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今月の音遊人:さだまさしさん「僕にとって音楽は、最高に好きなものであり、最強に嫌いなもの」
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世界で活躍する作・編曲家、挾間美帆のジャズ室内楽団「m_unit」が5年ぶりのアルバム発売&記念ツアー開催/挾間美帆インタビュー
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2023.9.15
2012年 に“ジャズ作曲家”として世界デビューを果たした挾間美帆は、作・編曲など数多くの作品を手掛けながら、指揮者やプロデューサーとしても活躍。2022年はデンマークの世界的名門ビックバンド「Danish Radio Big Band」とともに首席指揮者として来日。全国ツアーが話題を呼んだ。そんな彼女が自身のジャズ室内楽団「m_unit」として5年ぶりの新譜『ビヨンド・オービット』をリリース。2023年9月にその発売記念ツアーが東京・文京シビックホールをはじめ、全国で行われる。
2012年のデビュー・アルバム『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』から3枚目の『ダンサー・イン・ノーホエア』(2018)は“3部作”としての構想のもと制作されたものだった。今回の新譜はどのように作り上げられたのだろうか。
「とにかく“10周年”を記念して生まれたアルバムです。今後はシリーズという形ではなく、それぞれのアルバムで一つの世界観を完成させるようになっていくと思います。何か新しいことをしよう、というよりは、今おもしろいと感じていること、できることを全て出し切ることを念頭に作りました。ただ、演奏者の皆さんからは『曲の書き方が変わった』とか『今までにないことをしているね』と言っていただけたりもしています。聴いてくださる方が新しいものを感じていただければ、それはとても嬉しいことですね」
今回のアルバムで中心となる曲は、規模も大きく、アルバムタイトルと共通する語を含む『エリプティカル・オービット』など3曲から成る『エクソプラネット組曲』である。この曲はもともと2020年に「モントレージャズフェスティバル」の委嘱作品として作ったものだが(フェスティバルは1年延期となったため、初演は2021年)、大幅に改訂をした。
「フェスティバル主催側からの希望は、m_unitのための25~30分の曲ということだけでした。その頃のニューヨークはちょうどロックダウンで部屋から出られない時期で、社会問題も次々起こり、人間同士のかかわりにも不寛容さが目立ち、分断される傾向にありました。それを見ていてつらくなり、人や社会、地球について考えるのをやめてみたんです。そうしたら宇宙に考えが向き、太陽系外惑星(エクソプラネット)の中からおもしろいアイデンティティを持った惑星をテーマにしてみよう!と思い立ったのです」
『エクソプラネット組曲』以外の曲は2022年以降に新たに書かれたものだという。
「1曲目の『アビーム』とは船の帆に真横から風を受けて進むことで、最もスピードが出る状態を指します。とても速くなるので転覆の危険性もあるのですが、そのギリギリを攻める感じを曲に込めています。2曲目の『ア・モンク・イン・アセンディング・アンド・ディセンディング』はエッシャーのだまし絵に描かれている、上昇と下降を繰り返す階段とそこにいるお坊さんがモチーフ。コード進行などにその回る要素を入れています。『ポートレート・オブ・ゲス』は続くラストの曲につなげるための楽曲として書きました。アルバムとして完成させるために、意表を突くような、断定的でないものを、という考えから生まれた作品です。そして最後の『フロム・ライフ・カムズ・ビューティー』は、資生堂の150周年記念ムービーのために作曲したものですが、2分半ほどの曲を、アルバムのために8分半に拡大しています。通常であれば、もともとの曲の後ろに足すのが通常のやり方ですが、今回はもとの部分を最後にもってくるようにして、前半を足すという形にしました。作曲時には意識はしていませんでしたが、振り返ると新しい挑戦になりましたね」
m_unitのアルバムで“恒例”のカバー曲ももちろん収録されている。今回はアース・ウィンド・アンド・ファイアーの『キャント・ハイド・ラヴ』だ。
「子どもの頃からアース・ウィンド・アンド・ファイアーの楽曲が大好きで、“原点回帰”の意味も込めて選びました。“僕のことが好きなんでしょう?”というかなり強気な歌詞なのです。それに対して“そうよ、隠せないけど悪い?”というようなアンサーソングを書くようなイメージでアレンジしています」
m_unitとして久しぶりとなるツアーは、『ビヨンド・オービット』収録曲を中心にした、初のコンサートホールツアーだ。
「これまではライブハウスでの演奏が多かったので、コンサートホールを巡るツアーというのは初めてです。文京シビックホールはコンポーザー・イン・レジデンスを務めているシエナウインドオーケストラの本拠地でなじみのある会場ですが、室内楽オーケストラでこの舞台に立つのは初めてなのでとてもワクワクしています。会場によってさまざまな演奏の違いが生まれてくると思いますし、新しいm_unitのサウンドをお楽しみいただけるはずです。ぜひご期待ください」
挾間が信頼できるアーティストたちと奏でる“いま”だからこそのサウンドを、スケールの大きな響きで楽しめる今回のコンサートホールツアー。圧倒的な感動体験を届けてくれるはずだ。
発売元:ユニバーサル・ミュージック
発売日:2023年9月13日
料金:3,300円(税込)
詳細はこちら
9月15日(金)那須野が原ハーモニーホール(栃木県大田原市)
9月17日(日)北國新聞赤羽ホール(石川県金沢市)
9月18日(月・祝)刈谷市総合文化センター アイリス(愛知県刈谷市)
9月23日(土・祝)グランシップ 中ホール・大地(静岡県静岡市)
9月24日(日)長岡市立劇場 大ホール(新潟県長岡市)
9月29日(金)文京シビックホール 大ホール(東京都文京区)
9月30日(土)東大阪市文化創造館 Dream House大ホール(大阪府東大阪市)
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文/ 長井進之介
photo/ 阿部雄介
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