Web音遊人(みゅーじん)

映画『BLUE GIANT』石塚真一インタビュー

世界一のジャズプレイヤーになる!人気のジャズ漫画『BLUE GIANT』が待望の映画化/石塚真一インタビュー

漫画雑誌『ビッグコミック』(小学館)での連載中から、かつてないジャズ漫画と注目を集めた『BLUE GIANT』。まるでサクソフォンやピアノの音が、紙面から溢れ出てくるようだと評されるほど、圧倒的な表現力が読者を魅了し、その人気は現実のジャズシーンにも影響を与えている。シリーズ累計920万部を突破した、大ヒット漫画が2023年2月17日にアニメーション映画として公開された。

何度も話し合って練り上げた音楽

主人公はジャズに魅了され、テナーサクソフォンを始めた仙台の高校生・宮本大(ミヤモトダイ)。一人、河原で練習を続け、卒業後はジャズのために上京し、仲間とともに世界一のジャズプレイヤーを目指す。

映画の公開に先立ち、完成した作品を見るのが楽しみという原作者の石塚真一さんにお話をうかがった。
「映画化にあたっては、ジャズピアニストの上原ひろみさんの全面的な協力がありました。演奏シーンで使用する曲は、脚本家、監督とともに話し合い、上原さんが一つずつ楽曲を制作してくれたんです。主人公がサクソフォンで鳴らしている音はこういうものじゃないか、もっとメロディはこうしたほうがいいんじゃないかとか、それぞれが感じることを自由に伝えて。でもそのうち意見がバラバラになってくると、『ちゃんと話をまとめてよ!』と言われてしまうこともありましたが(笑)、『この曲だったらいいんじゃないの』という形で何曲も作っては聴かせてくれ、みんなが納得するまで時間をかけて対応してくれました。それくらい試行錯誤して作り出していったので、上原さんは本当に大変だったと思います。もうどうやって恩返しをしていいのやら、わからないくらい、『BLUE GIANT』に協力してもらっています」
こうして練り上げられた音楽は、登場人物の心模様をも表現していくものとなる。
「例えば、音楽を奏でる前の感情がきっとあると思うんです。今日のお客さんは3人しかいないけど、一人でも感動させるんだという気持ちがあってステージに立って鳴らしている音と、ただステージに立って演奏するのとでは、きっと、聴こえ方も変わってくるはずです」

映画『BLUE GIANT』石塚真一インタビュー

音楽をリアルに感じられる映画に

漫画『BLUE GIANT』の魅力の一つが、白熱する演奏シーンだ。静止画の世界で読者を魅了してきた、音が聞こえてくるような表現を、映画でどのように見せてくれるのかも楽しみなところである。
「やっぱり音楽をリアルに感じるなら、漫画より映画だよと、思っているので、演奏シーンは、漫画をはるかに超えて欲しいなと思っているんです。音の表現は、漫画だとなかなかやりようがなくて、もっとも苦労します。『BLUE GIANT』を描き始めた頃に参考にしたのはバイク漫画でした。静止画の世界でバイクは決して動いていないんですけど、ものすごいスピードで走っているように見えるし、マフラーから出てくる音も、目の前を通過していった音が聴こえるように感じるので、ずいぶんと参考にさせてもらいましたね。映画化で楽しみなのは、立川監督がどのようにジャズの音を描き出してくれるのかです。今度は僕がそれを参考にさせてもらえたら嬉しいなと(笑)」

「劇場の最大の音量、最高の音質で、本物のジャズを届けたい」という想いから、音にもこだわり抜いた、映画『BLUE GIANT』。登場人物の感情までを描写した音楽を、ぜひ劇場で体感してみてはいかがだろうか。


2月17(金)公開|映画『BLUE GIANT』予告編

■映画『BLUE GIANT』

ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大(山田裕貴)、卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二(岡山天音)のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト、沢辺雪祈(間宮祥太朗)と出会い、3人は“JASS”を結成。トリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演し、日本のジャズシーンを変えること。情熱の限りを音楽に注いだ青春。その果てに見える景色とは。

原作:石塚真一「BLUE GIANT」(小学館「ビッグコミック」連載)
監督:立川譲
脚本:NUMBER 8
音楽:上原ひろみ
出演(声/演奏):山田裕貴/馬場智章(サクソフォン)、間宮祥太朗/上原ひろみ(ピアノ)、岡山天音/石若駿(ドラム)
2023年2月17日(金)全国公開
公式サイトはこちら

オフィシャルTwitter オフィシャルInstagram

photo/ 後藤泰宏(1枚目)、©2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 ©2013 石塚真一/小学館 (2枚目)

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

児玉隼人

今月の音遊人

今月の音遊人:児玉隼人さん「音ひとつで感動させられるプレーヤーになれるように日々練習しています」

5688views

音楽ライターの眼

連載16[ジャズ事始め]“上海リヴァイヴァル”を象徴する「上海バンスキング」とアジア・ジャズの序章

4720views

楽器探訪 Anothertake

26年ぶりにラインアップを一新!「長く持っても疲れにくい」を実現し、フラッグシップモデルが加わったバリトンサクソフォン

3778views

EZ-310

楽器のあれこれQ&A

初めての鍵盤楽器を楽しく演奏して上達する方法

809views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

4769views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

8444views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

24771views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7704views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

31416views

われら音遊人 リコーダー・アンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:お茶を楽しむ主婦仲間が 音楽を愛するリコーダー仲間に

8153views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

大人の音楽レッスン、わたし、これでも10年つづけています!

7252views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10371views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

12907views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

12101views

ヨーロッパを活動の拠点にしているヴァイオリニスト佐藤俊介、オランダ・バッハ協会の次期音楽監督に決定

音楽ライターの眼

ヨーロッパを活動の拠点にしているヴァイオリニスト佐藤俊介、オランダ・バッハ協会の次期音楽監督に決定

9754views

鬼久保美帆

オトノ仕事人

音楽番組の方向性や出演者を決定し、全体の指揮を執る総合責任者/音楽番組プロデューサーの仕事

2685views

われら音遊人

われら音遊人:大学時代の仲間と再結成大人が楽しむカントリー・ポップ

4592views

v

楽器探訪 Anothertake

弾く人にとっての理想の音を徹底的に追究したサイレントバイオリン™

6794views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

12043views

サクソフォン、そろそろ「テイク・ファイブ」に挑戦しようか、なんて思ってはいるのですが

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォンをはじめて10年、目標の「テイク・ファイブ」は近いか、遠いのか……。

8414views

初心者におすすめのエレキギターとレッスンのコツ!

楽器のあれこれQ&A

初心者におすすめのエレキギターと知っておきたい練習のコツ

23118views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6984views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10371views