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今月の音遊人:谷村新司さん「音がない世界から新たな作品が生まれる」
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本場ジャズの鼓動が銀座を熱狂させた一夜「ヤマハ銀座サマー・ジャズ・ライブ~Seiko Summer Jazz Camp All Star~」
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2025.10.14
tagged: ヤマハ銀座サマー・ジャズ・ライブ, ヤマハ銀座スタジオ, Seiko Summer Jazz Camp, Seiko Summer Jazz Camp ALL STARS
世界を舞台に活躍する次世代ジャズ・ミュージシャンの育成を目的とした音楽プログラム「Seiko Summer Jazz Camp」。その講師陣による「ヤマハ銀座サマー・ジャズ・ライブ」は毎夏、銀座の夜を熱狂で包み込む。2025年8月6日、ヤマハ銀座スタジオで行われたスペシャル公演をレポートする。
今年も「Seiko Summer Jazz Camp」の講師リーダーを務めるマイケル・ディーズ(トロンボーン)を筆頭に、2024年から復帰した中村恭士(ベース)、クインシー・デイヴィス(ドラム)、ディエゴ・リヴェラ(テナーサクソフォン)、ベニー・ベナックⅢ(トランペット&ボーカル)といった錚々たる顔ぶれが集結。さらに、ウィントン・マルサリス・カルテットのピアニストとしても脚光を浴びるダン・ニマー、カナダの実力派ギタリストでアメリカでも人気が高いジョセリン・グールド、そしてジャズをベースにブルース、ゴスペル、クラシック、アフロポップなどクロスオーバーな世界で活躍するボーカリストのアリシア・オラトゥージャという新星3人が加わり、フレッシュな布陣となった。
幕開けは、クインシー作曲の『What?』。軽快で力強いドラムのイントロに導かれ、トランペット、トロンボーン、サックスの3管がテーマを鳴らす。中村、クインシー、ダンのリズム隊も強力だ。各自のソロ回しは挨拶代わりどころか一気に会場のボルテージを引き上げ、冒頭から圧巻のエネルギーを放った。

左からマイケル・ディーズ(Tb)、ベニー・べナックⅢ(Tp&Vo)、ディエゴ・リヴェラ(Ts)
2曲目はディエゴ作曲の『Bracero』。彼のバッググランドであるラテンとジャズが融合した情熱的で躍動的なナンバーに、観客の身体も自然と揺れる。
続いて、ボーカルのアリシアがビッグスマイルをたたえて登場した。「マイケル・ジャクソン『Human Nature』のスペシャルバージョン」という曲名が伝えられると、会場からは歓声が。低音から高音まで自在に使いこなすパワフルな歌声が会場を包み込むと、それに呼応するかのようにトランペットも歌い上げ、観客も手拍子で一体となる。
4曲目は、新メンバーのジョセリンがスタンダードナンバー『My Old Flame』を斬新にアレンジ。ギター1本でメロウかつ重層的な響きを創出した。

左からジョセリン・グールド(G&Vo)、アリシア・オラトゥージャ(Vo)
前半の最後を飾ったのはガーシュウィン作『They Can’t Take That Away From Me』をアレンジした『Can’t Take That Away with Alicia and Benny』。アリシアとベニーのツインボーカルが最大の聴きどころだが、各楽器のソロ回しやインタープレイにも大きな拍手が!人間の声そのものが楽器であることを体現し、圧倒的な熱量で前半を締めくくった。
後半はダン作曲『Untitled #5』から。ピアノから始まったリズムセクションがもたらすグルーヴとフロントのアンサンブルが観客を魅了し、ピアノのソロでは速いパッセージなど超絶技巧を披露して会場を釘付けにする。

ダン・ニマー(Pf)
続いては、オスカー・ピーターソンの名曲『Cake Walk』をジョセリン・グールドが編曲。軽快で陽気な楽曲で、テクニカルなギターソロと、メンバーそれぞれが技巧をいかんなく発揮したスリリングな即興に大きな拍手が沸いた。
マイケル作曲の『Word to the Wise』は、自身とジョセリンにフィーチャーしたバージョン。トロンボーンは「自分の身体で音をつくる」と言われるが、まさに彼の個性を宿した豊かで幅広い表現と深みのあるアンサンブルを披露した。

左から中村恭士(B)、ディエゴ・リヴェラ(Ts)
4曲目は、中村とディエゴによる、ロッキー・ボイド『Ease It』。サクソフォンとベースの成熟した対話が、深い世界へと聴衆を導く。今ニューヨークで最も忙しいベーシストと称される中村の存在感も際立った。ふたりの楽しげな表情も印象的だ。
後半5曲目に披露された『Lu’s Bounce』はダン作曲。バウンス・テンポの楽曲で、彼の真骨頂を存分に味わわせてくれるとともに、クインシーのドラムも光る。

クインシー・デイヴィス(Dr)
その後、ピアノのイントロでガーシュウィンの『Embraceable You』が始まり、アリシア・オラトゥージャが再び深くエモーショナルな歌声を響かせた。
「ここで、もう一曲」と演奏してくれたのは、スタンダードナンバーの『I’m Beginning To See The Light』をアレンジした『A Standard with Alicia』。明るいメロディーとリズムに乗り、ツインボーカルが感情豊かに歌い上げると観客も大盛り上がり。伸びやかな高音の歌声で曲が閉められても、拍手が鳴り止むことはなかった。
アンコールに選ばれたのは『Seiko Time』。「Seiko Summer Jazz Camp」のためにマイケルがつくったオリジナルソングで、過去のライブでも演奏されてきた。ベニーの力強いボーカルとメンバーそれぞれの熱のこもったソロに観客の熱狂は最高潮に達し、フィナーレを迎えた。
オリジナル曲とスタンダードの新解釈を織り交ぜた今回のステージ。それぞれの個性が炸裂しながらも、アンサンブルとして有機的に結びついてひとつの音楽をつくっていく。ヤマハ銀座スタジオという至近距離で味わうエネルギーは圧倒的で、本場ジャズの興奮を肌で感じた一夜となった。

Seiko Summer Jazz Camp All Starsサイトはこちら
ミュージシャンたちの熱気がダイレクトに伝わってくるジャズライブ「ヤマハ銀座サマー・ジャズ・ライブ~Seiko Summer Jazz Camp All Stars~」(Web音遊人)
文/ 福田素子
photo/ 宮地たか子
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