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今月の音遊人:向谷実さん「音で遊ぶ人!?それ、まさしく僕でしょ!」
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語り継がれる名演&新録音をクラシックとポップスで。22年ぶりのベストアルバム『BEST OF BEST』/小原孝インタビュー
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2025.3.12
ジャンルを超えてピアノを自在に歌わせ、独自の音楽世界を創り上げている小原孝。デビュー35周年を記念し、22年ぶり2作目のベストアルバム『小原孝BEST OF BEST~デビュー35周年記念盤~』を2025年2月26日(水)にリリース。4月20日(日)には、東京文化会館 小ホールでアルバム収録曲を中心としたリサイタルを開催する。多彩な演奏活動を繰り広げてきた35年間を振り返りながら、新たな意欲を語っていただいた。
1990年に『ねこはとってもピアニスト』でCDデビュー。35年を経た54作目のアルバム『小原孝BEST OF BEST~デビュー35周年記念盤~』では、語り継がれる名演と新録音をクラシックとバラエティに分けた2枚組で、小原孝のピアノ・ワールドが全開する。
「実はデビューアルバムは、フランス・スペイン音楽を中心としたクラシックになるはずだったんです。スタジオで遊び弾きした『ねこふんじゃった』のアレンジを猫好きのプロデューサーが気に入って、これで行こう!と猫の写真を付けたオリジナルアルバムを作って、それが話題になりヒットして人生が変わってしまいました。2枚目は、由紀さおりさんと安田祥子さんの童謡コンサートの伴奏をしていたことから童謡・唱歌のピアノソロに編曲。そして3枚目が、当初予定していたクラシック作品。小原さんのアルバムはショップでどのコーナーに置いたらいいかわからないとよく言われましたが、それが今は“小原らしさ”になっています。
今作には、2008年から2023年にキングレコードから発売した14枚のアルバムから選んだ曲に、新録音を加えた42曲を収録しました。1枚1枚が常にベストだと思っているので、ベストアルバムは作らないようにしていたんですが、これは本当に現時点のベスト・オブ・ベスト。54作目ですから、レコーディングした曲はすでに1,000曲以上になるので、選ぶというより、外す作業が大変でした」
デビュー当時から、ジャンルを超えたトーク付きのコンサートというスタイルは変わっていない。
「当時そういうスタイルは珍しくて、ピアニストは喋るべきではないとか、クラシックとポピュラーを両方弾くのはおかしいとか言われたこともありました。国立音楽大学大学院でメシアンを研究して、『幼子イエスに注ぐ20の眼差し』を弾いてクロイツァー賞をいただいたのですが、修了してすぐに由紀さんと安田さんの伴奏の仕事が始まって、テレビに出たりしていたので目立ったのかな。あの人は何をやっているの?と、あまりよく思われていない時期もありました。僕の中では、小さい頃からクラシックも、ポピュラーや歌謡曲も両方大好きで、耳でコピーして自分でアレンジして弾いていたので、ジャンルを分けて考えたことはないんです」
そんなスタイルにぴったりのラジオ番組『弾き語りフォーユー』(NHK-FM)は27年目の長寿番組となり、今やライフワークとなっている。
「ピアノの前に座って、マイクがあって、“こんにちは、今日の1枚目のお葉書は……、それではお聴きください……”という弾きながらおしゃべりするスタイルで続けています。季節の曲など毎年同じ曲のリクエストをいただいても、お葉書の内容によって気持ちの持っていき方が変わるので同じ演奏にはなりません。幸せなリクエストと、亡くなった父が好きでしたというリクエストでは弾き方が変わりますよね。そういう意味で、リスナーの皆さんからいろいろな曲のリクエストをいただくことが勉強になっています」
アルバムのDISC1には、ショパン、リスト、ドビュッシーなどのよく知られたクラシックの名曲だけでなく、瀧廉太郎『憾(うらみ)』、成田為三『浜辺の歌変奏曲』、そして坂本龍一『戦場のメリークリスマス』も入っている。
「日本人作曲家のピアノ曲を伝えたいという想いがあるんです。廉太郎はピアノ曲を2曲書いていますが、この『憾』は、ベルリンに留学したのに、すぐに病気になって帰国し、23歳で亡くなる直前に書いた作品です。最後の音が最低音でゴーンと鳴り、まるで絶望の叫びのように感じる人が多いのですが、僕は、彼が日本人に西洋音楽への道を切り拓いてくれたことへの感謝を込めて、未来への希望の音として弾いています。『浜辺の歌変奏曲』は、僕が大学院在学中に国立音楽大学の図書館で楽譜が見つかって、お披露目の演奏会に抜擢されて初演しました。その後、秋田県に「浜辺の歌音楽館」ができて、成田為三ロボットが自動演奏ピアノで同曲を弾いているのですが、実は僕の演奏なんですよ。坂本さんの作品は、追悼の想いを込めて新しく録音し、DISC1の最後に置きました」
DISC2は、歌謡曲、演歌、童謡、ポップス、シャンソンなど、バラエティに富んだ楽曲が並び、アルバムを締め括るのは自作の『逢えてよかったね』。温かく優しい演奏と歌声が、心に沁みる。
「東日本大震災の心の復興支援曲として、多くの皆さんに愛される作品となり定番合唱曲やカラオケにも入りました。この曲の名前を付けた『逢えてよかったね~友だちプロジェクト~』(コンサートの収益やアルバムの売上を被災地に楽器や楽譜を贈る活動に寄付する取り組み)は今後も続けていきます」
原曲や歌詞に寄り添って、抒情豊かにあらゆる楽曲をピアノで歌わせる小原ワールドは、さらに広がっていくことだろう。最後に35周年記念リサイタルへの想いを語っていただいた。
「2020年の30周年はコロナ禍で、計画していたことが何もできなかったので、35周年はしっかり頑張って、5年後の40周年につなげたいと思います。まったく音楽ができない時期があって、アナログ人間の僕がYouTubeチャンネルやSNSを始めて活動の幅は広がりましたが、やはり原点はコンサートに足を運んでいただいて一緒に音楽を楽しむこと。音楽ができることの喜びをあらためて感じています」
発売元:キングレコード
発売日:2025年2月26日
価格(税込):4,000円
詳細はこちら
日時:2025年4月20日(日)
会場:東京文化会館 小ホール(台東区上野公園)
料金(税込):5,800円
詳細はこちら
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文/ 森岡葉
photo/ 宮地たか子
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tagged: 小原孝, ベストアルバム, デビュー35周年
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