Web音遊人(みゅーじん)

トゥ・ウルフ

サザン・ロックの“2匹の狼”トゥ・ウルフがデビュー。南部の炎は燃え続ける

サザン・ロックはアメリカ南部のロック魂の拠り所として聴き継がれてきた。

1960年代後半、ロックが急激に発展した時代にジョージアやフロリダなど南部州から登場したオールマン・ブラザーズ・バンドやレーナード・スキナードはブルースやカントリーの要素のあるサウンドとロング・ジャムで支持を得るが、この“第1世代”はメンバーの死亡事故などが相次いでフェイドアウトしていく。

受け継がれるサザン・ロックの伝統

1970年代後半に台頭してきた“第2世代”のバンドはサザン・ロックの伝統を受け継ぎながら、全米ラジオやMTVにも訴求するメロディックでコンパクト志向が目立つように。38スペシャル、ブラックフット、モリー・ハチェットらは全米チャートで成功、海を渡ってイギリスのハード・ロック・ファンからも人気を博した。

とはいえ、この時点でサザン・ロックが“古臭い”スタイルと見做されていたことも事実。だが1980年代末にはジョージア・サテライツやブラック・クロウズがサザン・ロックのイディオムを取り込み、その“古臭さ”をクールなものに転化させて成功を収めた。彼らを“第3世代”と呼ぶことも可能だ。

1990年代に入るとジャム・バンドが一大潮流となり、サザン・ロックはクロスオーヴァーしながら今日も多くのファンに愛され続けている。興味深いのはオールマン・ブラザーズの遺伝子が今もなお受け継がれていることだ。バンドは2014年に活動を終了したものの、元メンバーのウォーレン・ヘインズはガヴァメント・ミュールで活躍。メンバー達の血を引くデレク・トラックス、ディヴォン・オールマン、デュエイン・ベッツらも独自の活動でサザン・ロックの火を燃やし続けている。

日本においてはアメリカのように爆発的な人気こそ得られなかったが、1977年にはレーナード・スキナード、1991年にオールマン・ブラザーズが初来日、近年ではテデスキ・トラックス・バンドが日本武道館に進出、2017年9月には沖縄米軍基地の“キャンプ・ハンセン・フェスティバル”にモリー・ハチェットが出演するなどしている(テッド・ニュージェントも同時出演)。

サザン・ロックの大河の流れは、今なお続いているのだ。

サザン・ロックの伝統と新世代を繋ぐバンド、トゥ・ウルフ

そんなサザン・ロックを、現在に生かし続けるホープとして注目されるのが、フロリダを本拠地とするトゥ・ウルフだ。ブラックフットの創設メンバーであり、1970年代前半にレーナード・スキナードに在籍したこともあるベーシストのグレッグ・T・ウォーカーが結成。2017年にEP『Two Wolf』をリリースしてから彼を除くメンバーを総入れ替え。ブルース・ロック・ギター・スリンガーとして知られるランス・ロペス、そしてサザン・ロック・ギターの名手クリス・ベルという、ソロ・キャリアでも高い評価を得ているギタリスト2人が加わったスーパーグループとなった。『Two Wolf』は新生トゥ・ウルフによる初のフルレンス・アルバムである。

1曲目『Keep On Movin’』から土ボコリを上げて突っ走るロックンロールが全開。歌えるメロディをフィーチュア、ロング・ジャムはないという意味では“第2世代”サザン・ロックに近い音楽性だが、ハード・ロック的なドライヴ感やツイン・リード・ギターの掛け合いがエキサイティングで、彼らならではの個性を放つものだ。『Will I Believe』『Great Spirit』などパンチの効いたナンバーが続く中、ホロリと泣かせる男節バラード『Diary Of A Working Man』など、感情の昂ぶりが押し寄せる。ブラックフットのカヴァー『Too Hot To Handle』も新たな息吹が吹き込まれたものだ。

現代ブルース・ロックを代表するエース・ギタリストの1人であるランスとレーナード・スキナードの『Live In Atlantic City』(2018)にゲスト参加したこともあるクリスが繰り広げるギター・デュエル(決闘)、グレッグのベース、ラスティ・ヴァレンタインの大地を揺るがすドラミングと一体になってウネリをもたらし、彼らがライヴァル・サンズやブラック・ストーン・チェリーらと肩を並べる新世代サザン&ハード・ロックを代表するバンドであることを証明。実戦で叩き上げてきたプレイとデビュー作ならではの息吹が相乗効果を生み出し、既にワールド・クラスの風格を感じさせる。2025年6月にアルバムがリリースされて以来、CD・配信ともにセールスは好調。北米を代表する“サザン・ロック・ウッドストック”フェスの全4公演にも参加して一気に知名度を上げた。日本への侵攻はまだ開始していないものの、ワンチャンスさえあれば一躍ブレイクも可能だろう。

21世紀の今、サザン・ロックのブームが突然起きる可能性は決して高くなさそうだ。だが、その精神は死ぬことがなく、南部の炎は燃え続ける。“2匹の狼”トゥ・ウルフの躍進に期待したい。

■アルバム『Two Wolf』

トゥ・ウルフ

発売元:Cleopatra Records
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山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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