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本場ニューヨークのジャズ・サウンドが銀座で熱く響く「ヤマハ銀座サマージャズライブ~Seiko Summer Jazz Camp All Star~」
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2024.10.7
tagged: ヤマハ銀座サマージャズライブ, Seiko Summer Jazz, Seiko Summer Jazz Camp ALL STARS
ジャズの本場ニューヨークの第一線で活躍するプレイヤーが集結した“Seiko Summer Jazz Camp ALL STARS”によるヤマハ銀座サマージャズライブが、2024年8月18日にヤマハ銀座スタジオにて開催。さまざま国の人で賑わう夏の銀座を、ゆたかな旋律で彩ったライブの模様をお届けする。
ライブは1曲目、ドラムのクインシー・デイヴィス作『Blues Unconscious』から大盛り上がり。力強いドラムのイントロに導かれるように情熱的なテーマが鳴らされ、続いて各自のカラーが存分に発揮されたソロまわしが続く。その全力投球ぶりに、客席からも熱い声援や拍手がステージへと注がれる。会場のヤマハ銀座スタジオは地下2階だが、そこまで真夏の太陽が降り注いでいるのかと思えるくらい、場内はホットな空気で満たされたのだ。
このSeiko Summer Jazz Camp ALL STARSのメンバーは、2016年から毎年開催されている“Seiko Summer Jazz Camp”で講師を務めるミュージシャンたち。プロを目指す日本の若手たちに演奏から作曲、編曲、理論まで指導してくれている。そんなインテリジェンスな側面から一転、ミュージシャンとしてのパッションを炸裂させられるこのライブを、ジャズファンはもちろん、彼ら自身も楽しみにしているようだ。
2曲目『Indigenous』はテナーサックスのディエゴ・リヴェラ作の作品で、ゆったりとしたリズムとマイナー調で奏でられる旋律が味わい深く、ナイトクラブのようなムーディーな空気感が会場に生み出している。それでいて各自ソロになると雄弁で、作者ディエゴのテナーサックスはもちろん、中村恭士のベースや大林武司のピアノも巧みに歌い上げる。静と動のバランス感が絶妙で、実にスリリングだ。
3曲目はデューク・エリントンのスタンダード『In A Mellow Tone』を披露。スモーキーな低音からパンチのある高音まで自在に使いこなすシェネル・ジョンズのボーカルと、ときに片手でトランペットを吹きながら、明るく遊び心のある歌を披露するベニー・ベナックⅢのデュオが実に楽しげ。前の席に座っている10代とおぼしき若者たちも楽しそうに聴いていた。
続く4曲目もスタンダードの『Will You Still Be Mine』。こちらはヨタム・シルバースタインのギターがメインに据えられ、クリアトーンで鳴らされる清涼感たっぷりのギターと、それに呼応するようにシャープなタッチで鳴らされるピアノ、ベース、ドラムのアンサンブルが実に心地よい。この夏の異常な熱さも、この演奏の間は忘れることができた。
このバンドのリーダーで、トロンボーンのマイケル・ディーズ作『Grand Seiko』では、淡々と打ち鳴らされるドラムをバックに、三管の緩急自在なソロまわしや、ギターやベースのグルーヴィーなソロが楽曲に奥行きを生み、タイトルから連想される時の流れ、歴史の積み重ねを感じさせてくれていた。
休憩を挟んでの2部は、大林作の『New Century』でスタート。クールなタッチでスウィングする曲だが、洗練されたコードを鳴らすピアノしかり、抑え気味ながら軽快にブロウしてみせるテナーサックスしかり、ほかのどの曲とも違うグルーヴで奏でられている。そうやって曲ごとにしっかり個性を与えることで、ライブ全体にメリハリを生み出していく手腕はさすがである。
続く『Yasugaloo』は中村の作品で、濃密なベースのソロでの幕開けから一転、メンバーが加わってからの演奏が実にダイナミック。ダンサンブルなリズムのせいもあって、自然と体が揺れてしまう。
ジャズのパワフルな面を楽しませてくれたあとは、スイートな世界へと突入。リチャード・ロジャーズの隠れた名曲『The Sweetest Sounds』は、しっとりとしたジョンズのボーカルとミュートしたトランペットの渇いた響きが、なんともいえない哀愁を会場のすみずみまで満たしていた。
ビング・クロスビーやナット・キング・コールの名演で知られる『Stardust』では、ジョンズの語りかけるような歌声と、シングルノートとコード弾きを巧みに織り交ぜたシルバースタインのギターが、会話のように穏やかに音を重ね合っていく。
落ち着いた空気が会場を包むなか、マイケルが客席に向かって“今日はまだ速い曲を演奏してないけど、聴きたい?”と問いかける。当然のごとく客席からは期待に満ちた拍手がおくられる。それに応えてメンバーはパッ!と鮮烈な一音を吹き、“マタネ!”と言い残してステージを去ろうとしたのだ。
そんなジョークを挟みつつ、あらためて演奏された『Fast Train』は、確かにこの夜で一番にスピーディーだった。押し迫るビートのうえで次々と熱いソロが繰り出され、途中でスローになったかと思えばふたたび加速と、予想もつかないストーリーが展開。もちろんただ速いだけでなく、豊潤なメロディも次々飛び出すのだから、興奮しないわけがない。
圧巻のプレイに客席から盛大な拍手が送られ、それを背にメンバーはステージを去るが、鳴り止まぬ拍手でふたたび姿をみせたオールスターズ。最後に選ばれた曲は、このヤマハ銀座サマージャズライブのために生まれ、過去のライブでも演奏されてきたマイケル作の『Seiko Time』。4ビートのマイナー・コードだが演奏は力強く、各ソロも力を出し切るようにエネルギッシュに放たれる。ジョンズの合図で観客も“Seiko Time!”とコールする場面もあり、会場が一体となってジャズを満喫。こうして会場を訪れたすべての人の記憶に、酷暑にも負けないホットなひとときが刻まれた。
文/ 飯島健一
photo/ 宮地たか子
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