音楽経験ゼロの状態からわずか1年でTikTokで楽曲をバイラルさせ、2021年12月にはメジャーデビューを果たしたimase。2024年春の全国ツアーは即完売、アジアツアーでもファンを熱狂させ、11月のホールツアーも早々にソールドアウトするなど絶大な人気を誇る。
今、もっとも勢いがある新世代アーティストは、2024年下半期だけですでに7曲のデジタルシングルをリリース。それらに込めた思いやこだわり、そして現在のimaseをつくったものとは？

実家の二段ベッドから世界へ

「音楽経験0の素人がオリジナル曲作ってみた（dtm歴4ヶ月）」
2021年5月、TikTokにそう投稿し、初めてオリジナル曲を発表した。友人がギターを弾いているのを見て、自分も弾き語りをしたいと思ったのが音楽活動を始めたきっかけだ。
「SNSにショート尺の楽曲を投稿している方がたくさんいらっしゃって、短い曲なら自分にもできるかなと思い、つくってみたのが始まりです」
岐阜の実家でスタートした曲づくり。二段ベッドの下の段で制作して演奏し、今ではimaseの個性と魅力のひとつとなったファルセットで歌った。
「もともと自分の地声が好きじゃなかったというのもあるのですが、ショート尺のなかでも人の耳を引くものは何かと考えたんです。その声を好きだと言ってくださる方もいたので、うれしかったですね」
再生回数は瞬く間に億単位となり、その7か月後にはバイラルヒット曲でメジャーデビューを果たす。ひとつの転機となった作品は、2022年8月に発表した『NIGHT DANCER』。K-POPスターたちがダンス動画を次々に投稿し、韓国を中心に海外にまで活躍の場を広げることになった。
だが、決して浮足立っていたわけではない。アーティストとして生きていく覚悟を決めたのは、2023年3月に上京してからのことだ。
「実家で暮らしていて、地元の岐阜で仕事もしていて。それらを断って上京することで、これからは音楽で頑張っていこうという新たな気持ちになりました」

7曲それぞれに新しい試みを

imaseはまず、曲のジャンルを決めるコード進行やドラムビートをつくり、そこにメロディーを乗せ、最後に歌詞を考える。曲づくりで意識しているのは、メロディーのキャッチーさ。一度耳にするだけで聴き手の心に残り、覚えやすい楽曲にこだわる。
こうして約3年で制作した楽曲は、全世界SNS総再生回数100億回をゆうに超える。2024年5月にはそれら全19曲を収録した1st Album『凡才』をリリース。その後、11月現在にいたるまで7曲ものデジタルシングルを発表している。
多彩なジャンルを自在に操る持ち味がいかんなく発揮されたこれら7曲それぞれに、imaseは新しい挑戦を忍ばせた。
Netflixアニメ『君に届け 3RD SEASON』オープニング主題歌に起用された『エトセトラ』は、ドラマチックなメロディーやファルセットを駆使した歌声、転調を繰り返す進行で高校生たちの心の葛藤を描く。
「学生時代って、今思い返せば大したことがないような出来事でも大切だったりしますよね。そうした心情の動きを、歌詞と温かみのあるサウンドで表現することを意識しました。その表現のために、これまでにやったことがなかったアコギのサウンド感を取り入れました」
日産90周年記念ムービー「NISSAN LOVE STORY」主題歌の『メロドラマ』、Instagramの15秒ミュージックキャンペーンで独占先行配信され、現在JR東海の「EXカード」CMソングとなっている『メトロシティ』は、imase 同様にSNSで音楽活動を開始した音楽クリエーター、なとりとの待望のコライトとなった。レトロポップなサウンドと、シティポップをベースにした華やかなダンスナンバーという趣が異なる2曲だが、お互いがプロデュースし合うかのようにふたりの魅力が引き出されている。
ラコステ2024年秋冬の⽇本国内スニーカーキャンペーンソングとなった『蜃気楼』は、夏を感じる疾走感ある楽曲に仕上げた。
「新しい自分に出会い、前向きに頑張ろうというのがテーマで、それをサビの歌詞で表現しています。夏についてきちんと歌詞で歌った曲はなかったので、新しいチャレンジでした」
爽やかさ全開の楽曲があるかと思えば、狂気の世界も描き切る。映画『スマホを落としただけなのに ～最終章～ ファイナル ハッキング ゲーム』の主題歌として書き下ろした『Dried Flower』はダークなサウンド感を意識してつくられ、攻撃的でありながら儚さを宿す。imaseの新境地を見ることができる楽曲だ。

