今月の音遊人
今月の音遊人:葉加瀬太郎さん「音楽は自分にとって《究極のひまつぶし》。それは、この世の中でいちばん面白いことだから」
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世界の一流奏者が愛用するトランペット「Xeno Artist Model」がモデルチェンジ
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2019.5.28
tagged: トランペット, 楽器探訪AnotherTake, Xeno Artist Model, シカゴシリーズ, ニューヨークシリーズ
主に軍隊で使われる信号ラッパの時代から考えると古い歴史があり、現代では、幅広い演奏形態・音楽ジャンルで使われるトランペット。実音とは別の調で記譜される移調楽器で、さまざまな調性の楽器がありますが、最も一般的なのはB♭(べー)管/変ロ調管で、オーケストラではC(ツェー)管/ハ調管が使われることもあります。
ヤマハのトランペットのなかで、長年に渡るビンテージトランペットの研究と、世界の一流奏者のアドバイスを生かし、つくられているのが「Xeno Artist Model(ゼノアーティストモデル)」。1990年に誕生した「ゼノシリーズ」のフラッグシップモデルで、金管楽器の開発・調整のスペシャリストとして世界的に知られるボブ・マローン氏を開発陣に加え、2005年に初代モデルである「シカゴシリーズ」のC管が誕生しました。
「一般的に広く使われるのはB♭管ですが、アメリカのオーケストラではC管が定番であるため、先にC管を出すことで、オーケストラ奏者をメインターゲットとするモデルであることを知っていただきたいという意図がありました。その甲斐あって、多くの奏者が『ゼノアーティストモデル』に興味を示し、演奏会で使ってくれるようになりました」と、開発を担当した福田徳久さん。
その後モデルチェンジや新たなバリエーションを加え、現在は、フリーな吹奏感と、輝かしさのなかに深みのある音色の「シカゴシリーズ」(B♭管・C管)と、トランペットの伝統のサウンドを追求した「ニューヨークシリーズ」(B♭管・C管2種)の、キャラクターの異なる2シリーズ・計5モデルを展開しています。
2019年3月、楽器をさらに進化させるために、「シカゴシリーズ」「ニューヨークシリーズ」ともにモデルチェンジを実施。トランペットの心臓部であるバルブケーシングと、音や吹奏感に大きく影響するウォーターキイコルクに改良が加えられました。
「2か所の改良で、吹奏感や、息を吹き込んだときの反応のよさなど、楽器としての基本性能が格段に上がりました」と、同じく開発を担当する古海(ふるみ)勝彦さん。
バルブケーシングは、“ある箇所”の寸法と厚みを変更することで、息を吹き込んだときの楽器の反応が大幅にアップ。より精度の高い音楽表現が可能になりました。ちなみに“ある箇所”としているのは、トランペットの開発において注目されにくく、これまで「ゼノシリーズ」の開発では全く手をつけなかった、いわばマル秘の箇所だからだそう。
「きっかけは、『シカゴシリーズ』の開発協力者であるシカゴ交響楽団のジョン・ハグストロムさんの提案でした。ジョンさんは楽器コレクターでもあるのですが、ご自身が所有しているビンテージトランペットに関する資料をみせてくださったことが、“ある箇所”に注目するヒントとなりました」(福田さん)
ウォーターキイコルクについては、素材を変更。ゴムとコルクのよい部分を併せ持ち、かつ経時変化しにくいラバーコルクを採用することで、音がまとまりやすくなり、音の遠達性と反応性も向上しました。
「大きく変わったのは、楽器に息を吹き込んだときの抵抗感です。優れた楽器にはかならず心地よい抵抗があるもので、強すぎても弱すぎてもいけませんが、奏者にとって最適な抵抗感を実現できました」(福田さん)
トランペットは、素材や仕上げ(塗装)などによって音色・吹奏感が変わりますが、実は楽器のキャラクターを決定づける一番の要素は、外からは見えない管の内径(直径)やテーパー(傾斜)具合なのだとか。また、製造プロセス、製造方法の違いによっても音色・吹奏感は変わってくるそう。
「楽器の製造においては、アーティストとともに開発した試作品と同じ品質の楽器をいかに忠実に再現するかが重要です。今回、管を曲げる工程だけでも準備に数か月かけていますが、一定の期間で、楽器を安定してつくり続けるための生産工程を確立するために試行錯誤を重ねました」(古海さん)
トランペットは、工房や楽器店で パーツを交換したり、付けたりすることができることから、プロ奏者や こだわりのアマチュア奏者が、自分好みに楽器をカスタマイズすることも 少なくはない。
「プロの奏者のなかには、『今使っている楽器に何かあっても、楽器店に行けば同じクオリティの物が手に入るので安心です』とおっしゃる方もいます。店頭に並んでいるのは、開発協力者である海外の一流奏者からお墨付きをもらった楽器ですので、プロの奏者の方はもちろん、プロを目指す音大生やハイレベルなアマチュア奏者の方も、いろいろ吹き比べて、自分の音楽を表現できる1本を見付けていただきたいです」と、マーケティング担当の武居健太郎さん。
楽器に付属する専用ケースは、セミハードケースで扱いやすく、2本収められるのがポイント。B♭管とC管など、複数本を持ち変えて吹くことが多いトランペット奏者のことを考えた造りになっています。
楽器として高い完成度を誇り、オーケストラ奏者だけでなく、幅広いジャンルの奏者が支持する「ゼノアーティストモデル」。これからも奏者の音楽表現を最大限に引き出す楽器を生み出すために、みなさんの挑戦は続いていきます。
文/ 武田京子
photo/ 坂本ようこ
tagged: トランペット, 楽器探訪AnotherTake, Xeno Artist Model, シカゴシリーズ, ニューヨークシリーズ
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