Web音遊人(みゅーじん)

僕の根幹にあるのは大石昌良。オーイシマサヨシはそこから派生したものなんです/大石昌良インタビュー

アコースティックギター1本で聴き手の心に激しく刺さる音楽を伝えるストイックなシンガーソングライター・大石昌良。そして、黒縁メガネをトレードマークにサービス精神あふれるステージを展開するアニソンシンガー・オーイシマサヨシ。まったく違う2つのキャラクターを使い分けるマルチアーティストの秘密に迫る。

大石昌良の夢は“日本一の弾き語リスト”

大石昌良は4つの顔を持つアーティストだ。シンガーソングライターの顔、デビュー時に所属していたバンドSound Schedule(2011年に再結成された)での顔、サウンドクリエイターTom-H@ckとのユニットOxT(オクト)の顔。これに加えてアニソンシンガー“オーイシマサヨシ”としても活動している。彼がマルチなフィールドで活躍するアーティストであることはわかるが、なぜ、あえて大石昌良とオーイシマサヨシ、名前を分けているのだろう?
「バンド時代から大石昌良の名前で活動を続けてきて“自分が楽器を弾かないならステージには立たない”など自分なりのルール作っていったんです。ですから漢字の大石昌良という名義には“アーティストとして頑張っていく”という自分の意志が込められています」
しかし、彼がアニメソングの作家として脚光を浴び、アニソンシンガーとしても活動するようになると、楽器を持たずにカラオケで歌うことや地方のショッピングモールなどでのイベント出演などの機会も増えていった。
「そうなると大石昌良としてやってきたことと整合が取れなくなってしまうので、アニソンシンガーの活動は別名義にしようと考えたのがカタカナの“オーイシマサヨシ”です」

大石昌良とオーイシマサヨシはアーティストとしての姿勢もまったく違う。大石昌良は弾き語りというパフォーマンスを追求し、「日本一の弾き語リストになる」という夢を追い続けるシンガーソングライターだ。一方、オーイシマサヨシは、アニソンを通じて来てくれた人を楽しませようと全力を尽くすエンターテイナー。ある意味で正反対のキャラクターだ。
「ライブのMCも全然違います。オーイシマサヨシの場合は、最初に『アニソン界のおしゃべりクソメガネことオーイシマサヨシです』と必ず言うようにしていますし、すごく明るく人懐こい感じでやっています。でも、大石昌良はそういうことを言いませんし、声のトーンも少し低めで落ち着いています」

歌うためのギタースタイルを追求

大石昌良のステージの魅力のひとつが、卓越したギターテクニックだ。スラッピングやタッピングなどのテクニックを駆使した演奏は、アコースティックギター1本とは思えないダイナミックな迫力を感じさせる。
「リズム楽器の音が聴こえるとか、後ろでエフェクトを同期させて音を出しているんじゃないかとか、よく言われるんですけど、決してそうではないんです。ピック弾きだけだと出ないニュアンスが楽しくてやっているんです」
その演奏スタイルは押尾コータローを連想させるが、実際に押尾との交流もあり影響も受けている。さらには海外のギタリストの演奏をYouTubeで研究して積極的に取り入れ、音楽仲間同士で影響し合いながら生まれたのが大石昌良ならではのギタースタイルだ。
「でも、僕はインストゥルメンタルの曲をやりたくてギターを弾いているのではなく、基本的に歌のためのギターなんです。歌うためのアンサンブルを作りたくてギターを始めましたし、それは今も変わっていません」
そんな彼がアコースティックギターを選ぶ時にどんなポイントを重視しているのかを聞いてみた。意外なことに、その答えは「疲れにくいこと」。指の長さに対するネックの太さやフレットの高さ、弦の太さや弦高の違いなど、さまざまな要素が疲れやすさの原因になるのだという。
「僕は、弾きやすさプラス疲れにくさもギターの大事なところだと思っています。練習していても疲れないギターのほうが上達するし、何より弾いていてシンプルに楽しいです。僕がヤマハのギターを選ぶ理由もそこが大きくて、すべてにおいてすごく優秀なんですが、特に疲れにくいという点が素晴らしくて、日本人にフィットしたギターだと思います」

