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前に進む力強さと勇気、希望、愛を紡いだ多幸感があふれるアルバム『EUPHORIA』/松居慶子インタビュー
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2023.8.24
グローバルな活躍を続けるコンテンポラリー・ジャズピアニスト・作曲家、松居慶子の最新アルバム『EUPHORIA』の日本盤が2023年6月28日にリリースされた。世界的なパンデミックの間に書き溜めた100曲近くから選ばれたという12曲からなる本作についての想いを聞いた。
前作『Echo』から約4年ぶり、30枚目となる『EUPHORIA』。新作発表を今か今かと楽しみにしていたファンは多いことだろう。
「2020年初頭から世界的なパンデミックが起こって、『Echo』のツアーを含めたすべてのコンサートが中止になりました。それなら、できた時間でアルバムを作って2年以内をめどに発表しようと考えていたのですが、レコーディングスタジオに集まることが難しい時期だったので、まずは曲を書くことに専念しようと決めました」
そんな頃、大きな刺激になったのが元宇宙飛行士の毛利衛氏からの一言だったという。2004年に日米交流150周年記念外務大臣賞をお互いに受賞して以来、交流が続いていた。
毛利氏は米ヒューストンでの宇宙飛行士としてのトレーニング期間中、ラジオから流れる松居の曲を聴き、ファンになったのだそう。
「2020年の夏に毛利さんから、当時館長をされていた日本科学未来館で行われるイベントにピアノを置いたスペースがあるんですよ、と伺って、それならばぜひとお邪魔させていただいたんです。それをきっかけに創作意欲が高まって、本格的な新作づくりがスタートしました」
曲づくりの際は明確なコンセプトを決めず、自分の心に“届いたインスピレーション”を元に仕上げていくのが基本。このときは世界的なコロナ禍や内戦などの報を受けて、悲しみや苦しみ、さまざまな感情が去来していたが「それでも私たちには前に進む力強さと勇気、希望、愛がある」と実感したという。そんな想いが込められた本作を“EUPHORIA(多幸感)”と名付けた。
「コンサート活動を再開して最初にお客様の前で演奏できたときの感動は、まさに“自分が生かされている喜び”と“幸せ”としか言いようがありませんでした。新作に収録した12曲はすべて大切に温めて深化させた曲ですし、“私をアルバムに入れて!”とアピールしてきた子たちばかり。曲名を決めるときも“これしかない”と納得するまで考えました。たっぷりと時間をかけてこだわり抜いたという意味では、皆さんに『EUPHORIA』をお届けするタイミングは今がベストだったのだと思います」
久しぶりのレコーディングは「とにかく充実していた」と振り返る。
「今はデータさえ送れば離れていても作品制作が可能になりましたが、私はやはりお互いの顔を見て、音を聴きながらのアルバムづくりが好きなんです。そんな皆の喜びが音にもあらわれています。ランディ・ブレッカー(サクソフォン)やレイラ・ハサウェイ(ボーカル)など、ゲスト参加してくれた素晴らしいアーティストたちも、とても大切に仕上げてくれましたし、すべてがここに至るための運命だったと感じられる作品になりました」
デビュー当時からヤマハと縁が深いこともあり、新作のレコーディングでもヤマハのCFXを使用している。
「信頼するピアノです。バンドと演奏するときのピアノは特に馬力が必要になりますが、リズミックな曲にも柔軟に対応してくれるし、かと思えばピアニッシモもとてもきれいに響かせてくれます。世界各国を旅していると、突然サスティンペダルが折れたり、弦のところにガラスの破片が落ちていたりと信じられないこともあるのですが、ヤマハのピアノはスペシャリストがメンテナンスしてくださるのでいつも安心して弾けます。自分の想いと直結している感覚で演奏できるピアノですね」
『EUPHORIA』の日本盤リリースと合わせて、JAPAN TOUR 2023が6月から7月にかけて開催された。ビルボードライブ大阪、高崎芸術劇場スタジオシアター、ブルーノート東京という3都市での公演だったが、どの会場もライブを待ちに待った人々で大盛況だったようだ。
「やっと帰ってこられたという気持ちでいっぱいでした。ツアーメンバーを連れての日本公演は本当に久しぶりでしたし、長年のファンの方も喜んでくださったと思います」
ここ数年はマスクの着用や声出しの制限などが続いていたが、ファンの側も楽しさをストレートに表現できるようになってきた。
「この日を待っていたよ!という皆さんの熱い気持ちはステージ上にも届きました。ほぼ新曲のセットリストでしたが、どの会場でもすごく楽しそうにノってくれましたし、“もっとたくさんコンサートを”というありがたいお声もいただきました。いつかはオーケストラとのコンサートを日本にもお届けしたいと思っています」
アーティストとして邁進する一方で“音楽の力”を通じたチャリティー活動にも積極的だ。乳がん撲滅運動キャンペーンや骨髄バンクのドナーを募るチャリティー、子どもを貧困や非行から守るためのチャリティーにも携わっている。
「お役に立てる限り、続けるつもりです。キャリアも30年以上になると、四世代でライブに来てくださる姿もお見受けするようになりました。私の音楽と出会ってくれた方々と私は特別な絆で結ばれていて、どんな状況でもそこに流れる空気は平和でハッピー。世代も人種も越える素晴らしい力を音楽は持っていると信じています」
発売元:avex trax
料金:3,400円(税込)
詳細はこちら
松居慶子 Official Website
松居慶子 公式サイト(日本)
文/ 髙内優
photo/ 宮地たか子
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