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“ピアノの伝道師”として一人でも多くの人に魅力を伝えたい──ピアノを弾く楽しさと喜びが詰まったアルバム『PIANO SWITCH 2』/西村由紀江インタビュー
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2021.4.16
tagged: インタビュー, アルバム, 西村由紀江, PIANO SWITCH 2
2021年にデビュー35周年を迎える作曲家・ピアニストの西村由紀江。2年ぶりの新作にして41枚目となるアルバムのタイトルは『PIANO SWITCH 2』。前作『PIANO SWITCH』は、シンガー・ソング・ライターの大塚 愛から、西村の作品を弾いたことでピアノへの“好きスイッチが入った”というエピソードを聞いて生まれたものである。今回のアルバムは、西村のさらに強いピアノに対する想い、彼女が大切にしてきた“縁”がつながった作品となった。
「前作を聴いてくださった方から、“数十年ぶりにピアノの蓋を開けて再開しました”とか、“グランドピアノを買いました”といったお声をいただき、たくさんの方の“好きスイッチ”が入ったことを実感する機会に恵まれ、自信につながりました。また、出身地でもある大阪府豊中市の『豊中ストリートピアノプロジェクト』に関わり、子供たちがピアノに大切にペイントする様子を見て、改めてピアノが本当に大事で愛しいものだ、ということを実感したのです」
西村自身の“スイッチ”もより深く入ったことで、作品づくりにも影響があったという。
「デビューしてからこれまで、作品をつくるときにはどこかで“ポップであること”に思いが向かっていました。特にCM音楽は15秒で表現することを求められることも多かったので、ピアノの特性よりも、多くの人に知っていただくことに作品づくりの焦点があたっていたように思います。しかし今は、ピアノを長くやってきた私だからこその表現があるのではないか、と迷いなく思えるようになってきました」
ピアノという楽器はメロディだけではなく、ハーモニーを奏でることができ、しかも弾き方によっていくつもの音色をつくりだせる。『PIANO SWITCH 2』には、その特性に改めて向き合うことで生まれた作品が並ぶ。
「ピアノでできる表現ということに特化したことで、自分で弾いていてもどんどん楽しくなってきてしまって。また、生まれた作品はこれまでの出会いからの影響も大きいのです。例えば『鍵盤のカルテット』はあるコンクールで、障がいを抱えた方のマリンバの演奏を聴き、その素晴らしい音色にふれたことがきっかけで生まれました。その方がピアノも弾きたいけれど、四本の指で弾ける曲がないとおっしゃっていたので、“じゃあ私が書こう”と。でも彼のために、というよりはどこか突き動かされるような感じで書いていました。ピアノの可能性へのチャレンジの機会をいただいたような気がします。それこそ“スイッチ”を押されたのかもしれません」
西村の演奏は、美しく変化に富んだ音色が魅力だが、それは、タッチはもちろんのこと、ペダリングの多彩さも大きな役割を果たしている。今回の収録曲にはそんな西村のペダリングの秘密を垣間見ることができる『Pedal’s song』も含まれている。
「ペダルの踏み方については、浅い深い……といったことだけではなく、普通であれば踏みかえるだろうというタイミングであえて濁らせることもしています。よく人からも“どういうタイミングで踏みかえているの?”と尋ねられるので、今回は私のペダリングの一例をご紹介するようなつもりで、また“こういう風にペダルを使ったら楽しいよ”ということをお伝えしたくて作りました。今回のアルバム発売にあたり、楽譜も同時に出版されるのですが、そこにはかなり細かくペダルの指示を書き入れました。ただ、あくまでもそれは“一例”。弾いてくださる皆様の“ここだ!”というタイミングを見つけて楽しんでいただければ嬉しいです」
西村は2011年の東日本大震災によって500台ものピアノが失われたと聞き、被災地にピアノ届ける「Smile Piano 500」プロジェクトを発足。10年にわたって取り組んでいる。
「これもご縁がつながってのプロジェクトで、私一人ではとてもできることではありませんでした。ピアノをご提供くださるご家庭やサポートしてくださる調律師の方々など、多くの人々の力によってここまでくることができました。プロジェクト開始から10年が経ち、ピアノが多くの皆様のお手元に届いたことを実感しています。今回のアルバムにはこの「Smile Piano 500」プロジェクトへの思いを込めた『スマイルピアノ』という作品も収録していますが、これからはお届けしたピアノを皆様がどう弾いてくださるか、それを見守っていくことができればと思っています。今後はこのプロジェクトを含め、“ピアノの伝道師”として一人でも多くの人にピアノの音色の美しさ、癒し、ハーモニーの楽しさを私なりのやり方で伝えていきたいです」
アルバム『PIANO SWITCH 2 ~PIANO LOVE COLLECTION~』
発売元:ハッツアンリミテッド
発売日:2021年4月21日
価格:通常盤3,300円/DVD付盤4,400円(いずれも税込)
詳細はこちら
アルバムマッチング曲集『西村由紀江 「PIANO SWITCH 2 ~PIANO LOVE COLLECTION~」』
発売元:ヤマハミュージックメディア
発売日:2021年4月17日
価格:2.530円(税込)
詳細はこちら
アルバム発売記念ツアー『PIANO SWITCH 2 〜PIANO LOVE COLLECTION〜』
2021年
6⽉5⽇(⼟)かじまちヤマハホール(浜松)
6⽉12⽇(⼟)Live & Restaurant Bar MONK(松⼭)
6⽉26⽇(⼟)⼤名MK ホール(福岡)
6⽉27⽇(⽇)Live Juke(広島)
7⽉10⽇(⼟)ジョイアミーア(新潟)
7⽉17⽇(⼟)ザ・フェニックスホール(⼤阪)
8⽉14⽇(⼟)ヤマハホール(東京・銀座)
8⽉20⽇(⾦)岩⼿銀⾏⾚レンガ館(盛岡)
8⽉21⽇(⼟)ピアノサロンREFRAIN(仙台)
8⽉22⽇(⽇)六花亭札幌本店きたこぶしホール(札幌)
8⽉28⽇(⼟)ヤマハ名古屋ホール(名古屋)
詳細はこちら
文/ 長井進之介
photo/ 坂本ようこ
tagged: インタビュー, アルバム, 西村由紀江, PIANO SWITCH 2
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