今月の音遊人
今月の音遊人:五条院凌さん「言葉で表現するのが苦手な私でも、ピアノなら自分の感情を、音を通して表現できる」
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繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら
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2016.6.23
tagged: 仲道郁代, ホール自慢を聞きましょう, 千住真理子, 東広島芸術文化ホール くらら, くらら, 小林研一郎, 西条
東広島市の中心地である西条(さいじょう)のメインストリートに建つ「東広島芸術文化ホール くらら」(以下くらら)。2016年4月1日に開館したばかりだが、友の会「くららフレンズ」には既に4,000名以上が登録し、多くの公演のチケットが完売となるなど、地域住民の期待の高さを感じさせる。
西条は、酒づくりの町として全国的に知られるところ。自然光が差し込むホワイエ(こもれび広場)には、壁面に酒蔵の煙突を連想させる赤レンガがあしらわれ、酒づくりに欠かせない米(米粒)の形を模したスツールが置かれるなど、館内の各所で東広島の特産やそのモチーフを見ることができる。なお「くらら」という愛称も、酒蔵の町のイメージから来ているそうだ。
くららの顏となるのは、4層の客席に、サイドバルコニー席を各階に備えたムードあふれる大ホール。こけら落とし公演には、バイオリニストの千住真理子をソリストに迎えた、小林研一郎指揮 日本フィルハーモニー交響楽団、ピアノ開きコンサートにはピアニストの仲道郁代が登場し、いずれも満員の観客を集め大きな盛り上がりをみせた。
大ホールの自慢は、舞台と客席とが一体感を得られる音響空間。舞台からの直接音は明瞭でありながら、壁面の反射音や、高い天井を生かした残響で、柔らかくふくよかな響きを実現している。加えて、舞台形式には4つのパターンがあり、公演内容に応じたフレキシブルな音響づくりができるのも特長のひとつだ。
「響きすぎず、デッドでもなく、オーケストラの各楽器の音がバランスよく響くホールだと感じました。バイオリン・ソロは会場の後ろまでなめらかに通り、小さな音から大きな音まで表現が映えますね」とは、こけら落としに出演した千住真理子。なお公演が終わるとすぐ、親交のある仲道郁代に「すごく音響がいいよ」とメールで知らせたとか。
千住のメッセージを受け、期待を胸にピアノ開きコンサートに臨んだという仲道郁代。
「指揮者の小林研一郎さんも『日本で5本の指に入る音響』とおっしゃっており、リサイタルの日を楽しみにしていました。実際演奏してみると、響きの豊かさと、音の抜け感が両立しており、繊細なピアニシモも隅々までよく通るホールという印象を持ちました」
実は、くららの音響設計にはヤマハの空間音響グループが携わっている。ヤマハホールなど数々の音楽ホールを手がけてきた専門チームだ。設計者である香山壽夫建築研究所のメンバーと協議を繰り返しながら、理想的な音響空間を創り上げたのだ。
今後もクラシックコンサートをはじめ、ジャズ、ポピュラーソング、パフォーマンス、歌舞伎など、バラエティー豊かな公演が目白押しのくらら。また国内外の著名なアーティストを招へいするだけでなく、アマチュア演奏家や市民グループにも広く門戸を開き、さらに県内在住・在学の子ども達で構成する「東広島市くららジュニアオーケストラ」をレジデント・オーケストラとして育成し、くららのシンボルとして発信していくという。
地域に根ざした文化・芸術の発信地として、市民はもちろん、市外、県外の音楽ファンも巻き込みながら、くららがどのように成長を遂げていくか楽しみだ。
1階の客席の壁面にはレンガ、2階以上の壁面には天然木を用いた反射板が、それぞれ音響に最適な角度で設置されている。
(写真左)背中にフィットしやすいよう、職人がひとつひとつ背面のカーブを手作りした客席の椅子。張り地は、炊いた米から立ち昇る湯気をイメージした伝統的折模様のモチーフを現代的にアレンジしたもの。
(写真右)音楽鑑賞はもちろん、こもれび広場に隣接する市民ギャラリーをふらりと覗いたり、2階のレストラン・カフェでくつろいだりと、気軽に立ち寄れるオープンな雰囲気がくららの魅力だ。
所在地:広島県東広島市西条栄町7-19
TEL:082-426-5900
ホール形式:プロセニアム形式
席数:1,206席(車いすスペース6席を含む)
2016年に10回目を迎える、「2016ひがしひろしま音楽祭」。6月26日(日)まで東広島市の各地で開催している。
文/ 武田京子
photo/ Shigeo Ogawa
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