Web音遊人(みゅーじん)

いまの自分を表現できるのが歌/シンガーソングライター・甲田まひるインタビュー

天は二物を与えず。そんなことわざは、彼女にはまったく当てはまらない。
甲田まひる。ファッションアイコンであり、2018年にはビバップを中心としたアルバム『PLANKTON』を発表し、話題を呼んだジャズピアニスト。近年では、俳優としての彼女に惹かれた人も多いだろう。
そして、2021年11月にはシンガーソングライターとしてデビューEP『California』をリリース。音楽性を刷新したチャレンジングな作品で、リスナーを沸かせている。

やりたいことがより表現できるのが歌

『California』は全4曲を収録。作詞作曲を甲田が手がけ、共同アレンジにはGiorgio Blaise Givvn、ベースは新井和輝(King Gnu)、ドラムは勢喜遊(King Gnu)、そしてギターには映像作家として知られる山田健人を迎えて制作。
「『PLANKTON』をつくっているころから、次は歌をやりたいと思っていました。大きな構想としては、フェスで盛り上がれる曲を目指しましたが1~2年はカタチにならなくて……。その後DTMを始めて、歌のデモをつくり貯めていきました」
表題曲である『California』は、そのなかの一曲。ヒップホップやロック、K-POPなど多様な音楽がセクションごとに目まぐるしく展開し、歌とラップが繰り出される。
実は『PLANKTON』のリリース以前からヒップホップにのめり込み、自分の音楽性に落とし込んでいった甲田。ローリン・ヒルを聴いたことをきっかけにヒップホップ、そして歌への興味が高まっていったという。
「アリアナ・グランデの影響もあります。私はずっとジャズをやってきたのですが、もともとの自分のなかにあるポップさも出せるようになりたかったんです。そのためにできる音楽のジャンルがもっとあると感じていました。アリアナを聴いたとき、もしこういうジャンルを歌うとなったら、自分のファッションの表現ももっと広がるんじゃないかなとも思いました。より表現したいことをこのタイミングでできるのが歌なんじゃないかなと」
その歌唱は、冒頭のフレーズで始まる。
「“わたしはカリフォルニアで生まれた”という英語の歌い出しは、最初のデモからあって。カリフォルニアが大好きだから無意識に出てきたんだと思います。あまり意味はないのですが、残そうということになって書き上げていきました」
カリフォルニア生まれではないが、どこで生まれてどういう生き方をするかは自分の自由。
「みんなSNSに嘘を書いたり、自分をいいように見せようと偽ったりしている部分がありますよね。そういうところにつながったら、面白いんじゃないかと思いました」
同曲は、Givvnとともにもっとも面白いことをとことん突き詰め、アレンジにアレンジを重ねて完成した。一方で、彼女のピアノ独奏が聴ける『California.pf』、デモ曲の雰囲気を色濃く残した『California_demo@201113』も収録。まったく違った仕上がりで興味深い。

2曲目の『Love My Distance』は、『California』とは対極的ともいえるシンプルな一曲。「発展させがいがある」と数あるデモ曲のなかから選んだという。
「もともとは20歳になる直前、19が終わるというタイミングでつくった曲です。まったく違う歌詞だったんですけれど、聴き返してみるとサウンドの感じがラブソングにハマりそうだなと思って。書いていったら、ラブソングに行き着きました」

海外のフェスに出ることが目標

「自分が100%かっこいい!と思うものをつくっていますが、それを聴いてくださった皆さんにどう感じてもらえるかが楽しみです。それが違和感であっても興味であっても、何かのきっかけになればうれしいです」
自分がやりたいこと、好きなこと、かっこいいと思うことを少しもごまかすことなく、媚びることなく表現する。それが彼女の才能が圧倒的な輝きを放ち、支持されるゆえんかもしれない。
そんな甲田は今、どんな未来図を描いているのだろう。
「次はこれだなと思ったとき行動に移すのが早いので、今思っていたとしたらすでに挑戦していますね。でも、とりあえず自分のなかではフェスが目標なので、そこに向かって全速力で走っていきます」


甲田まひる(Mahiru Coda) – California

■インフォメーション

EP『California』

発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2021年11月5日
詳細はこちら

オフィシャルFacebook YouTube公式チャンネル オフィシャルTwitter オフィシャルInstagram

facebook

twitter

特集

原田慶太楼

今月の音遊人

今月の音遊人:原田慶太楼さん「音楽によるコミュニケーションには、言葉では決して伝わらない『魔法』があるんです」

2069views

ムソルグスキー「展覧会の絵」、創作欲を刺激する余白、ELP版はプログレの大門

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase8)ムソルグスキー「展覧会の絵」、創作欲を刺激する余白、ELP版はプログレの大門

5568views

音楽を楽しむ気持ちに届ける「ELC-02」のデザインと機能

楽器探訪 Anothertake

【動画】「楽しさ」をまるごと運ぼう!「ELC-02」の分解、組み立て手順

18557views

楽器のあれこれQ&A

エレクトーンについて、知っておきたいことや気をつけたいこと

26024views

脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

10835views

ステージマネージャーの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

ステージマネージャーひと筋に、楽員とともにハーモニーを奏で続ける/オーケストラのステージマネージャーの仕事(後編)

17734views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

14426views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7021views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10316views

われら音遊人:「非日常」の充実感が 活動の原動力!

われら音遊人

われら音遊人:「非日常」の充実感が活動の原動力!

8185views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

6873views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30788views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

11040views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10316views

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.1

音楽ライターの眼

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.1

13178views

アカネキカク akaneさん

オトノ仕事人

楽曲のイメージをもとに、ダンスの振りを考え、演出をする/振付師の仕事

2528views

われら音遊人

われら音遊人:路上イベントで演奏を楽しみ地域活性にも貢献

3469views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

やさしい指使いと豊かな音色を両立させた、「分岐管」と「蛇行管」

1views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

22820views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

5364views

楽器のあれこれQ&A

ドラムの初心者におすすめの練習方法や手が疲れないコツ

11093views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

9526views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30788views