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今月の音遊人:辻󠄀井伸行さん「ピアノは身体の一部、大切な友だちのようなものです」
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自分の音楽世界をオーケストラとともに表現したい/塩谷哲ソロデビュー30周年記念コンサート
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2023.3.31
ピアニストとして、そして作曲家・編曲家として、長年に渡って精力的に幅広い活動を続けている塩谷哲。ソロデビュー30周年を迎えた現在の心境と、2023年7月に行われるアニバーサリーを飾る記念コンサートについての想いを聞いた。
2023年にソロデビュー30周年を迎えた塩谷哲。大学在学中の1986年からサルサ・バンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」のピアニストとして活動を開始し、その後も数多くのアーティストやオーケストラと共演。作曲家や編曲家の顔も併せ持ち、まさに八面六臂の活躍を続けている。
「デ・ラ・ルスからスタートして、1993年にアルバム『SALT』でソロデビューしました。振り返るとたくさんの出来事がありましたね。僕は、自分自身を“ジャズピアニスト”とは言い切れないし、“ラテンピアニスト”と言い切るほどでもない。また、“作曲家”と言うにはステージに立って演奏もする。自分の音楽的な本質がはっきり見えていないと感じて、それがコンプレックスだった時期もあります。けれど、だからこそいろいろなチャンスをいただいて数多くのことに挑戦できたし、すべてにしっかりと向き合ってきました。自分の音楽を模索し続けた30年だったと思います」
そうやって積み重ねた挑戦の中で、転機となる仕事に巡り合った。2016年4月から2022年3月までEテレで放送されたバラエティ番組『コレナンデ商会』だ。塩谷はこの番組の音楽制作を担当した。
「10分間の番組ですから、制約もいろいろとあるんです。例えば、1曲は長くても2分以内に収めなきゃいけないとか、演奏者の編成をコンパクトにしなくちゃいけないとか。それでも創意工夫を重ねてより良いものを作りたいと全身全霊を傾けて取り組みました。ある意味、その時点までの自分の活動の集大成のような仕事です。携わっていた6年間は、まさに『コレナンデ生活』でしたね」
番組放送期間中は作曲家、編曲家、そして演奏家として多種多様な音楽を生み出し、視聴者を楽しませてきたが、時にはハラハラした場面もあったという。
「結構な無茶ブリをされたりね。でも、すごく鍛えられましたし、いい経験になりました。だから今は、そうして得た貴重な経験を今後の自分の活動にどう生かしていこうかと考えているところです」
そんなソロアーティストとしての30年目を記念するコンサートが、2023年7月29日(土)にさいたま市のRaiBoC Hall(レイボックホール)で開催される。共演は東京フィルハーモニー交響楽団。指揮に川瀬賢太郎を迎えた豪華なステージになりそうだ。
「東フィルさんはイベントなどでご一緒するといつもウェルカムな感じで迎えてくれるんですよね。僕の音楽をしっかりと理解して演奏してくれる、その確信があるのでとても楽しみです」
演奏プログラムには、シンフォニックジャズの名曲『ラプソディ・イン・ブルー』や、塩谷のオリジナル曲『EARTH BEAT』『Spanish Waltz』を予定している。また、この日が初お披露目となるデビュー30周年を記念した書き下ろしの新作を準備中だそうだ。
「自分の音楽世界をオーケストラとともに表現したいと思っています。『EARTH BEAT』と『Spanish Waltz』はすでにフルオケ版もあるのですが、せっかくなので少し手を入れた2023年の新バージョンをお聴かせできればと。作曲もアレンジも全部ひとりでやるので大変ですが、同じくらい楽しい作業なので期待していただきたいですね。ですから、ピアニストとしてはもちろん、作曲家・編曲家としての塩谷哲の30年もお見せできるんじゃないかな。10周年、20周年も感慨深くはありましたが、これからどんな音楽を作っていこうかという、今後に向かってのいい節目のコンサートになると思います」
デビュー以来、幅広いフィールドでの活躍を続ける塩谷に30周年を迎えた今後の展望をたずねてみると……。
「映画音楽の世界にずっと興味があるんです。だから、どこかでご縁があればうれしいですね。これもやはり『コレナンデ商会』の影響かもしれないな。それまで経験したことがなかった、作家さんがいて、歌詞があって、それに曲をつけるという音楽づくりが本当に新鮮でおもしろかったんです。そんな経験をしたからか、自分の音楽が他の何かと融合して新しい作品が生まれることにすごく魅力を感じるようになりました。極論だけど、自分が亡くなった後に、僕の曲を『これ知ってる?いい曲だよね』なんて言ってもらえたとしたら、これほどうれしいことはないと思います」
もちろん、自分の音楽を自分の手で演奏し、表現するアーティストとしての活動もまだまだ続く。そのためにも、知らない世界があれば体験、吸収し、自身を錆びつかせないよう心がけている。
「そうしないと、すぐボーッとしちゃうタイプだから(笑)。今年ソロ30周年で56歳になりました。今になってファーストアルバムを聴き直すと、それはもう稚拙なんです。でも、その当時でしか生み出せない、曲を作りたい!というエネルギーが詰まっている。いま同じものを作ろうと思っても難しいです。そう考えると、その時々で一生懸命作ってきたものにはすべて意味があったと思うし、これからも出し惜しみせず、自分がこれだ!と感じて表現したものを誰かに伝えていくことができたら最高に幸せですね」
日時:2023年7月29日(土)16:00開演
会場:RaiBoC Hall 大ホール(埼玉県さいたま市)
料金:一般席5,000円/A席4,500円/B席4,000円(全席指定・税込)
指揮:塩谷哲(ピアノ)、川瀬賢太郎(指揮)、東京フィルハーモニー交響楽団
演奏曲(予定):ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー、塩谷哲/Spanish Waltz、塩谷哲/EARTH BEAT、塩谷哲/デビュー30周年記念書き下ろし新作
※チケットの発売は2023年4月22日(土)午前10:00より
詳細はこちら
文/ 高内優
photo/ 阿部雄介
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