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グランドピアノの演奏体験を全身で感じられる電子ピアノ── クラビノーバ「CLP-800シリーズ」
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2024.9.26
tagged: 楽器探訪, クラビノーバ, CLP-800シリーズ
鍵盤やペダルのタッチ、それによる音のニュアンスの変化、そしてピアノを目の前にしたときのたたずまい。
新たなクラビノーバ「CLP-800シリーズ」はグランドピアノの繊細な演奏をこれまで以上に体感できるほどの進化を遂げた。
クラビノーバ CLPシリーズとしては4年ぶりのリニューアルとなる「CLP-800シリーズ」が登場。グランドピアノさながらの演奏体験を目指してどのような進化を遂げたのか、商品企画担当の大西健太さんに話を聞いた。
「グランドピアノの上質な体験を、電子ピアノを通して多くのご家庭に届けたい。では、よりグランドピアノに近づけるにはどうしたらいいか?そもそもグランドピアノらしさとは何か? といった根本的なところからチーム内で意見交換をし、“奏者が意図した表現に応えて多彩で魅力的な音色を奏でられる”“空間を上質な音の響きで満たす”“楽器と向き合ったときにグランドピアノを演奏するのと同じ気持ちで没頭できる”という大きな3つのポイントにまとめました。そのうえで、これらをかなえるにはどのような技術が必要かを、音源、ソフトウェア、鍵盤、デザインなど各セクションの担当者が一緒になって考えていったという流れです」
その結果、よりグランドピアノらしさを感じられる「CLP-800シリーズ」が生まれた。具体的にはどのような部分が新しくなったのだろうか。
「まず鍵盤に関しては、これまで開発されてきた鍵盤をベースに、よりコントロール性を高めていきました。グランドピアノは鍵盤を押すと内部のアクションが動き、ハンマーが弦に当たって音が鳴るわけですが、ピアニストは鍵盤を押した瞬間からハンマーが弦に当たるまで、この一連の動きをイメージしながら、意思を込め続けることでタッチに変化をつけています。このとき指先に感じる荷重の感覚と、返ってくる音がピアニストの意図通りになっていることが大切。鍵盤機構と音源を細かく調整し、グランドピアノのようなタッチと音色変化を再現しています」
ペダルに関しても、踏んだときの荷重をリアルに感じられるグランドタッチ™ペダルが採用されている。「ピアニストはペダルをどれだけ踏み込むかを細かく調整して響きの広がりをコントロールしています。このペダルはグランドピアノのペダルのように、踏み込んだときに重く、離すときに軽く感じるように物理的な工夫を施すことで、ハーフペダルでの細かい調整がしやすくなりました」
この「物理的な工夫」に関しては、さらに興味深い話も。
「クラビノーバは電子ピアノではありますが、このように物理的な工夫も数多く施されています。そしてここがヤマハならではの考え方なのですが、グランドピアノの演奏体験を再現するにあたり、必ずしもグランドピアノの構造をそのまま真似して持ってくることだけが正解ではないのです。柔軟な発想で、グランドピアノの体験を電子ピアノで実現するために最適な方法を生み出すチャレンジを続けています」
いっぽうで、デジタルの部分での技術も飛躍的に向上した。特筆すべきは新開発の音源チップだ。
「楽器の音を録音したサンプリング音源を、鍵盤を弾く強さに応じて再生するというのが電子ピアノの基本的な仕組みなのですが、電子ピアノの表現が単調であると言われる理由もそこにありました。グランドピアノでは、同じ大きさの音を弾くにも、鍵盤を押し込むように弾くのと、軽やかに脱力して弾くのとでは音色が違いますよね。また、たとえばリストの『ため息』のように、速いパッセージのなかにメロディが混ざっているような曲を演奏する場合、はっきり出す音と脇役に入る音を弾き分けることができます。こうした奏法による音色の違いを再現するのがグランド・エクスプレッション・モデリングという技術ですが、今回新たに開発された音源チップによりシミュレーションの精度が向上し、これまで以上に繊細で幅広い表現を生み出せるようになりました」
開発にあたってはプロのピアニストから意見をもらったほか、グランドピアノの構造を知り尽くしたプロフェッショナルたちの経験が生かされているとのこと。
「単に性能の良い、すなわち計算処理能力の高い音源チップが入っているから良い音が鳴らせるわけではなく、グランドピアノの表現を再現するためにどういう計算処理をするかが重要なのです」
グランドピアノのような響きを再現する音響システムにおいては、ヤマハのオーディオ機器のノウハウも使われている。
「電子ピアノはスピーカーから音を出しますが、スピーカーには音を一方向にまっすぐ飛ばす性質があります。それに対しグランドピアノは、大きな響板や筐体全体で音を増幅し、空間を響かせる楽器。その響きを再現するため『CLP-800シリーズ』では、スピーカーから出る音を適度に拡散させながら空間に放射するディフューザーやバイディレクショナルホーンという音響部品を開発し搭載することで、楽器全体から音が鳴るグランドピアノのような音場を作っています」
そしてデザインもグランドピアノらしさを体現する大きな要素である。
「このサイズのピアノを一から作るなら、どんな形がいいのだろう? というところからデザイナーと考えていきました。椅子に座ったとき、目の前にある楽器がグランドピアノのように感じる要素とは何か。ピアノを演奏するときの気持ちを第一にして考えました」
最後に、「CLP-800シリーズ」をどのような人に届けたいかを尋ねた。
「ピアノの大きな魅力のひとつに、演奏の上達に合わせて次々と新しい表現を発見していけることがありますが、『CLP-800シリーズ』はそんなピアノとしての奥深い魅力を持った楽器に仕上げることができました。
これからピアノ演奏を始める方にも上級者の方にも、深く長く演奏を楽しんでほしいです」
「Digital Never Felt So Grand」というフレーズのもと、グランドピアノに最も近い家庭用電子ピアノを目指して開発されたクラビノーバの最新シリーズ。新開発の音源チップや音響システム、刷新されたデザインなどにより、奏者がピアノの前に座った瞬間から、演奏し終えて立ち上がるまで、グランドピアノらしい演奏体験が無意識的かつ自然に持続するよう考えられている。
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文/ 原典子
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