今月の音遊人
今月の音遊人:小曽根真さん「音楽は世界共通語。生きる喜びを人とシェアできるのが音楽の素晴らしさ」
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アルバム冒頭の〈ニュー・シネマ・パラダイス〉をはじめ、〈マイ・フェイヴァリット・シングス〉、〈星に願いを〉といった定番曲での緻密なアレンジ。新たなスタンダード・ソングといえるノラ・ジョーンズの〈ドント・ノウ・ホワイ〉やアデル〈サムワン・ライク・ユー〉の瑞々しさ。そしてゲストに沖仁を迎え、熾烈なギターバトルを繰り広げながら熱く駆け抜けるマドンナ〈ラ・イスラ・ボニータ~美しき島〉とオリジナルの〈レヴァンタール〉。そして遂にスティール弦のギターを用いてその特性を最大限に活かしたビートルズの〈ブラックバード〉とエリック・クラプトンの〈ワンダフル・トゥナイト〉。同じくスティール弦を使ったオリジナルの〈チューン〉ではスラップ奏法も披露。とにかく、伝わってくるのは風通しの良さ。そして開放感だ。
クラシックをベースにしつつも、ロックやポップスへの愛情を隠さない新世代ギタリスト・木村大のニュー・アルバム『ONE』。昨年発表した『HERO』に続く、自身が慣れ親しんだ楽曲を収めたトリビュート・アルバムだ。 「確かに、この2枚のアルバムは対になっているのですが、『HERO』が自分の内面に向かったストイックな作品だとしたら、『ONE』は、この1年、コンサートホールからライブハウスまで、さまざまな場所で演奏して得たものや、改めて確認できた自分のギターへの愛情をアウトプットした、オープンな作品なんです」
そう、このアルバムのコンセプトは“愛”。ただ、正面切って愛と言うのも「くすぐったい感じ」がするし、ひとくちに愛といってもいろいろな形がある。そして木村にはギターがある。 「誇り高きもの、情熱的なもの、そして物への愛。いろんな愛の形を、音で表現することを心がけました。楽曲からもらう愛もある。それらをアレンジし、ギターの音色を変えて表現することで幅ができて、そのぶんリスナーと共有できるものも多くなると思うんですよね、曲そのものが持つ時代感も含めて」
『HERO』がクラシックギター1本で弾き切ったのに対し、『ONE』ではスティール弦のギターも使用して表現の幅を広げた。 「曲のアレンジ、構成にはすべてクラシックギターを使いました。再構成するにも原曲の世界感を崩さないように気を配りました。その結果、スティール弦も使おうと思ったんです。〈ワンダフル・トゥナイト〉はチョーキングしたいし、〈ブラックバード〉や〈サムワン・ライク・ユー〉に求められるサスティーンの効いた感じはスティール弦のほうがより出ますし」
8月からはこのアルバムを引っさげたツアーもスタート。 「ライブハウスの、お客さんの反応がダイレクトに返ってくる感じがいいんですよね。ガッツが湧いてくる感じがします(笑)」 ギターに限らず、幅広い音楽ファンを惹きつける魅力的なアルバム『ONE』を手にしたら、ぜひ『HERO』も聴いてほしい。そして、ライブでは、ふたつのアルバムの対比も楽しみたい。
『ONE』木村大
発売元:キングレコード
価格:3,000円(税抜)
発売日:2014年5月21日