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自分の根源にある楽曲「バッハの無伴奏ソナタ&パルティータ」で初アルバムをリリース、全曲演奏会も開催/山根一仁インタビュー
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2024.10.15
バイオリニストの山根一仁は、中学校3年在学中の2010年に第79回日本音楽コンクール第1位獲得という快挙を果たし、全部門を通して最も印象的な演奏・作品に贈られる増沢賞など、複数の特別賞も受賞。以来、圧倒的な存在感を放ちながら活動の幅を広げてきた。ドイツ国立ミュンヘン音楽演劇大学での研鑽を経て、2024年9月に初のアルバム『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲集」をリリースし、その全曲演奏会を秋に開催する山根に、バッハ作品への想いなどを聞いた。
「バッハの無伴奏ソナタとパルティータは、バイオリニストが必ずとおる道であり、私自身も小学生の頃から演奏している特別な作品です。自分の根源にある楽曲といってもいいかもしれません。折に触れて演奏をしてきましたが、そのたびに自分の中の変化に気がつきます。さまざまな楽曲に取り組んできた中でも、これほど楽曲と自分の関係性が変化する作品はないかもしれません」
これまでの充実した演奏家としてのキャリアに鑑みると、このタイミングでのリリースは少し意外に思える。
「以前からお話はいただいていたのですが、録音よりも生演奏でお客様に音楽をお届けしたい、という想いがずっとあったので、なかなか踏み出せずにいました。ただ、ドイツ留学やさまざまな演奏会での経験を経て、“いま”の自分を記録するのもいいかもしれないと思い、レコーディングに挑戦しました。初のアルバムでバッハを録音できたことは本当に幸せです」
バイオリンのための無伴奏作品は多くの作曲家によって書かれているが、やはりバッハのものは特別だという。
「子どもの頃バッハの無伴奏を聴いてから、ずっと大好きな作品であり続けていますし、あのときに感じた憧れはいまも色褪せていません。今回のアルバムが誰かの心に届くようなものになっていたら、これ以上にうれしいことはありません」
山根は2022年から2023年にかけて「J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ全曲演奏会」(全2回)をトッパンホールで行っており、大きな反響を呼んだ。2024年11月4日(月・休)には、同ホールでの全曲一挙演奏に臨む。
「どんな演奏家でも本番の中で新しいことに挑戦したり、変化したりすると思うのですが、自分の場合、ふだん練習室で弾いているときでも常に新しいものが生まれていく感覚があります。あまりにも変化していくことが多いので振り回されてしまうこともあるのですが、それが自分の演奏の好きなところでもあります。アルバムとはまた違った演奏をお聴かせできると思います」
バッハに対し、深い尊敬と愛情を持っている山根は、その作品に“自然”を感じるという。
「以前はもっと壮大な宇宙的なもの、あるいは巨大な建造物のようなイメージを持っていました。もちろん、いまでもバッハは偉大な存在であり、その作品も圧倒的なものだという意識はあるのですが、もう少し柔軟に捉えられるようになってきました。もっと人間的なものや、私たちを取り巻く日常や美しい自然の風景など……そういうイメージもあるのではないか、と気がついたのです。そうしたら、もっと作品が自分に近づいてきたような感覚も芽生えましたし、自分の演奏の答えが増えました」
こうした変化には、ドイツ留学も関係しているようだ。
「ミュンヘンで過ごし、日本とは違う風景や街並み、文化などに触れられたことや、師事しているクリストフ・ポッペン先生からいただいた言葉などの影響は大きいですね。また、ドイツ語に触れて生活したことで、楽曲と言葉の関連性についても考える時間が増えました。ドイツ語のアクセントや語尾の切り方などにも興味を持つことによって、自分の中の楽曲解釈の引き出しも増えていったように感じます」
無伴奏のほかに、数多くのアーティストとの共演も重ねてきた山根だが、それぞれの演奏にどのような魅力を感じているのだろうか。
「アンサンブルは、特に人数が多い編成ですと、いろいろな人の解釈から生まれる表現が混ざり合う、というのが素敵ですよね。そこから感銘を受けること、学ぶことがとても多いです。一方で無伴奏は、自分が演奏家であるのはもちろん、指揮者としての役割も担い、また魂の部分まで責任を負う必要があります。自由である分、難しいこともたくさんありますが、そこがまた魅力です」
自身にとって根源であり、特別なものでもあるバッハの無伴奏ソナタ&パルティータ。現時点の集大成ともいえるその演奏を、山根の“いま”を感じながら堪能してほしい。
発売元:キングレコード
発売日:2024年9月25日
料金(税込):5,500円
詳細はこちら
日時:2024年11月4日(月・休)14:00 開演(13:30 開場)
会場:トッパンホール(東京都文京区)
料金(全席指定・税込): 6,000円
詳細はこちら
文/ 長井進之介
photo/ 坂本ようこ
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tagged: バイオリン, インタビュー, バッハ, 山根一仁
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