今月の音遊人
今月の音遊人:小曽根真さん「音楽は世界共通語。生きる喜びを人とシェアできるのが音楽の素晴らしさ」
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YouTubeを見ていると、かなり多くの国々でX FACTORだのTHE VOICEだのといったシンガー発掘のテレビ番組が存在する。どこかの国からでたコンセプトが各国に輸出されているらしい。
フランスでも、ずいぶん前にヌヴェル・スター、スター・アカデミーと名付けられた同様の番組があった。予選を通過した10数名での勝ち抜きになるのだが、予選段階から見ていると、フランスなのに英語の歌で登場する参加者が圧倒的に多い。この辺も、現在のフランスの音楽事情を物語っているといえるかもしれない。
予選では、後ろ向きに座った4人の審査員の背後で歌い、合格と判断した審査員がボタンを押すと、その席が回転して参加者の姿を初めて見る。つまり、あくまで声と歌唱力が問題なのであって、容姿に惑わされないというコンセプトのTHE VOICEも3年前に上陸してきた。
あれは、去年の予選の放送の第1回目だったと思う。赤いワンピースを纏った痩身の若い女性が、ピアノの弾き語りでバルバラを歌い始めた。一瞬にして、全身が痺れるのを覚えた。透き通るような美声に確かな歌唱力。声量も十分あるし、やはり表現力が頭抜けているのだろう。この曲は、フランス語でなくてはならないし、こうして聞くとフランス語はなんと美しいんだろうと感動した。
彼女は優勝候補に間違いないと確信を持ったのだが、予想に反して、かなり早い時点で脱落させられてしまった。まるで納得が行かず、一挙に興ざめして、以後番組の続きを見るのをやめた。番組で数回見ただけで、名前も不確かだったけれど、ある時偶然YouTubeに彼女がアップされているのを見つけた。
視聴者のコメント欄は、ボク同様、番組の判定にまるで納得がいかず、番組を酷評した上で、彼女を激励する内容が多数を占めていた。最初は、小さなピアノバー的な場所で歌うシーンだけだったのが、そのうち小規模なコンサートのシーンもアップされた。英語の歌もあったけれど、彼女は、やはりフランス語で歌うのがいちばんいい。
CDを出せとのコメントもあり、ボクも彼女がCDを出すのなら即座に買うと思った。
ネットに彼女のサイトもあるので、時々覗いていたら、CD用のスタジオ録音を始め、春には発売との嬉しいニュースが半年前に発表された。しかし、如何せん、そこがフランス。ミキシングだの最後の調整に時間が掛かり、発売は9月にずれ込むことになった。正直、一日千秋の思いで待ち焦がれる気分だ。
文/ 辻啓一
photo/ Keiichi Tsuji
tagged: シャンソン, ボーカル, フランス, Youtube
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