今月の音遊人
今月の音遊人:山田和樹さん「エルヴィス・プレスリーのクリスマスソングから『8割の美学』というものを学びました」
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秋の夜長にじっくり耳を傾けたい、聴きごたえのあるクラシック全集・曲集おすすめの3枚
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2015.10.30
tagged: クラシック, 全集, 曲集, おすすめの3枚, ピエタリ・インキネン, アリーナ・イブラギモヴァ, イザイ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集, シベリウス:交響曲全集, シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番&第21番 他
2015年はフィンランドの国民的な作曲家、ジャン・シベリウスの生誕150周年であり、それを記念して数々のレコーディングがリリースされ、また日本でも多くの演奏会で彼の作品が取り上げられている。でも、実は日本にはずっと以前からシベリウスの音楽の推進に力を入れているオーケストラがあるのをご存じだろうか。それは日本フィルハーモニー交響楽団である。創設者で指揮者の渡邉曉雄がシベリウスの音楽に熱心で、1962年に世界初のステレオ録音によるシベリウス交響曲全集を完成させたという伝統を持つ。
その日本フィルが今回、新しいシベリウスの『交響曲全集』(全7曲)をリリースした。指揮のピエタリ・インキネンはフィンランドの新鋭で、この全集は2013年に東京と横浜で行われた全曲演奏会をライブ録音したものである。インキネンのみずみずしい感性と、日本フィルのシベリウスの伝統が出会い、雄大かつダイナミックな演奏が生み出されている。
第1番の幻想的な冒頭や、荒涼とした美しさを持つ第4番の謎めいたエンディング、白鳥の飛翔を描写したと言われる第5番の終楽章など聴きどころたっぷりだ。
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全集つながりで次に取り上げたいのは、今旬のバイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァが弾くイザイの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集』。ベルギーの作曲家ウジェーヌ・イザイが、バッハの無伴奏曲集をモデルにして作曲した6曲のソナタから成る、20世紀のバオリン独奏のレパートリーの金字塔である。
ロシア生まれで英国育ちのイブラギモヴァは並外れた技巧の持ち主でありながら、それを前面に出すことなく、自在な表現力で洗練された解釈を聴かせてくれる。とりわけ軽やかな音色と柔軟なフレージングが持ち味といえよう。2015年9月に来日して高い人気を呼んだが、2016年3月にも東京・王子ホールでモーツァルトの演奏会を開くので、本ディスクを気に入った方はぜひ生でも聴いてほしいと思う。
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最後は筆者の敬愛するピアニスト、アンドラーシュ・シフの最新盤。バッハはもちろん、シューベルト弾きとしても名高いシフが今回、彼自身が所有するウィーンのフォルテピアノ(1820年頃の楽器)でピアノ・ソナタ第18番と第21番、『楽興の時』や即興曲などを収録した。
シューベルトの特に後期のピアノ曲は、彼の内なる感情や葛藤を反映したきわめて繊細でプライベートな音楽であるため、同時代の楽器で聴くことで作曲家の思いに近づける気がする。「シューベルトが私たちの心に触れるのは音楽のもっとも静かな部分なのです」とシフが語るように、弱音の色彩やニュアンスでシューベルトの心の機微が浮き彫りにされる演奏だ。