべくして出会った2組の兄弟の運命すら感じさせる。
「シンプルですけれど、“和”は我々の持っている共通の武器であると思うので、ビジュアルを含めて力強く印象に残るようなものにしました」(健一)
そうして出来上がった自信作に、彼らは胸を張る。
「カラーがはっきりしていたり、音が違ったり……みんなバラバラですが、この4人だからこその音をくっきり表現できました。2組のアーティストと2種類の楽器ですが、そうは思えない内容になっていると思います」(守也)
「ここまで“ガチで”ピアノと津軽三味線で、ましてお互いが兄弟で1枚のアルバムをつくった例はたぶんないと思うんですよね。吉田兄弟はいろいろなジャンルとコラボレーションして津軽三味線の可能性を追求してきましたが、レ・フレールさんの力を借りてまた新しい一面をお伝えできると思います」(良一郎)
“フロム・ジャパン”にこだわり続けてきた圭土もこう話す。
「日本人とか“フロム・ジャパン”というのは、ピアノだけではなかなか出しづらい。でも、吉田兄弟とやることで、とても心強く感じました。インストは情景が思い浮かびやすいし、世界共通語です。津軽三味線はとくに、音そのもので情景を思い浮かべることができます。おふたりのおかげで、誇りに思って発表できる作品ができました。作曲家として、作りたかったモチーフのひとつを具現化できたことを本当にうれしく思います」
さらに、健一はその先を見据えていた。
「いろいろなことが緩和され4人で海外に行けるようになれば、これは新しい“フロム・ジャパン”のコンテンツになり得ると思っています」
今回のアルバムは、コラボ制作のために集まったのではなく、ライブから生まれたことに大きな意味があるという。アルバムを引っさげてのコンサートもスタートする。
「ライブではお客さんの反応を感じて、全然違うものが生まれます。アルバムを聴いて予習して、ぜひ足を運んでいただきたいです」(守也)
ここにしかない音の世界に浸り、空気の振動を体で感じ、唯一無二の音楽を感じて欲しい。
発売元:ユニバーサルミュージック
発売日:2021年9月29日
価格:3,300円(税込)
詳細はこちら
2021年10月30日(土)大田市民会館 大ホール(島根県)
2021年10月31日(日)浜田市石央文化ホール 大ホール(島根県)
2021年12月23日(木)東京国際フォーラム ホールC(東京都)
※詳細はオフィシャルサイトでご確認ください。
吉田兄弟
Les Frères
文/ 福田素子
photo/ 坂本ようこ
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