Web音遊人(みゅーじん)

渡辺美里

今月の音遊人:渡辺美里さん「歌を聴きたいといってくださるファンとの時間は最高の財産です」

女性ソロシンガーとしてはもちろん、ラジオのパーソナリティーやナレーション、ミュージカル出演など、さまざまな分野で活躍する渡辺美里さん。2023年には、自身初となるデュエットアルバム『Face to Face~うたの木~』をリリース。デビュー38年目にして常に新たな挑戦をしています。今回のインタビューでは、そのパワフルな活動の源ともいえるお話を伺いました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

最初に思い浮かんだのは、ジョージ・ガーシュウィンのオペラ『ポーギーとべス』の中の一曲、『サマータイム』です。ジャニス・ジョプリンやエラ・フィッツジェラルドなど、いろいろな歌手のバージョンで聴き続けています。ひとつの曲がアーティストによって全く違う表情を見せるところに魅力を感じるのは、さまざまな楽曲をカバーする私の活動に影響しているのかもしれません。
また、タイミングによって“ハマる”曲もあって、イギリスのミュージシャン、シールの『Kiss From A Rose』もそうです。スタッフに呆れられるくらい、「もう1回!もう1回!」と移動中の車で繰り返し聴いていました。

Q2.渡辺さんにとって「音」や「音楽」とは?

歌をつくり、表現し、届けること、そのどれもが自分にとっての毎日なので“日常”でしょうか。音楽、特に”歌”は、気持ちを清らかにし、私自身を救ってくれることがあります。幼い頃から歌うことがすごく好きで、歌っていると心に羽が生えて解放されるような気持ちになっていました。“歌うこと”を意識し始めたのは歌手として活動するようになってからですが、うまく言葉で伝えられないような想いも、歌にすること、音にすることで、相手の心に響き、届けられるということは、子どものときから感じていたと思います。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

これまでたくさんの演奏家と出会い、皆さんそれぞれが音で遊ぶ魅力的な方々だと感じています。その中で特に音で遊んでいるなぁと思うのは、デビュー前から仲良くさせていただいている大江千里さんです。常にピアノがそばにあるような方で、最初に書いてくれた曲『悲しいボーイフレンド』では、千里さんにピアノを弾いていただきながらメロディを覚え、一緒に音を作りあげていった思い出があります。出会った頃はポップス、現在はジャズの世界で活躍されている千里さんですが、どんなジャンルでも音を遊んで楽曲に向き合っていると思います。
私自身も“音を遊ぶ人”といっていただけることもありますが、自分では“ヴォーカリスト”という意識が強いです。常に考えていることは、言葉や声を届けるということ。ただ、その中で言葉や歌詞の世界で遊んでみる、ということはしますね。思わず“ふふっ”と笑ってしまうようなユーモア、遊び心は持っていたいのです。これは作品を作るときの原動力にもなっています。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

思いもよらない出会いが待っているところでしょうか。自分がまだ訪れたことのない場所にも私の歌が届き、聴いてくださった方からラジオなどへお手紙をいただくことがあります。そのような新しい出会いが、次のコンサートや作品作りのモチベーションになっています。また、コンサートでいただけるお客様からの拍手や歓声、コールアンドレスポンスも大きな喜びです。皆さんの熱量を感じながら歌わせていただき、それに対してまた盛り上がってくださる……という、“想いのキャッチボール”ができるのは本当に幸せなことですね。それを心の栄養にしながら、私は38年間活動を続けてきました。歌を聴きたいといってくださるファンとの時間は、私にとって最高の財産です。

渡辺美里〔わたなべ・みさと〕
数多くのヒット曲と代表曲を持つ、名実ともに日本を代表する女性ヴォーカリスト。1985年にデビューし、翌年『My Revolution』がチャート1位となり、同年8月、女性ソロシンガーとして日本初となるスタジアム公演を成功させる。以降20年連続公演という前人未到の記録も達成。2006年からは、毎年「美里祭り」と題してさまざまな都市でLIVEを開催。さらにラジオのパーソナリティー、ナレーション、ミュージカルなど幅広い分野で活躍し続けている。
オフィシャルサイト

photo/ 渡辺美里プレミアムツアー「Good Time ’22〜’23」最終日より(2023年2月4日 日本武道館)

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:富貴晴美さん「“音で遊ぶ人”たちに囲まれたおかげで型にはまることのない音作りができているのです」

5060views

スパークス

音楽ライターの眼

ベテランなのに鮮度の高いロック・バンド、スパークスの魅力に迫る

13106views

楽器探訪 Anothertake

バンドメンバーになった気分でアンサンブルを楽しめるクラビノーバ「CVP-800シリーズ」

7467views

楽器上達の心強い味方「サイレント™シリーズ」&「サイレントブラス™」

楽器のあれこれQ&A

楽器上達の心強い味方「サイレント™シリーズ」&「サイレントブラス™」

39158views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

4770views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

8445views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

12046views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11020views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10360views

AOSABA

われら音遊人

われら音遊人:大所帯で人も音も自由、そこが面白い!

11818views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

クラス分けもまた楽しみ、レッスン通いスタート

4940views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30896views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

17541views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

15186views

音楽ライターの眼

KISSが2019年12月に来日。最高最後のロックンロール・パーティーが始まる

10862views

オトノ仕事人

最適な音響システムを提案し、理想的な音空間を創る/音響施工プロジェクト・リーダーの仕事

2161views

われら音遊人:「非日常」の充実感が 活動の原動力!

われら音遊人

われら音遊人:「非日常」の充実感が活動の原動力!

8222views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカで音楽好きの子どもを育てる

14397views

メニコン シアターAoi

ホール自慢を聞きましょう

五感で“みる”ことの素晴らしさを多くの方と共感したい/メニコン シアターAoi

3111views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

4689views

楽器のあれこれQ&A

ウクレレを始めてみたい!初心者が知りたいあれこれ5つ

5167views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7056views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26123views