今月の音遊人
今月の音遊人:岡本真夜さん「親や友達に言えない思いも、ピアノに聴いてもらっていました」
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古典や伝統をリスペクトしながら新たな可能性を見つけたい/LEO 箏リサイタル「SHIFT~新しい伝統~」
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2024.7.29
箏奏者として邦楽の世界だけにとどまらず、デビュー以来さまざまな音楽家やミュージシャンとの共演を重ね、その活動の幅を広げ続けているLEO。彼の“今”と世界観を堪能できるコンサートに向けた想いを聞いた。
気鋭の若手箏奏者であるLEOが箏と出会ったのは9歳のときだったという。「初めて弾いた楽器が箏だった」という彼は、当時通っていたインターナショナルスクールの授業で触れたその音色に魅了され、音楽教師であり箏曲家のカーティス・パターソン氏の指導を受けるようになる。その後、箏曲家・沢井一恵氏に師事。16歳で「くまもと全国邦楽コンクール」の最優秀賞・文部科学大臣賞を史上最年少で受賞すると一躍脚光を浴び、2017年に19歳でメジャーデビューを果たす。以降、アルバム6作品を発表しながら、数多くの指揮者やオーケストラとの共演を重ね、『情熱大陸』や『題名のない音楽会』といったメディアにも出演。伝統的な邦楽分野での活動と並行して、さまざまなジャンルのミュージシャンとのコラボレーションも積極的に行い、世代を超えた新しいファンを着実に増やしている。
「もしも箏と出会っていなくても、ほかの楽器でプロを目指していた可能性があるくらい、とにかく“音楽”が好きなんです。ジャンルは関係ありません。師事していた沢井箏曲院・沢井忠夫先生の筝曲はもちろん、坂本龍一さんにも影響を受けていますし、作曲家でピアニストのティグラン・ハマシアンには圧倒されました」
中学・高校時代には友人とテイラー・スウィフトやブルーノ・マーズといった洋楽のカバーバンドを組む一方でクラシックにも傾倒し、ショスタコーヴィチやバルトークを熱心に聴いていたという。「歌詞のある音楽や現代音楽、EDMも好きだし、メタルやロックも聴きます」と目を輝かせながら“大好きな音楽”を次々に挙げてくれる。この壁のないボーダーレスな姿勢が、箏奏者として初となるブルーノート東京でのライブ開催や、大規模な夏フェスSUMMER SONICへの出演といった軽やかなフットワークの基盤にもなっているのだろう。
「もっと経験を積んでいけば“LEOはこうだ”という軸も確立されるとは思うんですが、現時点の自分にとってそれをすることは活動や制作にリミッターをかけることにもつながりかねないので時期尚早かなと。年齢的にもまだ20代ですし、今はフレキシブルにいろいろと、興味のあることは全部試してみよう!という気持ちでいます」
そんな精力的な活動を展開するLEOのコンサートツアーが2024年9月14日(土)の東京・三鷹市芸術文化センター風のホールを皮切りに、全国4か所で開催される。これまでにも共演を重ね、今や盟友とも呼べる伊藤ハルトシ(チェロ)とロー磨秀(ピアノ)のふたりを迎えたトリオ編成だ。
「おふたりともクラシックの出身ですが、多種多様なジャンルに精通されていて意見交換もスムーズだし、お互いの魅力をどう引き出すのがベストなのかがわかっている演奏者同士ですから、今の僕がやりたいことを余すことなく自由に表現できるツアーになりそうです」
箏とチェロとピアノというトリオ編成での演奏には数年前から取り組んでおり、コンサートでのよりよい聴かせ方や見せ方にも手ごたえを感じ始めている。
「豊かな持続音が出せるチェロと、低音を支えつつハーモニーを補強するピアノに入っていただくことで、箏だけでは足りない部分がすべて補えるんです。この編成で、ほとんどの音楽的要素を網羅できると思います。僕たち3人だからこそのバランス、絶妙のアンサンブルを楽しんでいただきたいですね」
ツアータイトルは「SHIFT~新しい伝統~」。SHIFTとは変化や転換を指す言葉だが、これはLEO自身が名付けたという。
「伝統を新たに生み出すというよりは、“伝統的なものを新しい視点で見せる”というイメージです。現代で活動する伝統楽器奏者のひとりとして、時代に合わせて伝統音楽が受け入れられていく筋道をきちんと作っていくことも大切だと考えるようになって……。たとえばクラシックの世界も、演奏する曲は変わらずとも、それをどう聴いてもらうかという部分で新しいことに挑戦していますよね。箏をはじめとする邦楽や伝統音楽も同じで、今の時代の人々に聴き続けてもらえるようにチャレンジしていきたい。古典や伝統をリスペクトしながら新しい見せ方を提案して可能性を見つけたいと、このタイトルを付けました」
この言葉を受けるように、演奏プログラムには日本古謡『さくらさくら』のメロディが印象的な半田弘作曲による『さくら替手五段』やLEOのオリジナル曲『Deep Blue』、坂本龍一の代表曲『戦場のメリークリスマス』などが予定されている。また、これらのほかに民謡などの邦楽要素も新たに取り入れたいと考えているとのこと。
「まだ準備段階ですが、皆さんの耳になじんだ曲も多いはずですし、箏の繊細な音色の響きを楽しめる古典的な要素にジャズ的な即興演奏なども交えながら、初めて箏の演奏を聴くという方にもリラックスして楽しんでいただける内容にしたいと思っています」
演奏曲の編曲やコンサート構成はLEO自身の手によるもの。観客の笑顔を想像しながら、初日までブラッシュアップを続ける。
「変拍子が大好きなんです。箏は転調しにくい楽器なので、自分で編曲する場合はリズムで変化をつけることが手法のひとつになりました。だから、ハルトシさんと磨秀さんにはちょっと苦労をかけるかもしれない」
そう朗らかに笑った。現代を生きる箏奏者として、そしてひとりのアーティストとして、今のLEOの世界観を感じられるツアーが楽しみだ。
2024年
9月14日(土)東京:三鷹市芸術文化センター風のホール
9月16日(月・祝)北海道:函館市芸術ホール ハーモニー五稜郭
9月28日(土)埼玉:RaiBoC Hall(さいたま市民会館おおみや)
9月29日(日)静岡:袋井市月見の里学遊館
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文/ 高内優
photo/ 阿部雄介
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