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今月の音遊人:ケイコ・リーさん「意識的に止めなければ、自然に耳に入ってくるすべての音楽が楽譜として浮かんでくるんです」
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2022.11.1
2001年の日産ステージアCMソング『We Will Rock You』でジャズファンのみならず、多くの人々の心をわしづかみにしたケイコ・リーさん。存在感のあるボーカル・スタイルとディープ・ボイスは唯一無二です。2022年10月にはベストアルバム『Voices Ⅳ』をリリースするなど、その輝きは増す一方。そんなジャズ・ボーカルの女王にとって音楽とは?
ジョージ・ベンソンのアルバム『Give Me the Night』に収録されている『Love Dance』ですね。
小学校高学年のころ、コモドアーズの『THE BUMP』というレコードをジャケ買いしたのをきっかけに、スティービー・ワンダーやチャカ・カーンなどアフリカンアメリカンのアーティストの曲を聴き始めました。そのなかのひとりがジョージ・ベンソン。10~20代のころは、コンサートにもよく行きました。
『Love Dance』がイヴァン・リンス作曲だということを当時は知らなかったのですが、シンプルな編成が魅力的で、特に好きな曲です。1996年にリリースした私のセカンドアルバム『Kickin‘It(キッキン・イット)』をつくる際にはぜひこの曲をやりたいと思いました。グラディ・テイトさん(ドラム)、リニー・ロスネスさん(ピアノ)、ロン・カーターさん(ベース)、そして大好きだったリー・コニッツさん(アルトサクソフォン)にも参加していただき、カルテットをバックに歌ってレコーディングしました。今でも、よく歌っています。
あって当たり前のもの。なくなるなんて考えられません。
私は小さいころから、楽譜を見るのが大嫌いでした。通っていた音楽教室では、耳コピして先生の前で弾くような子どもでしたね。耳で聴いて覚えたものは、全部弾けました。
今でも、たとえばBGMなど自然に耳に入ってくる音楽も、自分で意識的に止めなければすべて楽譜になって浮かんできます。ですから、たとえ歌えなくなったとしても聴こえてさえいれば、音楽が楽しめます。とはいっても、アウトプットできなければつまらないですよね。聴いてアレンジして、みなさんに披露できるミュージシャンが生業であることは本当に幸せです。ここ数年で、それをより強く感じるようになりました。
私の周りには「音で遊ぶ人」がたくさんいます。まさに「音遊人」だらけです。
そして、私自身もそうだと感じています。毎日たくさんの時間を音楽と過ごして、自分のなかのいろいろなエッセンスを引き出しのなかにいっぱい詰め込んで、それを表現し続けられるアーティストでいたいと思っています。
今後、「音遊人」としてやっていきたいこともあります。デビューしてから数年間は、今は亡くなられたジャズジャイアンツと呼ばれる方々とご一緒させていただく機会が何度もありました。ニューヨークでスタンダードジャズの演奏をしたとき、そのなかのお一人であるおじいちゃんのサクソフォンプレイヤーが「最近、楽しいんです」とおっしゃったことを今でも覚えています。私も原点回帰ではないですが、スタンダードなジャズナンバーなどをふつうに歌って満足できるようになりたいですね。おそらく満足することはないと思いますが、少しずつそぎ落としていき、そういった歌や音楽ができたらと考えています。
ケイコ・リー〔けいこ・りー〕
実力、人気ともに抜きん出たジャズ・ボーカリストとして国内外でその地位を確立。共演したミュージシャンから「楽器と対等に渡り合える歌手」と絶賛され、その即興性と瞬発力にすぐれたパフォーマンスの評価は高い。1995年のデビュー作『Imagine』以来、多くの作品をリリース。2001年にカバーしたCMソングが話題を集め、翌年2月に発表したベストアルバム『Voices』が20万枚のセールスを記録。その発売20周年となる2022年、4枚目のベストアルバム『Voices Ⅳ』をリリース。
オフィシャルサイト
文/ 福田素子
photo/ 操上和美
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tagged: インタビュー, 今月の音遊人, ケイコ・リー
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