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今月の音遊人:村松崇継さん「音・音楽は親友、そしてピアノは人生をともに歩む相棒なのかもしれません」
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ピアノ・トリオの枠を超え、ストリングスを優雅にまとい響き合う挑戦的なアルバム/かつしかトリオインタビュー
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2025.10.7
tagged: 向谷実, 神保彰, 櫻井哲夫, かつしかトリオ, "Organic" feat. LA Strings
向谷実(Key)、櫻井哲夫(B)、神保彰(Ds)というカシオペアの初期メンバーで結成された“かつしかトリオ”の3rdアルバム『”Organic” feat. LA Strings』が、2025年10月1日にリリースされる。タイトルからもわかるように、今作はストリングスとの共演を果たした意欲作。その制作について話を聞いた。
3人だけで超絶サウンドを奏でる──それは2021年の結成当初から、かつしかトリオのポリシーであり、世代を超えた音楽ファンから支持される要因でもあった。しかし最新作『“Organic”feat.LA Strings』では、ストリングスを大々的にフィーチャーしているのである。
「僕らのライブは主にホールで行っていますが、平行して行っているビルボードのクラブギグでは、向谷さんはアコースティックピアノのみ、僕もいつも使ってるドラムの1/3くらいのコンパクトなドラムセットで、いわゆるアコースティックなピアノ・トリオでやっていて。その流れで向谷さんが“いつかピアノ・トリオに生のストリングスを入れてみたいよね”って話をしていたんです」(神保)

左から向谷実(Key)、櫻井哲夫(B)、神保彰(Ds)
今回のアルバム制作でメンバーの願いは現実となり、アメリカ・ロサンゼルスのストリングスと共演が決定。さらに、ハリウッドでの録音が実現した。レコーディングとミックスはグラミー賞受賞歴のある大御所エンジニア、ドン・マレーが手がけ、マスタリングは巨匠バーニー・グランドマンが担当。ジェントルでオーガニックな響きを堪能できる傑作に仕上がったのだ。
「向谷さんが自身のリーダー・アルバム『THE GAMES -East Meets West 2018-』でドンさんとお仕事されていて。僕はドンさんの大ファンで、前々からドンさんと仕事がしたいって言っていたんですよ」(神保)
「デイヴ・グルーシンやリー・リトナー、ボブ・ジェームスといったスーパースターたちと素晴らしい作品を作ってきたドンさんですから、絶対にいい音になると思っていましたが……初日のサウンドチェックでドラムのタムがボーンって鳴った瞬間、あんなにふくよかに上品に、かつ存在感のある音は聴いたことがないなって、ビックリしました」(向谷)
「コントロールルームで聴いていても、目の前で叩いているように感じて。それくらいパワーがあったし、リアルな音だった。さすが神保さんが切望していただけはあるなと思いましたね」(櫻井)

エンジニアのドン・マレーを囲んで
先行配信されている『LUCA』『Origin』を含む新曲5曲に、ニュー・アレンジが施された『Red Express』『Majestic』『Amanogawa』の3曲は、いずれも個性的でありながら、アコースティックな響きをまとっているため、過去2作のアグレッシブなフュージョン・サウンドとは対照的である。驚くファンもきっと多いだろう。
「8曲それぞれ個性があって、だけれど音像感としてはオーガニックな感じにまとまっているところが、いままでのアルバムにはない特徴かもしれないです」(向谷)
「ストリングスとの共演ですから、やっぱりシンフォニックなメロディーラインを意識した曲が多い。『LUCA』は組曲のようにどんどん展開していくのをイメージしながら、みんなで“ああでもない、こうでもない”と作っていきました」(神保)
「『Early Bird』は、メロディー楽器としてのベースがフィーチャーされる曲もあったほうが、ピアノ・トリオとストリングスの共演というコンセプトがより生きるだろうと思って作りました」(櫻井)
“大人げないオトナたち”をキャッチフレーズにしている、かつしかトリオのこと。もちろん、オトナな装いの中にもしっかり“らしさ”を忍ばせている。
「今回のストリングス・アレンジは、僕のネム音楽院(現ヤマハ音楽院)時代の同窓である倉田信雄さんと共同で、渡米直前まで作っていたんです。曲によってはストリングスの人たちが必死になって弾いていたアレンジもあって、言い方は悪いですけど“やった!”って感じで。“こんなの余裕だよ”って弾かれては悔しいですから」(向谷)
「でも、最後には“楽しかった。またよろしくね”って言ってたよね」(櫻井)

ストリングスのレコーディング風景
バンドのスタンスを維持しながら新たな挑戦を成し遂げる、それは言うほど簡単ではない。しかし、かつしかトリオは、それをやってのけたのだ。そして、2025年10月からスタートする全国ツアーでも、『“Organic”feat.LA Strings』の魅惑的な音世界、進化し続けるバンドの雄姿を見ることができるだろう。
「今回のアルバムのためにヤマハさんにエレキベースのTRBの2号機を作っていただき、アルバム全曲で弾いたんです。この秋のツアーもそのベースを使う予定で、1号機からさらに自分が追い求める音が出せるようになった2号機でツアーに臨めるのが楽しみです」(櫻井)
「アルバムを3作出していますので、『“Organic”feat.LA Strings』の楽曲を中心にしつつ、いままでの楽曲も含めて、ひとつの大きなストーリーになるようなステージにしようと思っています」(向谷)
「アルバムのサウンドをどうやってライブで表現するかっていうのも、もうアルバム制作前からアイディアがあったので。ぜひ楽しみにしていただきたいです」(神保)

発売元:ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売日:2025年10月1日(水)
価格:3,300円
詳細はこちら
10月18日(土)かつしかシンフォニーヒルズ(東京)※完売
11月1日(土)福岡市民ホール 中ホール(福岡)
11月4日(火)Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)
11月13日(木)札幌共済ホール(北海道)
11月24日(月・祝)東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール(大阪)
12月8日(月)東京国際フォーラム ホールC(東京)
詳細はこちら
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文/ 飯島健一
photo/ 阿部雄介
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