今月の音遊人
今月の音遊人:西村由紀江さん「誰かに寄り添い、心の救いになる。音楽には“力”があります」
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音を通じて気持ちをキャッチボール、それが感動につながる/水谷川優子インタビュー
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2016.3.15
日本とドイツを拠点に、その豊潤な響きで国内外の多くのファンを魅了するチェリスト・水谷川優子(みやがわゆうこ)。旺盛なコンサート活動の傍らで少年院、ホスピスなど施設訪問のコンサートにも熱心に取り組み、社会貢献としても高く評価されている。
「10代の頃は日本を出たくてしかたなかったんです。夢が叶い、ヨーロッパに留学した時には、そこで骨を埋めるつもりでした」と水谷川。勉強を終え、ヨーロッパを拠点として演奏活動を行うことに慣れた頃、ある思いがよぎったという。
「人として自分の“根っこ”をないがしろにしていると感じるようになりました。たまに日本に行っても、綺麗なホールで演奏をしてすぐに帰ってきてしまう。自分は日本で素晴らしい教育を受けたのに、その恩返しをしていないという後ろめたさのようなものがあったんです」
そんな思いもあり水谷川は、2003年頃から本格的に日本でも演奏活動を開始。オリジナリティ溢れるプログラムで話題を集めるリサイタルシリーズや、能楽師を交えたユニットなど和洋のジャンルを超えたアンサンブルは、日本の音楽界に新風を吹き込んでいる。
日本での演奏活動が本格化するとともに、施設訪問コンサートも増えていった。
「ホールでのコンサートは音楽好きのお客さまが集まってくださるハレの場。一方、施設では、クラシック音楽を生で聴く機会があまりない方もいらっしゃるかもしれません。そういった方たちに会いに行き、時間・場所を共有しながらチェロを通してコミュニケーションを楽しんでいるんです」
そんな活動をしていると、あらためて感じることもあると水谷川は語る。
「ある少年院で『なんだかよくわからないけど、心が暖かくなった』という感想をいただきました。この『よくわからない』っていうことがすごく大切なんですよね。感動って『○○が○○だから感動した』って分析できるものではないと思うんです。動物同士がにおいをかぎ合って、心のひだを擦り合わせるようなもの。施設訪問コンサートをする度に、そういう“初心”に気づかせてもらっています」
そこで得たものは、もちろんコンサートホールでの演奏にも活かされる。「通常のコンサートでも私たち演奏者とお客さまは、“与える”“与えられる”関係ではありません。音を通じて気持ちをキャッチボールする。それが感動へとつながるのだと思います」
2016年4月9日(土)、水谷川は『弦楽万華鏡(ストリングス・カレイドスコープ) produced by 水谷川優子~ソロから6重奏まで~』と題して、ヤマハホールでコンサートを行う。バッハの無伴奏チェロから始まり、弦楽三重奏、四重奏、六重奏と1曲ごとに弦楽器が増えていくという贅沢なプログラム。「コンサートのテーマは“弦楽器の宴”。1本から6本まで重なっていく弦楽器の響きを、素晴らしい音響のヤマハホールで味わっていただきたいと思います」
極上の音で弦楽器を堪能できる春の日が待ち遠しい。
日時:2016年4月9日(土)14:00開演(13:30開場)
場所:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14 ヤマハ銀座ビル7F)
料金:5,000円(税込)
曲目:J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007
B.マルティヌー/バイオリンとチェロのための二重奏曲 第1番 H.157
E.ドホナーニ/弦楽三重奏曲「セレナード」ハ長調 Op.10
P.I.チャイコフスキー/ 弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出に」ニ短調 Op.70