今月の音遊人
今月の音遊人:葉加瀬太郎さん「音楽は自分にとって《究極のひまつぶし》。それは、この世の中でいちばん面白いことだから」
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旅によって生まれた音と魂との共鳴。未来へ伝えたい“地球の音楽” 書籍『LISTEN.』/山口智子インタビュー
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2022.12.2
tagged: 書籍, 山口智子、LISTEN.プロジェクト, LISTEN.
元気な明日を手繰り寄せる「音」の力に惹かれ──。『LISTEN.』の巻頭に記された言葉である。著者は俳優の山口智子さん。「音」の魅力に導かれて世界を巡り、心に響く音を収集する旅は2010年から始まり、これまでに26か国を訪問、250曲を越す音楽を収録、映像に残している。この壮大なプロジェクトをプロデュースしている著者が、10年の記録を味わい直すようにまとめたのが本書である。
最初にこのプロジェクトを立ち上げようと思ったきっかけは、ハンガリーに旅したときの、心にしみる音楽との出会いだったという。
「夜の闇が美しい都のひとつ、ハンガリーの首都ブタペストを訪れた時のこと。ドナウ川のほとりの夜の帳から聴こえてきた音楽が、遠い異国の地なのに無性に懐かしく、まるで前世の恋人に再会したような、不思議な郷愁に包まれる感動でした。哀愁漂う美しいバイオリンの旋律が心に染みて、すっかり恋に落ちました。この懐かしいような温かさは、DNAに刻まれた血の記憶のような、遙か古に遡る自らのルーツと深く結びついているものなのかもしれません」
ハンガリーと日本は共通点も多く、姓名も日本と同じ順番で、例えば“智子・山口”ではなく“山口・智子”というように表すそうだ。そして歴史をさかのぼれば、ハンガリー人のルーツはアジアにあり、東から西へと進んだ遊牧騎馬民族だったことも見えてくる。さらにハンガリーの赤ちゃんのお尻には、日本人と同じようにモンゴロイド特有の蒙古斑があるというのも興味深い。
「世界の音楽を聴くと、さまざまな民族が遥かな旅をして、出会い、結びついた証が音の中に刻まれていることを感じます。例えばチベットの歌が、日本の奄美のシマ歌と同じ旋律を持っていて、たとえ学術的な立証はなくても、何千キロと離れた地の人々が、かつてどこかで出会ったかもしれない縁に思いを馳せると、心がウキウキと湧き立ちます。音に導かれて旅を続けると、必ず新しい扉が開き、今まで知らなかった感動に出会える。教科書で学ぶ歴史はどうもピンとこないけれど、世界に満ちる音楽から、人間の歩みを知ることは最高に楽しいです」
「このすてきな音楽を読者と共有できれば」
そうした山口さんの思いを反映して、本書には音楽家たちによるオリジナル演奏シーンを捉えた動画の二次元コードが多数収録されている。スマートフォンで読み取れば、映像とともに同じ感動を体感できるのである。
「地球の音楽映像ライブラリー『LISTEN.』では、陰影の美しさにこだわって撮影しています。ハンガリーの撮影スタッフと共に、過剰な照明や解説を加えない映像を目指してきました。『LISTEN.』は『耳を傾ける』こと。瞳を閉じて自分の心に耳を澄まし、世界を『感じる』センサーを取り戻したい。隅々まで照らし出し、説明解説しすぎることで、私たちは大切なものを見失っているのかもしれない。この世界は、目に見えることだけがすべてではありません。見えなくても、確かに存在する大切なものに耳を傾け、地球の素晴らしさをもっと感じていきたいです」
『LISTEN.』プロジェクトのテーマは、百年後、千年後、遥かな未来に自慢したい『地球の“今”を集めたタイムカプセル』。全636ページにわたり、世界の魅力的な音楽を紹介するとともに、美しい風景や、その土地で生きる人々の姿を捉えた写真を掲載。世界にはまだまだ知らないすてきな文化や伝統があることを、音楽のすばらしさを通じて知ることができる一冊である。
発売元:生きのびるブックス株式会社
料金:4,400円(税込)
文/ 唐沢耕
photo/ 写真/後藤泰宏(上から1、3枚目)
メイク/長岡文子
ヘア/Dai Michishita
スタイリスト/服部昌孝
衣装/ベスト37,400円(ロドリリオン/ネペンテス ウーマン トウキョウ TEL:03-5962-7721)
ドレス74,800円、イヤリング19,800円(共にフミエ タナカ/ドール TEL:03-4361-8240)
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