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ふたりの演奏が美しくも激しく響あう/塩谷哲&沖仁“TETSU-JIN”LIVE 2025

ふたりの演奏が美しくも激しく響きあう/塩谷哲&沖仁“TETSU-JIN”LIVE 2025

2025年6月7日、ピアニスト塩谷哲とギタリスト沖仁からなるユニットTETSU-JINがヤマハホールに登場。ときにやさしく美しく、ときに激しく響きあうふたりの演奏は、最初から最後まで観客を釘付けにしていた。

ピアノとギターの美しさが見事に融合

ライブは塩谷作『Morning Bliss』でスタート。軽やかな沖のギター、それに寄り添う塩谷のやさしいピアノ。シンプルなメロディは次第に色彩を増し、鮮やかに輝く。“朝の至福”というタイトルどおり、心地よい時間が会場に流れていた。

2曲目『ヒラルダの塔』と3曲目『Caipirina Caipirina』は沖の作品。前者はTETSU-JINのために書き下した曲で、ギターの力強さとピアノの美しさが見事に融合。後者はフラメンコで活動する沖がラテンに挑戦した曲で、ギターのフレーズにサルサっぽさが見え隠れして興味深い。

沖仁

代わって4曲目からは、『Azami』、『あこがれのリオデジャネイロ』と塩谷の作品が続く。ギターとピアノのために作った『Azami』はクラシカルな曲で、各楽器の繊細な響きを堪能。『あこがれのリオデジャネイロ』はラテンのダイナズムが炸裂した曲で、放たれる音の力強さに心が滾る。

ライブ中盤ではソロも披露。沖は2010年のフラメンコギター国際コンクール国際部門での優勝時に使用したヤマハFC50、その進化版を使ってオリジナル曲『カジャオ』を演奏。静と動、明と暗のコントラストのある響きに、複雑な感情の蠢きが感じられる。

塩谷はヤマハホールのイメージ動画でも使用されている『A Brand New Day』をプレイ。鍵盤を広く使って生み出すドラマチックなメロディと、踊るように軽やかなタッチが、タイトルに込められた明るい未来を感じさせてくれていた。

塩谷哲

終わることのないスタンディングオベーション

再びふたりが揃って奏でたのは、沖作の『FantasmaⅡ』。フラメンコの聖地サンディアゴで感じたこと描いたそうで、悲しみに満ちたメロディでありながら、怒りを込めるように激しくかき鳴らされるギターに、フラメンコの歴史的背景が感じられた。

9曲目『アランフェス協奏曲 第2楽章』が始まると、ジャズ・ファンは心を躍らせた。チック・コリア『スペイン』のイントロで、この曲が引用されているからだ。その期待に応えるように、ピアノとギターが『スペイン』の名フレーズをユニゾンで奏でる。塩谷がジャジーにピアノを鳴らすと、沖もフラメンコのエネルギッシュさでギターをかき鳴らす。ふたりは身体を弾ませながら演奏を続け、終わりそうかな?という雰囲気になっても、まだまだ演奏を続ける。その熱気にあてられ、客席からも手拍子が鳴り、ヤマハホールがひとつになって情熱的な魂の輝きを奏であげたのだ。

塩谷哲、沖仁 演奏中の写真

「遠いところまで旅して帰ってきましたね」という沖の言葉どおり、日常を忘れるほど音を楽しみ尽くしたところで、本編ラストは塩谷作『Spanish Waltz』。重厚なピアノの響きのうえで、ギターが鋭い音を踊らせる。そのスリリングな演奏に興奮させられたか、ふたりがステージを去るとすぐにアンコールの手拍子が始まった。

再度ステージに登場したTETSU-JINは、最後に塩谷の『Ode to Liberty』を披露。タイトルの“自由”そのままの祈りのように美しい調べが、会場を優しく包み込む。いま世界中が暗闇に脅かされそうになっているが、音楽が心を、未来を明るく照らしてくれる――そんな希望を確かに受けったことを、終わることなく響くスタンディングオベーションが物語っていた。

塩谷哲、沖仁 カーテンコールの様子

飯島健一〔いいじま・けんいち〕
音楽ライター、編集者。1970年埼玉県生まれ。書店勤務、レコード会社のアルバイトを経て、音楽雑誌『音楽と人』の編集に従事。フリーに転向してからは、Jポップを中心にジャズやクラシック、アニメ音楽のアーティストのインタビューやライヴレポートを執筆。映画や舞台、アートなどの分野の記事執筆も手掛けている。

photo/ Takako Miyachi

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