Web音遊人(みゅーじん)

石若駿

今月の音遊人:石若駿さん「音楽っていうのは、人の考えとか行動の表れみたいなものだと思う」

2022年に30歳を迎えたジャズ・ドラマーの石若駿さん。ジャズのみならず、ポップス・アーティストのレコーディングやライブのサポートをしたり、アート作品とのコラボレーションを繰り広げたりと、ジャンルを超えた活動を展開している。その自由な活動の礎となる音楽性についてお聞きしました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

時期によって全然違うんですけど、例えば中学校3年生の藝高(東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校)受験のころにめちゃめちゃ聴いてたのは、ヴァレリー・ゲルギエフがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で指揮したチャイコフスキーの『交響曲第5番』。朝起きたら聴いて、移動中に聴いて、寝る前にも聴いてみたいなのが続いてましたね。
ここ最近でいうと、コロナ禍のロックダウン中には、ガブリエル・フォーレの『ピアノ三重奏』をよく聴きました。普通はピアノ、チェロ、バイオリンというトリオなのですが、バイオリンではなくクラリネットを吹いている録音を聴いてました。
ほかには、よく一緒に演奏しているアーロン・チューライというピアニストが2009年に出したアルバム『RANU』の1曲目『You Go To My Head』ですね。ジャズのスタンダードなんですけど、彼のボイシングとベースのルート音の絡みが美しすぎて、気に入ってずーっとリピートしてました。
あとはライアン・スコットっていうギタリストでシンガーソングライターのアルバム『Smoke and Licorice』の1曲目『Harmony』も大学生時代にめちゃめちゃ聴いてました。
自分はたくさん音楽聴くほうだと思うんですけど、いま挙げたのは何度聴いてても飽きない、ずっと聴ける作品たちですね。音の重なりとか響き合いとか、共感するポイントが随所にあるから、こんなに何度も聴けるのかなと思います。

Q2.石若さんにとって「音」や「音楽」とは?

音って空気が振動して聴こえるもの。だから空気が振動してるのがわかる音が好きです。例えばすごく広いホールで、重力にまかせた感じでスティックをポンって落して、響く音の先を追うのを意識するんです。そういうときに楽器が自然に鳴っているのがわかって、その場所の“空気が振動してるな”って感じますね。
僕にとっての音楽っていうのは、人の考えとか行動の表れみたいなものだと思うんです。人間として経験してきたことの表れみたいな……。だから“演奏するその本人”が見える音楽が好きですね。音楽を聴いて“この人はどういう人なんだろう?”と想像したり、実際にその人と会って“こういう人だから、あの音が出たんだ”と答え合わせしたりするのが好きですね。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

聴いたことのない、出したことのない音を目指してる人。宝さがしをずっとしてる人のようなイメージですね。結構僕の周りはそういう人が多いかなと思っていて、そういう場にいるのはやっぱり楽しいですよ。
もちろん僕自身もそういう心持ちでやっています。実践的なことで言うと、お客さんの前で演奏してる最中にパッとアイディアが閃いたら、それを音楽の流れに則って、且つリアルタイムに絶対やるみたいなのはあるかもしれないです。“ここでいつもより強く叩いたら、みんなどんな反応するんだろう”とか、“聴こえないくらいドラムの音量を下げたら、どんな音楽になるんだろう”とか、そういうことはやっていますね。
そういうことを許容してくれる人たちと一緒に演奏しているので。“音で遊ぶ人”たちが鳴らす音楽の中に僕はいつもいるんだろうなと思います。

石若駿〔いしわか・しゅん〕
1992年北海道生まれ。幼少期よりクラシック音楽に親しみ、2007年には金澤英明、石井彰とトリオを結成。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校打楽器専攻を経て、同大学に入学し、卒業時にはアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞。Answer to Remember、CLNUP4、SMTK、Songbook Trioに所属し、くるり、CRCK/LCKS、Kid Fresino、君島大空、Millennium Paradeなど多数の作品にも参加。海外アーティストとの共演も多く、ソロパフォーマンスも注目されており、活動は多岐に渡る。
オフィシャルサイト

オフィシャルFacebook オフィシャルTwitter オフィシャルInstagram

photo/ kana tarumi

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人:姿月あさとさん「自分が救われたり癒やされたりするのは、やはり音楽の力だと思います」

今月の音遊人

今月の音遊人:姿月あさとさん「自分が救われたり癒やされたりするのは、やはり音楽の力だと思います」

12934views

音楽ライターの眼

連載10[多様性とジャズ]1960年代の公民権運動で結ばれたジャズと多様性の強い絆

2413views

REVSTAR

楽器探訪 Anothertake

いまの時代に鳴るギターを目指し、音もデザインも進化したエレキギターREVSTAR

6103views

楽器のあれこれQ&A

いつも清潔にしておきたい!ピアニカのお手入れ、お掃除方法

285191views

世界各地で活躍するギタリスト朴葵姫がフルートのレッスンを体験!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】世界各地で活躍するギタリスト朴葵姫がフルートのレッスンを体験!

7604views

ステージマネージャーの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

ステージマネージャーひと筋に、楽員とともにハーモニーを奏で続ける/オーケストラのステージマネージャーの仕事(後編)

17416views

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

ホール自慢を聞きましょう

おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

7524views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5352views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14709views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

1638views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5403views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9904views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11542views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22341views

音楽ライターの眼

TOKYO BLUES CARNIVAL 2022開催。ブルースの楽しさと新時代の幕開け

3965views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

8417views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

5699views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

23405views

アクトシティ浜松 中ホール

ホール自慢を聞きましょう

生活の中に音楽がある町、浜松市民の音楽拠点となる音楽ホール/アクトシティ浜松 中ホール

14290views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5440views

大人のピアニカ

楽器のあれこれQ&A

「大人のピアニカ」の“大人”な特徴を教えて!

2915views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

13675views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29679views