今月の音遊人
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サクソフォンをはじめて10年、目標の「テイク・ファイブ」は近いか、遠いのか……。
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2016.7.27
tagged: 大人の音楽レッスン, サクソフォン, ヤマハ, レッスン, パイドパイパー・ダイアリー
ひょんなことから、サクソフォンのレッスンを受けることになった。50代半ばという遅いスタートだったが、いずれなんとかなるだろうという気楽な気分で始めてしまったのでした。とはいうもの、目標は必要だろう。自分なりの到達点を設定し、そこまでいったら、また別の目標を作る。そのためのレッスンであり課題である、と自分に言い聞かせた。
僕が選んだのは『テイク・ファイブ』を演奏できるようになるまでは頑張る、というゴールだった。
これには幾つかの理由がある。前から好きだったジャズギターのジム・ホールがよく共演していたことから、ポール・デスモンドのサクソフォンには馴染みがあった。また、30年以上前からおつきあいいただいているサクソフォン奏者のMさんが、日本のポール・デスモンドと言われていたからだ。もっともご本人は、あまりこの肩書をお気に召していない様子だったが。
『テイク・ファイブ』といえば、曲名は知らなくても、誰もが一度は聞いたことがあるという有名な曲だ。そして、何よりもレッスンの課題曲としては難曲である。ご存じのように5拍子という変則的なリズムで演奏されている曲なのだ。これを到達点としておけば、当分は楽しめるだろう、という魂胆なのだった。
そして、レッスン歴が10年を超えようとしているが、いまだに、この曲へのチャレンジを控えている。自分にはまだ少しハードルが高いような気がするのである。
しかし、レッスンを受講しているひとの中には、はじめての発表会にこの曲を選ぶ剛の者もいて驚かされる。発表会は半年に一度か年に一度程度行われる内輪なものだが、レッスン生には腕の見せ所でもある。
その彼は、レッスンを始めて半年後の最初の発表会で『テイク・ファイブ』を演奏して、そこそこの結果をだしたのだから、すごいひともいるものだと感心してしまった。これをどうとらえたらいいのだろうか。真面目に練習した結果なのか、才能の違いなのだろうか。
実は『キャラバン』も好きな曲で目標にしようとしていたら、意外に早く、その機会は訪れた。譜面自体が初級者用の割と簡単なものだったので、なんとなくクリアしてしまったのだった。
そろそろ目標の『テイク・ファイブ』にも挑戦してみようか、とも思うのだが、どうなることやら。
前回(記事はこちら)話題にさせていただいたニュージーランド行きについてのご報告。出発前は、現地のクジラにサクソフォンを聴かせてやってみてはと、スタッフから冗談とも本気ともつかない調子の提案があったのですが、今回のホエールウォッチングでわかったことがあります。これは、態度を改めて本気で取り組んだとしてもムリですね。船上から見ていたら、クジラは40分ほど潜水し、呼吸のために浮上してもあっという間に再び海中へ。観光客はこのわずかな間に写真を撮ったりするのですが、とにかく時間不足で、ワンチャンスといっていいかもしれません。そんなクジラの行動パターンを知り、私もこれからは余計なことを考えず、レッスンに励もうかと思った次第です。
作家。映画評論家。1950年生まれ。桐朋学園芸術科演劇コース卒業。劇団の舞台演出を経て、小説、エッセイなどの文筆の分野へ。主な著書に『正太郎の粋 瞳の洒脱』『ぼくの父はこうして死んだ』『江分利満家の崩壊』など。2006年からヤマハ大人の音楽レッスンに通いはじめ、アルトサクソフォンのレッスンに励んでいる。
文/ 山口正介
photo/ 長坂芳樹(楽器)
阿部雄介(風景、人物)
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