今月の音遊人
今月の音遊人:宮本笑里さん「あの一音目を聴いただけで、救われた気持ちになりました」
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ニューヨークのメトロポリタン歌劇場は、135年の歴史と伝統を誇る世界最高峰のオペラハウスのひとつ。このオペラハウスが2006年から世界各地の映画館に向けて最新のオペラ公演を配信しているのが、METライブビューイングである。
ヨーロッパは現地ニューヨークと衛星同時中継、日本は日本語字幕入りで現地上演の約数週間後に上映される。
日本にいながらにして大画面でMETのオペラが楽しめるこのライブビューイング、幕間には歌手や指揮者やスタッフへのインタビュー、舞台裏の様子、大規模な舞台転換などが挟み込まれ、オペラハウスにいるような感覚を抱かせてくれる。
今回は、新音楽監督に就任したヤニック・ネゼ=セガンの新たなシーズンの幕開けを記念するものとなっている。ネゼ=セガンは1975年カナダ生まれ。5歳からピアノを始め、10歳で指揮者を目指すことに。10代から合唱の指揮を始めた彼は、2005年からヨーロッパに進出。ロッテルダム・フィル、ロンドン・フィルなどの主要なポストを歴任し、2010年フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督に就任した。今後はメトロポリタン歌劇場音楽監督との両面で活躍することになる。
ネゼ=セガンのMETデビューは、2009年のビゼー「カルメン」。生命力あふれ、輝かしく躍動感に満ちた音楽作りは、大センセーションを巻き起こし、世界中に「ヤニック・ファン」を生み出した。この「カルメン」のライブビューイングを観たアーティストたちは、自身の録音ではぜひ彼の指揮と共演したいと願い、いまやオファーが後を絶たない。
そんなネゼ=セガン就任の今シーズンのラインナップは、豪華絢爛そのもの。いまもっとも人気と実力を兼ね備えたアンナ・ネトレプコ、エリーナ・ガランチャ、ロベルト・アラーニャ、ヨナス・カウフマン、ディアナ・ダムラウ、フアン・ディエゴ・フローレスをはじめとする歌手が勢ぞろいし、得意の役をうたい上げる。
●2018年
11月2日~11月8日 ヴェルディ「アイーダ」
11月16日~11月22日 サン=サーンス「サムソンとデリラ」新演出
12月7日~12月13日 プッチーニ「西部の娘」
●2019年
1月18日~1月24日 ニコ・ミュ―リー「マーニー」MET初演
2月8日~2月14日 ヴェルディ「椿姫」新演出
2月22日~2月28日 チレア「アドリアーナ・ルクヴルール」新演出
3月8日~3月14日 ビゼー「カルメン」
4月12日~4月18日 ドニゼッティ「連帯の娘」
5月10日~5月16日 ワーグナー「ワルキューレ」
6月7日~6月13日 プーランク「カルメル会修道女の対話」MET初演
伊熊 よし子〔いくま・よしこ〕
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)など。2010年のショパン生誕200年を記念し、2月に「図説 ショパン」(河出書房新社)を出版。近著「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書 電子書籍有り)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)。共著多数。
伊熊よし子の ークラシックはおいしいー