今月の音遊人
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まるで「小人の靴屋」!?目には見えないところで音楽・楽器ファンをサポートするヤマハの「ITシステムチーム」
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2020.6.3
tagged: カスタマーサポート通信, 技術サポートセンター, ITシステムチーム
大切な楽器を安心して長く使うために欠かせないアフターサービス。お客様と直接やり取りすることはありませんが、ヤマハのサービス全体の技術的なサポートを担っているのがカスタマーサポート部内にある「技術サポートセンター」です。
なかでも同センターの「ITシステムチーム」は、部内や特約店向けのITシステムを構築することで利便性や業務効率の向上に尽力。それがスムーズで迅速な修理対応につながり、ひいてはお客様へのサービス向上に結びついているのです。
今や、私たちの生活のさまざまなシーンに根づいているIT。ヤマハのアフターサービスにおいては、そのテクノロジーはどのように活用されているのでしょうか。「ITシステムチーム」リーダーの日原直洋さんに伺いました。
「ITとかシステムという単語は、わかっているようでよくわからない言葉ですよね。それを実際の業務にいかに自然に組み込めるかが我々のミッションです。いわば、グリム童話の『小人の靴屋』のようなものだと思っています」
夜中に靴屋のおじいさんをそっと助けた小人たちのように、目には見えないITシステムを構築することで、業務を支えているわけです。
「ITシステムチーム」が構築、保守・管理をするのは、大きく4つのシステム。お客様からのお問い合わせ応対に使用する「コールセンターシステム」、修理の受付から見積もり、修理完了の報告書作成、決済までを技術者がiPadひとつで行える「アフターサービス業務管理システム(Compass)」、技術者に修理やパーツに関する情報を提供する「ヤマハサービス技術情報サイト(YSISS)」、そして特約店や修理代行店向けの「サービスパーツWEB注文システム(SPOON)」です。
修理技術者が交換部品などのパーツを注文するときに使う「サービスパーツWEB注文システム」は、新システム「SPOON」として刷新され、2019年5月に運用が始まりました。
従来、技術者がパーツを発注する際には、起きている症状から多様な原因を想定し、それぞれで使用するパーツをサービスマニュアルでくまなく調べ、そこに記載された8桁のパーツコードを入力し、注文していました。経験と知識と忍耐がなせる業です。
「その手間を何とかしたいという思いから、SPOONのプロジェクトがスタートしました。究極的には、パーツコードを打たなくても注文できる、ということにチャレンジしました。最初は大ぼら吹きだと思われていたかもしれないですね(笑)」
画期的なのは、「アフターサービス業務管理システム(Compass)」に蓄積された修理事例から、モデル名と症状をキーにして修理事例を検索・参照し、そのままパーツオーダーが可能になった点。先人たち(ヤマハ修理技術者)が行った修理の統計情報を見ることができ、それぞれのケースで使われたパーツが表示され、その画面からそのまま注文できるようになったのです。
修理事例と使用パーツの情報がひと目でわかるこのシステムは、注文の効率化だけでなく、まだ経験が浅い若手技術者たちの育成にもひと役買っています。
「必要なものを検索するシステムはあったかもしれませんが、それを注文システムと連動させたシステムは類を見ないと思います。もしかしたら、日本のアフターサービスを変えたといってもいいかもしれません(笑)」
従来、パーツの注文はこれまで約半数をファックスが占めていました。これは、経験豊富な技術者ほど自分用にモデルごとのオーダー票を事前に用意していて、それをコピーして注文するケースが多かったためです。SPOONの導入によってその必要がなくなり、オンライン注文率は74%まで増加したといいます。発注、受注双方の業務効率がアップすることで、よりスピーディーにパーツを届けることができるようにもなりました。
それは、ITシステムチームが構築する各システムがそれぞれ独立しているのではなく、シームレスに連動しているためです。
たとえば「コールセンターシステム」では、お問い合わせがあったお客様の電話番号から過去のお問合せ履歴や、特約店であれば特約店情報などを瞬時に検索。修理依頼であれば、その内容を「アフターサービス業務管理システム」に連携して登録することができます。また、修理技術者が修理を実施した内容を「アフターサービス業務管理システム」に登録すると、それらの情報がSPOONで活用できるという仕組みです。
「2001年、当時の日本最先端の技術を導入して最初に構築したのがコールセンターシステムです。その後、アフターサービス業務管理システムの運用がスタートし、今回のSPOONによってそれぞれのシステムが、点と点から線になり、そして面のシステムとしてひと通り完成しました。現在は、次なるステージに飛躍したコールセンターシステムの改善開発に取り組んでいます」
ヤマハが歩んできた楽器開発・製造の道のりは、そのままアフターサービスの歴史。ITシステムチームでは、お客様に安心してヤマハ製品を使い続けていただくためのシステム作りに日々努めています。