今月の音遊人
今月の音遊人:反田恭平さん「半音進行が使われている曲にハマります」
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出演アーティストの発掘からライブ制作までを一手に担う/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事 (前編)
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2017.6.26
毎日のようにライブが行われるライブハウスやクラブでは、出演者の顔ぶれは、その店の顔と言ってもいいだろう。それだけにアーティストへの出演交渉や公演までの諸々の手配に、担当者は日々、心血を注いでいる。どのように出演者やスケジュールが決まり、ライブが行われているのか。東京・南青山のジャズクラブ「ブルーノート東京」で、ブッキングやライブ制作を担う笹本悠里さんにお話を伺った。
ブルーノート東京の公演は、ジャズを中心にヒップホップからロックまでと幅広い。笹本さんは、出演者の約7割を占める外国人アーティストのブッキングやライブ制作を担当する。「ブッキング」とはアーティストに出演依頼をし、出演日、条件を交渉する仕事。そして出演が決まって以降、本番までの準備からアーティストの帰国までの諸々の手配をするのが「制作」の仕事だ。
「ブッキングには基本的に3つのケースがあります。個人的に好きなアーティストに依頼する場合、売り込みがくる場合、そしてお客様のニーズに応えて依頼する場合。この3本柱で組み立てています」
ブッキングチームの中で若手の笹本さんには、新たなアーティストの発掘が期待されており、さまざまな音楽ソースをチェックしてアンテナを張っている。
「自分で見つけたアーティストがお客様に喜んでいただけると、ワクワクしますね」
例えば、アメリカでの学生時代の友人であるバンド、スナーキー・パピーは今やグラミー賞を獲得した人気グループだが、笹本さんは入社当初より彼らをプッシュ。2017年は3日連続公演を行うまでになった。また、一人で複数の楽器を演奏し、音を重ねるマルチミュージシャン、ジェイコブ・コリアーは、YouTubeで見つけてオファーした。
新しい演奏者を発掘する一方で、毎年行う恒例のライブもある。これは毎回足を運んでくれる顧客も多いが、だからと言って安穏としてはいられない。
「人気のアーティストでも毎年同じ内容では飽きられてしまいます。そこで、例えば話題の人をスペシャルゲストに迎えるなど、アイデアを出して提案します」
笹本さんが担当するのは先述の通り主に外国人アーティストで、それも若手が多い。初めて招聘するアーティストの場合は、窓口となるエージェントを探すことから始める。
「一人のアーティストでも、公演先の国によってエージェントが違うこともあり、正しいコンタクト先を見つけることが重要です。そのためには、海外のプロモーターとも情報を共有するなど、日頃からネットワークの構築は強く意識しています。連絡を取り合っているうちに、別のアーティストのエージェントが見つかったりすることもありますから」
ブルーノート東京には東京・丸の内のコットンクラブ、横浜のモーション・ブルー・ヨコハマという系列店があり、この2店舗のブッキングも一緒に行っている。また、ニューヨークのブルーノートとも協力し合う。
「お互いに『このアーティストはどう?』と、推薦し合ったりできるのも我々の強みだと思います。ただそのぶん、アーティストのスケジュールの振り分けが大変で、まるでパズルを組んでいるみたいになるんです。最後のピースがきちっとはまったときには、思わずガッツポーズをするくらい(笑)。細やかなコミュニケーションを大切にしています」
アーティストの出演が確定したら、それ以降は制作スタッフの仕事となる。中にはブッキングと制作両方を担当するスタッフもいて、笹本さんもその一人だ。
制作スタッフはまず、社内に向けて出演者の決定とスケジュールを連絡。これを受けて広報スタッフはどのような宣伝をするのかを立案し、音響・照明を担当するスタッフは機材と楽器の調達に入る。宣伝に必要な写真の手配や、エンドース契約(アーティストとメーカーの間で結ばれる、使用楽器についての契約)などの確認も担う。
「特に気をつけているのはビザの申請。公演までの期間によって緊迫度が変わってきますね。ホテルや交通機関の手配も同時進行で行います。そのとき交渉している相手の都合をメインに考え、ほかの仕事は空いた時間にこなす。僕自身の仕事もパズルのようですね」