第103回高校サッカー選手権大会の応援歌としてつくられた『アウトライン』には、高校時代にサッカーに打ち込んだ自身の経験を重ねた。あのときピッチから見た景色、応援する人々……。タイトルの『アウトライン』には、サッカーのピッチ外側のラインだけでなく、自分のなかで絶対に負けることができない「境界線」、自分自身を形成する「輪郭」のアウトラインという意味が込められている。
「こういった形でまたサッカーに携わることができて、とてもうれしいです。プレイする方や応援する方の背中を少しでも押せるような、みんなの応援歌になればという気持ちで制作しました」
そして、2024年11月8日に配信が開始された最新作の『プリズム』は、テレビ東京 木ドラ24『チェイサーゲームW2 美しき天女たち』の主題歌。前2作の『チェイサーゲーム』『チェイサーゲームW パワハラ上司は私の元カノ』に続き、シリーズ3作目でも楽曲制作に携わることとなった。この楽曲は、アップテンポなメロディーとラブストーリーに寄り添う切ない歌詞が印象的だ。
「今回は、一度離れ離れになったカップルが再会を果たすという展開から新たなインスピレーションを得ました。原作の舞台である平成という時代が感じられるよう意識してつくった曲です。これも新しい試みです」
いろいろな角度からimaseを見ることができて、とても楽しい──。これらの楽曲を聴いた国内外のリスナーから届いた多くの声に、手応えを感じているという。
約4か月の間に7曲というリリースラッシュも驚愕だ。そのスピード感は、果たしてどこから生まれるのか。
「頑張りましたよ」と笑うimaseは、力みや気負いといったものをまったく感じさせない。本気だけれど、サラリとやってのけるのがimaseなのだろう。
「音楽に対する考え方は、ずっと変わっていません。でも、本当にいろいろな機会をいただけた3年間でした。以前はタイアップや新しいジャンルの曲をつくるときに不安感や恐怖心もありましたが、それが徐々に薄れて、自信を持ってより前向きに音楽を捉えられるようになってきました。これからも新しい変化をポジティブに受け止めて、さらにいろいろなチャレンジができればと思っています。最近は、昔聴いていたゲームの劇伴など、過去にいいと感じたものを掘り起こすのもおもしろいのかなと考えたりしています」
SNS時代を象徴するアーティストでもあり、時世の香りを纏うimase。この先も時流を捉えた音を自由自在に紡いでいくに違いない。
「でも、普遍性もとても大事だと考えているので、時代に左右されないような曲もつくりたいですね。そして、年を重ねてもちゃんと成長していけたらと思っています」

■2024年下半期デジタルリリースシングル

●『エトセトラ』

発売日：2024年8月2日（金）
Netflixアニメ『君に届け 3RD SEASON』オープニング主題歌

●なとり & imase『メロドラマ』

発売日：2024年8月30日（金）
日産90周年記念ムービー『NISSAN LOVE STORY』主題歌

●『蜃気楼』

発売日：2024年9月13日（金）
『ラコステ2024年秋冬 ⽇本国内スニーカーキャンペーン』ソング

●imase & なとり『メトロシティ』

発売日：2024年9月25日（水）
『15秒ミュージック powered by Instagramキャンペーン』ソング
JR東海「スマートEX」CMソング

●『Dried Flower』

発売日：2024年10月11日（金）
映画『スマホを落としただけなのに ～最終章～ ファイナル ハッキング ゲーム』主題歌

●『アウトライン』

発売日：2024年10月25日（金）
第103回全国高校サッカー選手権大会 応援歌

●『プリズム』

発売日：2024年11月8日（金）
テレビ東京 木ドラ24『チェイサーゲームW2 美しき天女たち』主題歌

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