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【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#000 “100年の歴史”をジャズの録音音源で再考するシリーズ序章
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2022.11.18
tagged: 音楽ライターの眼, ジャズの“名盤”ってナンだ?
1917年、米ニューヨークで『Dixieland Jass Band One-Step』と『Livery Stable Blues』の2曲がカップリングされた“レコード”が発売されました。
この1枚を“世界で最初にリリースされたジャズのレコード”として、2017年には“ジャズ100年”と題して企画されたCDや書籍、雑誌の特集記事、公演などがありました。
こうして100年を経ても、回顧するだけにとどまらず、ポピュラー音楽のひとつであり“現在進行形の音楽”として注目されていることは、この音楽文化(=ジャズ)の継続性と発展性を物語るひとつの証拠だったと思っています。
ちなみに、『Livery Stable Blues』の音源はこちら。
新旧のジャズのテイストの違いを味わっていただくために、100年後の音源も紹介しましょう。
2017年のグラミー賞でベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞したグレゴリー・ポーターの『Take Me To The Alley』。グレゴリー・ポーターがインタヴューを交えながら自身のジャズに関する考えについても語っています。
もうひとつ、2017年のグラミー賞ベスト・ジャズ・インストゥルメンタル・アルバムを受賞したジョン・スコフィールドのアルバム『Country For Old Men』。レーベルによる内容紹介トレーラーがこちら。
100年前の“ジャズ”とはもちろん、同じ年に“ジャズ”という同じ括りのなかでその年を代表する作品であると評価されたものでも、“聴いた感じ”がずいぶん異なることがわかっていただけるのではないでしょうか。
まずは、この“振り幅の広さ”もジャズだということを、本シリーズに入る前に知っておいていただきたいと思います。
さて、20世紀初頭まで、音楽を商業的に成功させるには、観客を集めて演奏を披露するか、楽譜を販売するか、あとはせいぜい個人レッスンを行なうといった方法しかありませんでした。
とはいえ、アメリカを中心とした音楽産業は好景気を背景に拡大し、ニューヨークのマンハッタンに楽譜出版社や演奏者のエージェントが集まった一画(ティン・パン・アレイ)ができるといった盛り上がりを見せていました。
そこへ登場したのが、新しいメディアである“レコード”。この媒体は、購入者が自宅などに設置した装置(蓄音機などのオーディオ)を使うと、録音されている“音”を再生できるという、画期的なものでした。
それまでのように、譜面を入手して自分で演奏したり、コンサートに出かけて行ってその場限りの演奏を楽しんだりするだけでなく、ほぼどこでもいつでも何度でも音楽に接することを可能にしたのが、レコードだったのです。
普及した円盤式レコードは蓄音機と呼ばれた再生装置とともに改良を加えられ、1940年代後半には、現在も“アナログ盤”と呼ばれて使い続けられているLP盤が登場します。ポリ塩化ビニールを使うことで、より軽く、より丈夫になり、長時間録音も可能になったこのレコードの登場によって、音楽鑑賞が一段と手軽で身近なものになりました。
この1940年代から1960年代にかけてのレコードの発達史は、そのままジャズ発展の歴史と重なっています。
ジャズがLPレコードという媒体を上手に活用したからこそ、20世紀を代表する表現芸術と呼ばれるようになったのではないか──。これが、本シリーズに取り組もうと思ったきっかけのひとつでもあります。
というわけで、これから“名盤”を手がかりにジャズをもっと楽しんでみたいと思っている“初心者”の方々にも気づきがあるようにと考えながら、そのアルバムが“名盤”とされる理由を21世紀の現在の視点で再評価しつつ、取り上げていきたいと思います。
富澤えいち〔とみざわ・えいち〕
ジャズ評論家。1960年東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる生活を続ける。2004年に著書『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)を上梓。カルチャーセンターのジャズ講座やCSラジオのパーソナリティーを担当するほか、テレビやラジオへの出演など活字以外にも活動の場を広げる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。『井上陽水FILE FROM 1969』(TOKYO FM出版)収録の2003年のインタビュー記事のように取材対象の間口も広い。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。
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文/ 富澤えいち
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