今月の音遊人
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Two Yamahas, One Passion バイクと楽器のデザインに込められた思い
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2022.11.25
tagged: デザイン, ヤマハ, ヤマハ発動機, オートバイ, バイク, YA‒1, Remie(PSS‒E30), PSR‒E360, SR400, TW‒E5B, TMAX 560
2022年から遡ること67年前、ヤマハの前身である楽器メーカーがオートバイを発売しました。オートバイと楽器。まったく違う製品ですが、そのデザインには共通点はあるのでしょうか。それぞれのデザインに込めた思いをふたりのデザイナーが語り合いました。
山本:ヤマハモーターサイクル第一号である「YA‒1」をご存じですか。楽器を作っているヤマハ株式会社とバイクを製造しているヤマハ発動機株式会社は今は別の会社ですが、もともとは日本楽器製造という一つの会社でしたよね。「YA‒1」は、その時に生まれました。
大塚:楽器の会社がオートバイを作ったのは、不思議な感じがしますね。
山本:楽器とバイクのデザインは似ているところがあると思っています。どちらも基本的には機能部品だけで構成されていますが、機能を追求した結果なのに、そこに「カッコイイ」という価値観が生まれるのはなぜだろう。いつも考えているのですが、奥が深いです。
大塚:私が初めてデザインを担当した楽器は「Remie(PSS‒E30)」というミニキーボードでした。誰に向けた楽器なのか、ユーザーの年齢層やレベルによってデザインは変わってきます。同じく担当した「PSR‒E360」メープル調は、インテリアを意識した木目調で、外側に向かって色の濃くなるサンバースト塗装をイメージしました。
山本:ヤマハ発動機には少し前まで「SR400」という機種がありましたが、過去タンクにギターなど楽器を想起させるサンバースト塗装を施したモデルもありました。自然な色合いを出すのに苦労したそうですが、そのぬくもりのようなものが長く愛する相棒としての魅力につながると感じています。
大塚:私は楽器以外でも、完全ワイヤレスイヤホン「TW‒E5B」のデザインも手がけています。美しく見えることを意識しつつも着け心地は重要なため、エンジニアと何度もやり取りしました。バイクのデザインでも、乗り心地や体との関係を重視するのではないでしょうか。
山本:人間の体と共存して使う製品をデザインしているので、タンクやシート周り、ハンドルなどは設計担当者と実験を重ねます。サイズは違えど、プロセスは同じなんですね。
山本:僕が入社して初めてデザインに関わったのは「TMAX 560」。その主なマーケットはヨーロッパです。環境規制が厳しく、都市部に車が入れない国もあります。そんななか、このモデルは通勤にも趣味にも使え、かつ所有感をもたらす重要な立ち位置にいることを勉強させてもらいつつ、デザインに臨みました。バイクも楽器も、やはり魅力的であることが大事ですよね。長く大切に使いたいと思ってもらえるか否かはデザインの力が大きく関わっていると思います。バイクの場合は乗った人のテンションを上げたり、これから始まるライディングに期待させたりすることもデザインの大切な役割です。そのため、一つひとつのディテールにもこだわっています。
大塚:弾くとき、乗るときの気持ちが高ぶってほしい。愛着を持って長く使ってほしい。楽器もバイクも同じ思いでデザインしていることがわかりました。
山本:これからも刺激し合いながらつくっていくことができればいいですね。機会があれば楽器のデザインもやってみたいです。
ヤマハモーターサイクル第1号「YA‒1」
ヤマハ発動機の原点は、ヤマハが初めて手がけたモーターサイクル第1号機「YA-1」。1955年、楽器メーカーだった日本楽器製造株式会社(現・ヤマハ株式会社)からデビューしました。開発にあたっては随所に新機軸が盛り込まれ、目指したスタイリングも国産他車とは一線を画すものでした。当時の二輪車は黒一辺倒だったなか、外装はマルーンとアイボリーのツートンカラー。3本の楽器調律の音叉が交差する七宝焼きのタンクマーク(写真中)と、音叉をモチーフにしたフロントフェンダーオーナメント(写真右)が優美な意匠として添えられ、その姿は「赤トンボ」の愛称で親しまれました。