エンタメにこだわるオーイシマサヨシ

大石昌良がギターにこだわっているとすれば、オーイシマサヨシとしてのこだわりはステージの演出だ。例えばステージにいきなりウルトラマンが登場したり、やぐら太鼓が出てきたりと、観客を驚かせる演出には事欠かない。
「毎回スタッフさんと一緒に、これでいきますかって相談をしながらステージを作っていく感じが楽しいんです。ですからオーイシマサヨシのライブは、どちらかと言えばエンタメ舞台の雰囲気が強いかもしれません」
ここまでの話でもわかるように、大石昌良のライブとオーイシマサヨシのライブはまったくの“別物”。それを知らずに行くと面食らってしまうことにもなりそうだが……。
「仮に間違ったとしても、両方とも誰も置いていかないライブを心がけているので、安心して遊びに来ていただけたら嬉しいですね」
それにしても、これだけスタイルの違う大石昌良とオーイシマサヨシを並行させる活動スタイルはいつまで続くのだろう?
「時期について、今はまったく考えてないです。でも、僕の根幹にあるのは大石昌良で、オーイシマサヨシはそこから派生したもの。もしオーイシマサヨシを辞めるとしたら、ファイナルライブで最後の曲が終わったら、それまでかたくなに取らなかったメガネを取ってステージのセンターに置いて『普通の大石昌良に戻ります』と言って去っていこうと。それだけは決めています(笑)」

■インフォメーション

●シングルCDリリース

オーイシマサヨシ
『恋はエクスプロージョン(feat.田村ゆかり)』
発売元:ポニーキャニオン
発売日:2022年6月1日
詳細はこちら


オーイシマサヨシ – 恋はエクスプロージョン (feat.田村ゆかり)[Official Video]

●ライブインフォメーション

大石昌良
HAKUBA ヤッホー!FESTIVAL 2022
日時:2022年5月28日(土)
会場:白馬岩岳マウンテンリゾート山頂エリア 特設ステージ(長野県白馬村)
HAKUBA ヤッホー!FESTIVALオフィシャルサイト

その他のライブ情報は、大石昌良/オーイシマサヨシ オフィシャルサイトでご確認ください。
オフィシャルサイト

photo/ 小林大介

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:挾間美帆さん「私は音で遊ぶ人のために作品を作っているのかもしれません」

11641views

フランチェスコ・トリスターノ コンサート Piano 2.0

音楽ライターの眼

ピアノ新世のイノベーター、シンセとともに演奏をパラダイム転換/フランチェスコ・トリスターノ コンサート Piano2.0

1314views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

すぐに音を出せて、自由に演奏できる。管楽器の楽しみを多くの人に

15542views

ギター

楽器のあれこれQ&A

ギター初心者のお悩みをズバリ解決!

1910views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

14342views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

思い描く声が出せたときの感動を分かち合いたい/ボイストレーナーの仕事(後編)

10140views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

14197views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

12406views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

36953views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

6882views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

5264views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28129views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

14793views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

9516views

音楽ライターの眼

フリートウッド・マックの初期未発表音源集『ビフォー・ザ・ビギニング 1968-1970 〜ライヴ&デモ・セッションズ〜』が発表

5055views

地代所悠/コントラバスヒーロー

オトノ仕事人

「コントラバスヒーロー」として音楽と三浦半島の魅力を伝える/音楽で活躍するご当地ヒーローの仕事

2676views

ざぶとんず

われら音遊人

われら音遊人:本家ディアマンテスが認めた 力強く、心躍るサウンド!

1080views

【楽器探訪 Another Take】人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

13434views

水戸市民会館

ホール自慢を聞きましょう

茨城県最大の2,000席を有するホールを備えた、人と文化の交流拠点が誕生/水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)

11302views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

すべては、あの日の「無料体験レッスン」から始まった

6045views

楽器のあれこれQ&A リコーダー

楽器のあれこれQ&A

リコーダーを長く楽しむためのお手入れ方法

15067views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

7256views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

34885views